新NISAを使って投資を行いたいという方は多いことでしょう。特に、コツコツと投資が可能なつみたて投資枠は、投資初心者の方でも気軽に投資ができることで知られています。しかしながら、メリットばかりではありません。デメリットを知ったうえで投資を始めるべきなのです。
そこで、本稿では、新NISAのつみたて投資枠に関するメリット、デメリットを解説し、つみたて投資枠における注意点と機会損失を発生させないためのポイントについて指摘していきたいと思います。つみたて投資枠はやめたほうが良いという意見もありますが、実際には使い方を理解することでうまく利用していくことが可能となります。それでは確認していきましょう。
新NISAのつみたて投資枠とは?
まず、新NISAのつみたて投資枠について解説します。新NISAでは、年間に投資できる枠が360万円あり、このうちつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円となっています。
つみたて投資枠では、毎月コツコツ積み立てを行うことで中長期的な資産形成を図っていきます。年間で120万円の非課税枠が利用でき、仮につみたて投資枠のみで投資を行う場合には、15年間で1,800万円の投資が可能です。もちろん、年間120万円利用しなくても構いません。例えば年間60万円で30年間で生涯投資上限額である1,800万円を利用するといったことも可能です。
そのため、投資予算の範囲内で継続してコツコツ運用したい方に向いています。その際に、増えた分は利益となりますが、つみたて投資枠を利用すれば非課税となります。本来、利益には20%(復興特別所得税を考慮すると20.315%)の税金がかかりますが、これがかからない点は大きなメリットといえます。
一方で、デメリットとしては、人によっては投資枠が少ないと感じる場合があるということです。また、つみたて投資枠のみの利用の場合、生涯投資上限額である1,800万円到達に早くても15年かかることもネックとなるかもしれません。
新NISAのつみたて投資枠はやめたほうがいい5つの理由
それでは、より具体的に、デメリットについて確認していきたいと思います。つみたて投資枠の利用をやめたほうがいいとする5つの理由について解説していきます。
1.投資できる商品が投資信託に限られるから
つみたて投資枠では、投資できる金融商品は投資信託に限定されています。しかも、投資信託であれば何でもよいわけではなく、長期・分散・積立投資に適した公募株式投資信託や上場株式投資信託のみに投資対象が限定されているため、投資対象が狭い点がネックとなっています。
2.成長投資枠と比べて非課税枠の上限が少ないから
つみたて投資枠は年間120万円が上限です。これに対して成長投資枠では年間240万円利用できます。成長投資枠と比べて非課税枠の上限が少ない点はデメリットといえるでしょう。
3.損益通算・繰越控除ができない
NISA制度における一番のデメリットが、損益通算・繰越控除ができない点ではないでしょうか。
損益通算とは、売買による損失と利益が発生した場合、利益と損失を差引したうえで利益のほうが多ければ多い分のみに税金がかかる仕組みです。繰越控除とは、損失のほうが多い場合に、翌年以降にそのマイナス分を繰り越して利益と相殺したうえで税金が計算できる仕組みです。
NISA制度ではこうした仕組みが利用できないため、他の口座との損益通算や繰越控除ができないのです。
4.元本割れする可能性があるから
新NISAも投資のため、必ず利益が出る保証はありません。経済状況等によっては損失、すなわち元本割れする可能性もあります。
5.資産形成に時間がかかり、短期投資には向かないから
つみたて投資枠では、どうしても生涯投資上限額に達するまでに時間がかかります。年間投資可能額が決して多いとは言えないため、すぐに増やすことは難しいです。つまり、中長期投資に向いており、短期投資に向いていません。
こうした理由から、新NISAのつみたて投資枠の利用をやめたほうが良いといった意見があります。
新NISAのつみたて投資枠で損をしやすい人の特徴
新NISAのつみたて投資枠の利用をやめたほうが良いかどうかは、資産形成に関する考えたかをどう持っているかによるとも捉えることができます。考え方によっては、つみたて投資枠で損をしやすくなるためです。以下に、損をしやすい人の特徴を記載します。
すぐに資産を大きく増やしたい人
まず、短期間で資産を大きく増やしたい方には、つみたて投資枠は向いていません。まとまった資金での投資ができないためです。この場合には、成長投資枠を利用するか、NISA制度を利用せず特定口座で株式売買などを行ったほうが良いでしょう。
価格変動に動揺して途中で投資をやめてしまう人
投資では価格変動はつきものです。上がるときもあれば、下がるときもあります。そのため、毎日ハラハラドキドキと感じ、途中で投資をやめたくなる方もつみたて投資枠の利用には向いていません。気長にじっくり運用できる人が向いているのです。
成長しない資産に投資する人
資産形成を行ううえでもっとも重要なことは、中長期的に増えること。増えるためには、今後成長期待ができる国や地域、資産に投資しなければなりません。しかしながら、投資対象をカンで決めたり、明らかにこれから成長しないであろう資産に投資する人は、つみたて投資枠の利用に向いていないといえるでしょう。
新NISAのつみたて投資枠で得をしやすい人の特徴
一方で、新NISAのつみたて投資枠を利用して増やすことができる、得をしやすい人の特徴はどうでしょうか。以下にその特徴を記載します。
投資初心者、投資経験がない人
投資初心者または投資経験のない人は、実はつみたて投資枠の利用に向いています。なぜなら、慎重にかつ中長期投資を心がける方が多いからです。長い目で見て運用を行うことができるため、増やすことができる可能性が高いといえます。
将来の支出に備えたい人
老後資金など将来の支出に備えたい方もつみたて投資枠の利用に向いています。20年後や30年後を視野に入れて運用を行うことができ、目標金額に到達するまで運用すると決めている方が多いため、ある程度資産を増やすことができる可能性が高いです。
他の金融商品と組み合わせた資産運用をしている人
株式投資信託だけではなく、債券などの他の金融商品を組み合わせた運用を行う人も、つみたて投資枠の利用に向いていると言えます。株式投資信託だけの枠にとどまらず、幅広く分散投資を心がけることで、投資におけるリスクを軽減できることにつながります。つみたて投資枠では時間分散が可能ですが、資産分散も考慮するならば、他の金融商品も組み合わせた総合的な運用を心がけたほうが良いでしょう。
新NISAのつみたて投資枠の注意点・機会損失しないためのポイント
新NISAのつみたて投資枠で損をしやすい人、得をしやすい人の特徴を見てきましたが、損をしやすい人だから利用しないほうが良いというわけではありません。また、得をしやすい人だからといって必ず得をするとも限りません。注意点をしっかり確認し対策を行い、機会損失を発生させないことで、つみたて投資枠をうまく利用していくことが大切なのです。それでは、どのように対策をたてればよいのでしょうか。
つみたて投資枠は1つの手段として考える
まず、つみたて投資枠は1つの投資手段として考えましょう。例えば、株式投資信託に関してはつみたて投資枠を利用する。それ以外の金融商品はNISA枠にとらわれず、特定口座で運用するといった形をとると良いでしょう。こうすることで、分散を徹底し、リスクを軽減しながら運用が可能となります。
非課税枠だからこそ利用する
つみたて投資枠は非課税です。これを利用しないのはもったないないです。そのため、成長しそうな、今後期待できそうな国や地域に的を絞り、投資信託で運用していくと良いでしょう。長期・分散・積立によるリスクヘッジを活かしながら、中長期的な運用で増やしていくのです。短期売買でさらに増やすなら成長投資枠も利用します。
目標を決めて到達したら売却する
もう一つ忘れてはならないのが、目標を決めることです。例えば、つみたて投資枠を利用して2,000万円に到達したら売却するとか、利回りが年6%超えたらいったん売却し様子を見るなど、ご自身で目標数値を決めておきます。その目標数値に到達したら売却していきます。こうすることで、目標となる資産形成が達成できます。
注意したいのは、目標数値を到達した場合に、まだ上がると思って売却しないこと。確かにその後さらに上がる可能性もありますが、必要なことは目標到達です。例えば、目標到達した後は、仮に損失が発生しても問題のない範囲で運用を再開するなどご自身なりのルールを作成すべきです。こうすることで、資産形成で失敗を減らすことが可能となります。
新NISAのつみたて投資枠で成功するコツ
さらに、新NISAのつみたて投資枠で成功するコツを伝授します。それは、気長に運用を行うことと、大きく下がった時には追加で買い増すことです。10~20年おきぐらいのサイクルで、どうしても好不況の流れが存在します。中長期投資では、どうしても下落局面にも出くわすことがあることでしょう。その時に気長に運用できるかどうか。また、あまりにも大きく下がるときは追加で買い増しできるかどうかもポイントです。
下落した時に安く購入できてうれしいと思えれば、中長期投資では大きなリターンを生むことができる可能性が高くなります。ただし、今後も成長するような投資を行うことが前提です。例えば、世界全体は今後も経済成長する可能性が高いです。そうした投資を心がけることで、気長に積立投資を行い、資産形成を図っていけるとよいでしょう。
2025年度の株式市場のトレンド
2025年4月に、米国のトランプ大統領が自動車をはじめとする関税を課すことを発表。これにより世界中の株価が下落しました。しかしながら、その後、各国との関税交渉が始まることで、進展に期待し市場ではある程度株価が戻る状況となってきています。
こうした人為的な問題の場合には、元に戻ることも多く、状況次第ではむしろ株価は上昇するといったことも過去見受けられます。また、年に1~2回はこうした大きな下落が生じることがあることも知っておくべきです。そのため、大きな下落時は慌てず何が理由なのかを見定め、今後どうなりそうかをじっくり考えていく必要があります。
トランプ関税は確かに世界経済にマイナスの影響を及ぼす可能性が高いものの、大きな下落はチャンスと思えれば、つみたて投資も怖くはありません。今後の各国の交渉次第ではあるものの、トランプ大統領の支持率低下の動向を見る限り、強硬的な関税発動は難しいといえるのではないでしょうか。ある程度妥協することで、株価も戻していく可能性は十分あり得ます。
なお、株式投資信託の場合には複数の株式へ分散投資を行っていますが、個別株式の場合にはトランプ関税などの影響で予想もしない大幅下落に直面する可能性があります。そのため、株式投資信託でコツコツ積立投資を行うことで下落相場にも耐え、最終的に株価が上昇すれば積み立てによる効果を大きく享受できる可能性があります。過去にも何度も下落相場はありましたが結局のところ世界株式などは上昇しています。そうした過去の動きを知ることで、安心して中長期投資に臨めるのではないでしょうか。
まとめ
以上、新NISAのつみたて投資枠について解説してきました。デメリットがあるのも事実、メリットがあるのも事実です。ただし、デメリットは長期・分散・積立投資を行うことで対応することも可能です。
むしろメリットである非課税を活かすのであれば、長期投資は行うべきです。そして経済成長の果実である複利効果により、リターンを高めていくべきです。そういった面で新NISA制度のつみたて投資枠は活用すべきといえます。
本稿をお読みになり、メリットだけではなくデメリットを理解し、そのうえでつみたて投資枠をうまく活用するコツをつかみ、是非実践でつみたて投資枠を利用し、長期的な側面から資産形成を図っていただけたら幸いです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年5月8日時点の情報に基づきます。
※あくまでも伊藤亮太さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。