為替変動リスクって何?為替ヘッジあり・なしで変わる投資信託の選び方
投資信託の為替変動リスクと為替ヘッジについて、医師・投資家のDr.ちゅり男さんが解説。円高・円安が基準価額に与える影響や、ヘッジコストの仕組み、長期投資における「あり・なし」の使い分け戦略をまとめました。投資を途中でやめないためのリスク管理術を知りたい方は必見です。
「為替変動リスク」って何?
海外株式や海外債券に投資する投資信託を保有していると、必ず意識しなければならないのが「為替変動リスク」です。
為替変動リスクとは、外貨建て資産を円に換算する際、為替レートの変動によって円ベースの評価額が増減するリスクのことを指します。たとえば、米国株式に投資している場合、株価が上昇していても、円高ドル安が進めば円換算ではリターンが目減りすることがあります。逆に、株価が横ばいでも円安が進めば、円ベースの評価額は増加します。
初心者の方が投資を始めてしばらくすると、「株価は上がっているはずなのに、思ったほど基準価額が増えていない」「ニュースで米国株高と聞いたのに、自分の投資信託はあまり上がらない」と感じる場面に出合うことがあります。その原因の多くは、株価ではなく為替の影響です。
株式市場の値動きは日々ニュースで目にしやすい一方、為替は意識しないと見落とされがちです。しかし実際には、為替は金利差や金融政策、世界情勢などさまざまな要因で動き、数年単位で見ると驚くほど大きく変動することもあります。
長期投資を前提とする投資信託では、「株価変動リスク」と「為替変動リスク」という2つの異なるリスクが同時に存在している、という点を押さえておくことが大切です。
「為替ヘッジ」とは?
為替ヘッジとは、為替変動による影響を抑えるための仕組みです。投資信託では、先物取引などを活用して、あらかじめ将来の為替レートを固定することで、為替の上下による損益を小さくする工夫が行われています。
イメージとしては、「外貨で投資はするけれど、円高・円安の影響はできるだけ受けないようにする保険」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。
「為替ヘッジあり」の投資信託は、基本的に外貨建て資産そのものの値動きだけを円ベースで反映させる設計になっています。一方で「為替ヘッジなし」の投資信託は、株価の変動に加えて、為替変動の影響もそのまま受けることになります。
ただし、為替ヘッジは無料ではありません。ヘッジを行うためにはコスト(ヘッジコスト)がかかり、その水準は日米などの金利差によって大きく左右されます。金利差が大きい局面では、年率で数%に達することもあり、長期的なリターンを押し下げる要因になります。
為替ヘッジあり・なしの違いを解説
為替ヘッジあり・なしの違いを私なりに整理すると、ポイントは3つあります。「値動きの安定性」「為替の影響の受け方」「コスト」です。
・為替ヘッジありの場合
まず、為替ヘッジありの投資信託は、円高・円安といった為替の変動による影響を抑える設計になっています。そのため、基準価額の値動きは比較的なだらかで、「気づいたら大きく下がっていた」という事態が起こりにくいのが特徴です。投資経験が浅く、値動きの大きさに不安を感じやすい方にとっては、心理的なハードルが低くなります。
一方で、為替ヘッジありには必ずヘッジコストがかかります。このコストは毎年確定で発生するため、長く保有するほど効いてきます。特に海外金利が高い局面では、「為替を抑える代わりにリターンを削っている」状態になる点は理解しておく必要があります。
・為替ヘッジなしの場合
為替ヘッジなしの投資信託は、株価変動に加えて為替変動の影響もそのまま受けます。そのため短期的には値動きが大きくなりますが、円安が進めばリターンが上乗せされるというメリットがあります。また、ヘッジコストがかからない分、長期的な期待リターンは高くなりやすい傾向があります。
重要なのは、「為替ヘッジあり=安全」「為替ヘッジなし=危険」と単純に考えないことです。どちらにもメリットとデメリットがあり、自分の投資期間や性格によって向き不向きが分かれます。
為替変動リスクを考慮した投資戦略
長期的な資産形成を目的とする個人投資家の場合、為替変動リスクを「完全に避けるべきもの」と考える必要はありません。
私自身、長期投資のコア資産としては、為替ヘッジなしの海外株式インデックスファンドを中心に保有しています。その理由は、20年、30年という長い時間軸で見れば、為替は上下を繰り返しながら平均化されていく可能性が高く、短期的な為替変動に一喜一憂する必要がないからです。
一方で、すべての資産を為替ヘッジなしにする必要もありません。たとえば、数年以内に使う予定の資金や、値動きに対する心理的な耐性が低い資産については、為替ヘッジありの商品を組み合わせるのも合理的な選択です。
実際には、以下のような視点で考えると整理しやすくなります。
・長期で積み立てる老後資金や資産形成のコア部分 → 為替ヘッジなし
・数年以内に使う可能性がある資金、値動きを抑えたい部分 → 為替ヘッジあり
重要なのは、「為替ヘッジあり・なし」の二者択一で考えるのではなく、自分の資産全体を俯瞰し、リスク許容度に応じて使い分けることです。投資信託は一本で完結させるものではなく、ポートフォリオ全体でリスクを管理するという視点が欠かせません。
加えて、初心者の方にぜひ意識してほしいのが、「投資をやめてしまう最大の原因は値動きそのものだ」という点です。多くの場合、投資がうまくいかなくなる理由は、商品選びの失敗ではありません。短期間の値下がりや、思ったほど増えない基準価額を目にして不安になり、途中で投資をやめてしまうことにあります。
為替変動も、その不安を大きくする要因のひとつです。円高が進んで基準価額が下がると、「この投資は失敗だったのではないか」と感じてしまいがちですが、それはあくまで一時的な評価額の変動にすぎません。それでも精神的な負担が大きく、投資を続けられなくなってしまっては本末転倒です。
その意味で、為替ヘッジはリターンを最大化するためのテクニックというよりも、「投資を続けやすくするための設計」と捉えると分かりやすいでしょう。多少リターンが抑えられたとしても、値動きが穏やかになり、安心して長期投資を続けられるのであれば、それは十分に合理的な選択です。
長期投資で最も重要なのは、途中でやめないことです。自分がどの程度の値動きなら冷静でいられるのかを考え、その範囲に収まるように商品や為替ヘッジの有無を選ぶことが、結果として資産形成の成功確率を高めてくれます。
まとめ
海外投資信託に投資するうえで、為替変動リスクは避けて通れないテーマです。ただし、為替はコントロールできないからこそ、過度に恐れるのではなく、仕組みを理解したうえで付き合っていく姿勢が大切だと感じています。
為替ヘッジありの商品は、値動きを抑えたい人や、短期〜中期で使う予定の資金に向いています。一方で、為替ヘッジなしの商品は、長期的な成長を取り込みたい資産形成向けの選択肢です。
私自身の考えとしては、長期投資では「多少の為替変動を受け入れてでも、低コストで市場に居続けること」のほうが、最終的な結果に与える影響は大きいと考えています。為替の先行きを正確に当てることは誰にもできませんが、時間を味方につけることは誰にでもできます。
大切なのは、為替ヘッジの有無そのものではなく、「自分がその値動きに耐えられるかどうか」です。無理のない選択をすることで、投資を途中でやめずに続けることができます。
為替変動と上手に付き合いながら、自分に合ったスタイルで、長期的な資産形成を続けていきましょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年1月26日時点の情報に基づきます。
※あくまでも、ちゅり男さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
2007年に元手100万円で日本の個別株投資を始めるも、リーマン・ショックの影響で損失が拡大。2011年からインデックス投資中心に切り替え、その後は順調に資産を拡大。2020年のコロナショック後に貯金の大半を米国ETFに一括投資し、その後の株価上昇で資産1億円を突破し「億り人」に。2024年に初の単行本『世界一やさしい投資信託・ETFの教科書1年生』、2025年に続刊『世界一やさしいお金の教科書1年生』を出版。
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