監修:小幡兼志(おばた けんし)さん
公認会計士・税理士。オバタ税理士・公認会計士事務所所属。
公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツにて製造業や小売業の財務諸表監査や内部統制監査に従事。その後、マーケティング会社や税理士法人での勤務を経て独立。資金繰りに苦しんでいる中小企業が多いことから、融資サポートや補助金支援など総合的な財務コンサルティングに力を入れている。
実は、株式も“相続財産”になります!
株式投資をしている方が亡くなった場合、その株式はどのように扱われるのでしょうか?
株式や投資信託などの運用商品も、預貯金や不動産と同様に「相続財産」として扱われます。
株式等の名義人が亡くなると、証券口座は凍結され、売買や払い出しはできなくなります。相続人が株式を受け取ったり、売却してその代金を相続人で分配したりするためには、相続の手続きが必要になります。
株式を相続するときの流れ
故人(以下、「被相続人」といいます)が上場株式を保有していた場合、相続が発生してから株式を相続するまでのおおまかな流れは次のようになります。
相続人の調査・確定
まずは「誰が相続人になるのか」を確定します。家族であれば、相続人はわかっているという場合であっても、必ず被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を取得し、確認した上で、法定相続人を確定します。
財産の調査・確定
被相続人の株式・投資信託・預金・不動産・保険・骨董品など資産の全体像を把握します。また、借入金も被相続人の財産となるため、負債の有無についても調べます。
相続放棄・限定承認を検討
相続財産の内容が明らかになったら、全財産を相続するか、それとも相続放棄や限定承認にするかを検討します。相続放棄はプラスの財産、マイナスの財産全てを一切相続しないというものです。また、限定承認はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続するというものです。相続放棄と限定承認は被相続人が亡くなった日から3か月以内に裁判所に申し立てる必要があります。
準確定申告
被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が申告を行います。株式の譲渡益や配当金の受け取りなどで、申告が必要なものがあるかどうか確認が必要です。
遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
遺言書がある場合には、その内容に従います(ただし、相続人全員の同意があれば遺産分割協議による分割も可)。遺言書がない場合には、相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合い、合意を書面(遺産分割協議書)にまとめます。相続人全員が納得すれば、法定相続分とは異なった配分割合にすることも可能です。
相続財産の名義変更
証券会社に死亡の連絡をすると、相続の手続きに関する案内および書類が届きます。
必要書類を提出し、株式等を相続人名義の口座に移管します。この手続きを行うためには、株式を引き継ぐことになる相続人が、被相続人と同じ証券会社に口座を開設している必要があります。
複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれについて手続きをすることが必要です。
相続税の申告
相続税の申告は、被相続人が死亡した日の翌日 から10か月以内に行う必要があります。なお、相続財産が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下の場合には申告は不要です。
株式の相続税評価額はどう決まる?
相続財産の評価額の算出方法は、財産の種類によって異なりますが、上場株式については次のように算出します。
次の4つの価格のうち、最も低いものを相続税評価額とすることができます。評価額を低くすることで、相続税の負担を抑えることができます。
1.被相続人が死亡した日(土日や祝日の場合には、死亡日にもっとも近い日)の終値
2.被相続人が死亡した月の毎日の終値の平均額
3.被相続人が死亡した月の前月の毎日の終値の平均額
4.被相続人が死亡した月の前々月の毎日の終値の平均額
特定の日の終値は株価検索サイトで、平均額は日本取引所グループで調べることができます。
<例>2025年10月3日(金)に死亡 A社の株式を保有。
4つの価格の中では、被相続人が死亡した月の前々月(2025年8月)の毎日の終値の平均額が一番低いので、2,839.43円を評価額とすることができる。
複数の相続人がいる場合、株式の分割方法は
相続人が複数いて、遺言書がなく、誰にどの株式をどのくらい相続させるのかが明確でない場合は、どのように分割すればいいのでしょうか?
株式の場合(※1)、次の3つの分割方法があります。
現物分割
株式を株式のまま相続する方法です。
「一人が株式全部を引き継ぐ」「銘柄ごとに相続人に振り分ける」など、柔軟に決めることができます。
ただし、株価は変動するものであるため、何をどのくらい相続したかにより、将来の価値が大きく変わることも考えられます。
また、分割の結果、100株未満の“単元未満株”が発生すると、通常の市場取引での売却が難しくなるので、なるべく単元株になるよう分割するとよいでしょう。
換価分割
株式を一度売却し、現金にしてから分ける方法です。現金化することで、相続割合通りに分配しやすくなります。特に、株式に特定の思い入れがない場合などは有効な方法です。
代償分割
株式を一人が相続し、他の相続人に自身の資産から現金(代償金)を支払う方法です。代償金を支払えるかどうかが課題となります。
※1不動産等の場合には、共有分割という方法もあります。しかし、株式の場合には、証券会社のシステム上、複数人で共有することはできないため、分割方法は上記の3つの方法になります。
相続した株式を売却すると税金はかかる?
相続した株式を売却して売却益が出た場合には、20.315%の譲渡所得税(所得税と住民税)が課せられます。
売却価格から取得費や売却手数料等を差し引いた金額が譲渡所得金額になりますが、取得費は相続した際の評価額ではなく、被相続人が購入した際の価格になります。
取得費がわからない場合には、「売却代金の5%」を取得費とすることができますが、税金の負担は重くなってしまう可能性が高いため、取得費がわかる書類は大切に保管しておきましょう。
また、相続税の申告期限から3年以内に相続した株式を売却した場合には、支払った相続税の一部を株の取得費に含めることができる「相続税の取得費加算の特例」があります。
相続手続きを怠るとどうなる?
株式の相続を行わないままでいると、その間は相続人全員で株式を共有(準共有といいます)している状態になります。準共有の状態が続くと、次のような事態が想定されます。
口座が凍結されたままで売却できない
たとえば株式相場が上昇したとしても、準共有の状態では売却することができません。売り時を逃してしまう可能性があります。
配当金は相続人の間で按分
配当金が支払われた場合には、その都度相続人の間で分配しなければなりません。
このような不都合が考えられるため、なるべく早く手続きをするようにしましょう。
まとめ
株式を保有している方が亡くなった場合、株式も相続財産になります。相続の手続きを行わないと、売却できないなどの不都合が生じるため、なるべく早く手続きをするのが望ましいでしょう。
特に、相続放棄・限定承認は3か月以内に手続きが必要です。株式も含め、相続財産の全体像を早めに把握する必要があります。
また、相続税が発生する場合には、10か月以内に申告をする必要があります。
このように、手続きの期限があるものには注意しましょう。
手続きがスムーズに進むようにするためには、次のような準備が有効です。
遺言書を作成する
遺言書があれば、遺産分割協議をする必要がなくなるので、誰が何をどのくらい相続するかが迅速に決定します。また相続人同士の争いも避けられます。
証券会社や保有銘柄のリストを作成する
何の銘柄をどのくらい持っているのか、また、それはどこの証券会社にあるのかがわかるリストを作成しておきましょう。特にどこの証券会社に口座を持っているか、あらかじめわかっていると手続きがスムーズになります。
証券会社の利用をある程度まとめる
株式を相続するためには、相続人は被相続人と同じ証券会社に口座を開設する必要があります。そのため、できるだけ証券会社は集約しておきましょう。
事前の準備をしておくことで、相続手続きの負担を軽減することができます。相続は、いつか必ず訪れるものです。大切な家族がご自身の資産形成の努力を無駄にせず、スムーズに資産を引き継げるよう、今からできる準備を始めましょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年12月3日時点の情報に基づきます。
※あくまでも高田晶子さんによる株式の相続に関する資産管理方法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が税務アドバイスを提供したり、取引を勧誘するものではありません。なお、税務に関しては、必要に応じて、専門家の助言を仰ぐことをお勧めします。
大学卒業後、信託銀行に就職。信託銀行退職後、イベント会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年、ファイナンシャルプランナーとして独立。
著書に「住宅ローン 賢い人はこう借りる!(共著、PHP研究所)」「絶対に知っておきたい!地震火災保険と災害時のお金(自由国民社)」など。
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