金融・投資

2024.01.18

今回お話を伺ったのは…

小川 洋平(おがわようへい)さん

小川 洋平(おがわようへい)さん

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 
合同会社clientsbenefit代表 / FP相談ねっと認定FP
保険営業時代に知識不足はお客様を不幸にしてしまうことを痛感しFPの知識を学ぶ。
FP資格取得後、保険商品の販売のためでなく、クライアントの立場で有利な制度の活用、金融商品や保険商品を選び、クライアントの豊かな人生のために最大限自分ができる提案をしたいという想いから相談業務を開始。
iDeCoやNISA制度を活用した資産形成の相談を得意とし、企業の経営再建の経験や自身の起業の経験から、経営者の資産形成を専門分野としている。
確定拠出年金講師、他講師経験多数、金融系メディアの執筆経験を持つ。

超短期オプションが人気の米国、日本では「ミニ」開始!

投資の用語として「オプション取引」という言葉を目にすることがあるでしょう。オプション取引はデリバティブ(金融派生商品)の一つです。
現在は米国のオプション市場で超短期オプションの人気が高まり、シカゴ・オプション取引所(CBOE)の調査によると米国の株価指数S&P500を原資産とするオプションで24時間以内に満期を迎える「ゼロデイオプション(0DTE)」の比率が2023年8月には5割を占めるほどになり話題になりました。
日本においても取引単位を現行の10分の1にした「ミニオプション」が2023年5月29日に上場し、少額で取り引きすることもできるようになり個人でも購入しやすくなりました。
この記事ではそんなオプション取引とはそもそもどんなものか、取引に際しどのような留意点があり、どのように活用できるのかを解説していきます。

「オプション取引」とは?

オプション取引とは、ある時点での特定の資産を、約束された価格(権利行使価格)で「買う権利」、または「売る権利」を売買する取引です。
株式投資などに投資する際、株価が上がると見込まれる株式に投資し、値上がり益を狙います。
しかし、オプション取引は株式を購入せず、特定の日に特定の価格で株を買うまたは売る「権利」を売買するものです。
オプションの買い手は売り手にプレミアム(手数料)と呼ばれるオプション料を支払います。そして、売り手はプレミアムを受け取る代わりに、権利行使に応じることになるのです。
オプション取引の発祥は、古代ギリシャの哲学者・ターレスがオリーブを絞る機械を借りる権利を買ったことと言われています。
ターレスは天文学の知識から翌年にオリーブが豊作になると見込み、オリーブを絞る機械を借りる権利を買い、翌年ターレスが予想した通りオリーブが豊作になりました。オリーブが豊作になったため、機械の賃料が上がりましたが、ターレスは事前に予約していた賃料で借り、他者に高い賃料で貸すことで利益を得たというエピソードがあります。
このように、ある期日においての売り買いの権利を取り引きすることをオプション取引と言い、買う権利のことを「コールオプション」、売る権利のことを「プットオプション」、権利を買う際の手数料を「プレミアム」と呼んでいます。

損失を限定して利益を狙う!オプション取引の魅力

オプション取引は原資産を売り買いする「権利」を売買する取引であるため、ある一定の期日になってもし不利な条件であれば権利を行使せず、買わない・売らないという選択肢を選ぶことができます。
先物取引と似た仕組みではありますが、先物取引は将来の一定の期日になれば不利な条件であったとしても現物を売り買いする必要があります。
対して、オプション取引は不利な条件であれば権利を行使する必要が無く、有利な条件のときに権利を行使することができます。そのため、損失は支払うプレミアムの範囲に限定されながら利益を狙っていけるのです。
例えば、日経平均株価のコールオプションの場合、日経平均株価が権利行使価格を下回っている場合には権利行使せずにいることができるため損失はプレミアムの分に限定され、日経平均株価が権利行使価格を上回った場合には日経平均株価と権利行使価格との差額がプレミアムを上回れば利益、プレミアムを下回れば損失となります。

図1.日経平均株価(日経225)のコールオプションの図

反対に、プットオプションの場合には「売る権利」ですのでコールオプションの逆で、権利行使価格よりも株価が高い場合には権利を行使せずに損失をプレミアムの分に限定され、権利行使価格を下回った場合には日経平均株価と権利行使価格との差額がプレミアムを上回れば利益、プレミアムを下回れば損失となります。

図2.日経平均株価(日経225)のプットオプションの図

ただし、オプションの売り手の方は買い手が権利行使すればそれに応じる必要があり、損失は青天井になる場合もあります。
また、レバレッジ効果により小さな投資金額でも大きな利益を追求することが可能です。レバレッジとは少ない手元資金でも何倍もの大きな取引を行うことができる効果を言います。
レバレッジは日本語訳すると「てこ」という意味があり、てこの原理のように少ない力でも大きな効果を得ることができるために呼ばれているのです。
レバレッジを活用することで投資の資金効率を高め、大きなリターンを狙っていくことができますが、その反面損失が大きくなるためリスクについて十分理解して行う必要があります。

オプション取引の活用法

オプション取引は多くの活用法がありますが、その中でも特にポイントとなる5つを紹介していきます。
・将来株価が上がると予想される場合
代表的なものとして、 オプションの起源とされるオリーブの絞り機のように将来的に株価の上昇が考えられる場合、コールオプションを買うことで予想が外れた場合の損失をプレミアムの範囲に限定しつつも株価上昇による利益を狙っていくことができます。
図1の例がこれにあたります。
・将来株価が下がると予想される場合
将来株価が下落すると考えられる場合、プットオプションを買うことで株価の下落による利益を狙うことができます。プットオプションは将来の期日において、現在決めた価格で売る権利であるため、将来的に株価が下落した場合には権利を行使することで利益を得ることができます。
図2の例がこれにあたります。
・保有する株式のリスクヘッジ
オプション取引は利益を狙うだけでなく、保有している株式の下落に対してのリスクヘッジにも活用することができます。プットオプションは前述の通り原資産価格が将来的に下落により利益を得ることができるものですから、保有する株式のプットオプションを買うことで将来株価が下がった場合にその損失を補填、軽減することが可能です。
・売りポジションでプレミアムを得る
コールオプション、プットオプションは共に売りのポジションを選ぶことでプレミアムの分までの利益を得ることができます。
例えば、コールオプションは買いのポジションだとプレミアムを払うことで原資産価格が一定の価格以上に上がった場合に利益を狙う戦略ですが、売りポジションは逆にプレミアムを得ることができ、反対に原資産価格が一定の価格以上に上昇した場合に損失が発生することになります。

図3.コールオプションの売りの場合

反対に、プットオプションの売りはプレミアムを得て一定の金額以上に下落した場合に損失となります。

図4.プットオプションの売りの場合

・オプションの組み合わせ
他に、コールオプションの買いとプットオプションの買いを組み合わせ、価格が一定の価格以上に上昇、もしくは下落した場合に利益を得られる戦略を立てることができます。
株価が上振れ、下振れどちらにも大きく動きそうな場合に利益を狙っていける戦略です。

図5.コールオプションの買い、プットオプションの買いの組み合わせ

反対に、コールオプションの売り、プットオプションの売りを組み合わせることで価格があまり大きく動かず、一定の範囲内に納まると予想される場合に利益を狙っていけます。

図6.コールオプションの売り、プットオプションの売りの組み合わせ

このように、オプションを組み合わせることでも様々な相場に対応しながら利益を狙っていくこともできるようになります。

まとめ

今回はオプション取引とは何か、留意点や活用法などを紹介してきました。オプション取引は複雑で難しく思うこともありますが、整理して考えてみるとその意味やどのような場面で活用したら良いか理解できるようになってきます。
売りポジションにおいては損失が青天井になる場合もあり、仕組みをよく理解して取り引きしないと予想外に大きな損失が発生してしまうこともあります。
反面、しっかりとした知識と戦略をもって行なうことで投資の幅を拡げ、下がり相場で利益を狙うなど、様々な場面で利益を狙っていくことができるようになりますし、ビジネスの場面においても為替や原材料価格の高騰などのリスクを抑えるために活用されることもあります。
また、デリバティブを活用した投資信託などの金融商品がどのように運用されているのかなど金融商品に対する理解も深まることでしょう。
オプション取引について興味を持つきっかけとして、取引を実際に始める際の参考として本記事を活用していただけると幸いです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年10月17日時点の情報に基づきます。
※あくまでも小川洋平さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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