金融・投資

2024.01.18

今回お話を伺ったのは…

藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん

藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん

相場の福の神
年間400社の上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介しています。
「まいど!」のあいさつ、独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIで5本の看板番組を持ち、年間で約240社、累計で1000社以上の上場企業社長が、藤本の番組に出演しています。その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。
日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、「相場の福の神」と呼ばれる日本一上場企業社長(1300社超)に会ったマーケットアナリスト証券アナリスト、ITストラテジスト、All About株式ガイド、Youtuber
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まいど、藤本です。年間400社を超える上場企業社長とミーティングしていると、業界によって、様々な日本の展望を聞くことができます。数多くの社長の展望から、藤本独自の2024年の展望をご紹介させていただきます。

上昇の気運を見せる2024年の日本経済

まず、2023年は資源高や円安などといった要因が重なり、万年デフレ状態だった日本に価格高騰が直撃し、インフレの機運が見え始めた1年だった。日経平均もバブル崩壊後の最高値を33年ぶりに更新し、今後の上昇の機運が見え始めた。そのような中、2024年からは新NISAの制度がスタートし、非課税となる期間が無制限になる。「貯蓄から投資へ」の岸田内閣の目論見通り、個人投資家のマーケットへの関心度も高まっていく1年になるだろう。
また、「東証再編」「PBR1倍割れ問題」に関しても引き続きマーケットの中心的な話題となるだろう。その中でも特に注目すべきは、企業によるTOBなどだ。最近の大きな案件としては、ベネッセHD、ベネフィットワンなどがある。市場から株が消えていくことになるため、結果として需給のバランスが引き締まり、株価上昇への下地が整っていくのだ。
2024年の日本のマーケットを概観すると、2023年に大きく下げてしまった中国の復活に伴う需要の再興や本格的なインバウンドの回復などで、悪くはならないと思われる。特に年初は中国の春節を迎えてインバウンド需要が大きく盛り上がる上に、過去最大級の賃金上昇を狙う春闘がある。年前半の相場は日本にとっては大きく追い風が吹き、好調な展開を予想する。

半導体関連の大規模投資で注目の「九州」

ただ、日本の中でもある程度「相場がいいところ」を探すべきだろう。2024年のマーケットを地域で考えた際に最も注目を集める地域は九州で間違いないと考える。
2023年にChatGPTに代表される生成AI を皮切りにマイクロソフトなどの超大型テック銘柄が大きく株価を上昇させた。さらに、ビッグデータを扱うにあたって必要不可欠な半導体関連の銘柄も急上昇を見せた。その半導体の製造に関わる大規模な投資が九州で行われるのだ。
例えば熊本では、台湾積体電路製造(TSMC)の大規模工場の完成を間近に控えており、2024年の末頃には製品を出荷させるための準備が進んでいる。そのほかソニーや東京エレクトロンなどの大規模投資も重なる。地元の地方銀行では、熊本エリアでの今後10年間の経済効果が約6兆9000億円ほどという試算もあるほどだ。
そのような大きな投資が目に見えている状況では熊本に関わる銘柄群は注目を浴びやすくなるだろう。例えば、熊本に地盤のある建設会社Lib Work(1431)などがある。一方で、インフレと賃金の伸び率において地方が厳しいという現状は急速に改善に向かうことはなかなかないと考えられる。
食品スーパー、ドラッグストアなど、地域性のある小売企業において、九州を拠点とする企業の買い持ち、九州以外の地方を拠点とする企業を空売りするような、地域間のロングショート戦略は面白みがある投資戦略となろう。

働き手不足が深刻化する建設業界、需要増に期待高まる

政策面で考えると来年はいわゆる「2024年問題」が注目だ。2024年問題とは、一連の働き方改革関連法案における労働時間などの制限のことだ。昨今の少子高齢化の動きの中、労働時間の上限が規制されることによって建設業界や物流業界での労働力が減少する。
また、この問題は来年から顕著になってくる「2025年問題」がさらに拍車をかける。戦後の1947〜1949年に生まれた、いわゆる団塊の世代が一気に75歳以上の後期高齢者に突入するのだ。このダブルパンチにより、元気な若手を馬車馬のように働かせ続けることはできなくなり、ノウハウを蓄積した、いぶし銀の高齢現場作業員も安全性の問題から働かせることは難しくなってしまう。物流・建設業界における働き手不足は深刻になる。
一方で、建設需要は旺盛になりそうだ。東京オリンピックで先延ばしにされていた再開発などが今後まだまだ増えていくだろう。直近では、麻布台ヒルズの再開発が記憶に新しい。今後は品川から高輪ゲートウェイ駅にかけての広大な土地の再開発も控えている。また、都道府県の県庁所在地のような各地に散らばる都市の建物の建て替えニーズもこれから本格化してくる。
そうなると、人手が足りない中にあっても建設会社のニーズは積み上がっていく。建設業界はより収益率の高い案件を選別受注していくことになるため、実際の利益率は上がっていく。結果的に建設業界は大きく儲かるビジネスに変貌していく可能性が高いだろう。
また、そのような人手不足を解消するために、より効率的に業務を進めていくDX化に関わるビジネスは盛り上がりを見せる。具体的な銘柄としては、スパイダープラス(4192)などが考えられる。また、より効率化を図るためのコンサルティング業界や、資本改革の一環としてのM&Aも増加していく可能性が高いだろう。
地方の建設会社をM&Aで傘下に収めていく企業としては、AMGホールディングス(8891)などが、注目されると予想する。

まとめ

2024年の相場は引き続き堅調な推移を見せそうだが、その中でも個人投資家が勝てる運用戦略を進めていくにはある程度の銘柄選別が必要になる。2024年だけに注目するのではなく、2025年、その次の年と将来を見越していくことが重要だ。今回紹介した2024年問題・2025年問題だけでなく、実は2026年問題というものもある。非常に興味深いテーマではあるため、興味を持った投資家の方は一度自身で調べてみたらいかがだろうか。
こうした事情を踏まえて、イベントドリブン型の投資を行うなら、PTSの夜間取引を活用して利益確定売りをするといった手法も有効である。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年12月15日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤本誠之さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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