金融・投資

2025.12.10

2026年の相場格言「午尻下がり」は当たる? 万が一の波乱相場に備えるヒント

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経済ジャーナリストの町田 徹さんが、相場格言「辰巳天井、午尻下がり」を手がかりに、2026年の経済を読み解きます。過去6回の午年相場の分析、トランプ関税やサナエノミクスなど2025年の経済トレンドを踏まえて2026年を見通します。加えて、万が一の波乱相場に備えるポイントも解説し、投資家が参考にできる視点を紹介します。

今回お話を伺ったのは…
町田 徹(まちだ てつ)さん

町田 徹(まちだ てつ)さん

経済ジャーナリスト。1960年大阪市生まれ。84年に兵庫県立大学を卒業し、日本経済新聞記者、選択編集者を経て、2004年独立。日興コーディアル証券の粉飾決算をスクープして07年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞・大賞」を受賞。14年から6年間、ゆうちょ銀行社外取締役を務めた。『電力と震災』、『行人坂の魔物』、『巨大独占』など著書多数。

「辰巳天井、午尻下がり」とは?干支で読み解く“相場格言”

「辰巳(たつ・み)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さる・とり)騒ぐ。戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる」――。
2025年も師走を迎え、今年ほど冒頭の「相場」の格言が気になる年は珍しいのではないだろうか。
というのは、相場の格言通り、「辰年」の2024年と「巳年」の2025年の2年間は、見事なほど“お告げ”通りに株式相場が動いたからである。「辰年」の昨年は日経平均株価の終値が前年末比で6430円高の3万9894円と天井が押し上げられた。「巳年」の今年も、先月末(11月28日)のそれが同じく1万0359円高の5万0167円を付けた。補足すれば、今年は3月から7カ月連続で上昇した。高市早苗氏が10月21日に「責任ある積極財政」を掲げて、わが国最初の女性総理に就いたことを受けて、10月は終値が史上最高値(5万2411円)を記録した。月間の上げ幅も過去最大だった。まだ師走相場が残っているものの、これだけ天井が押し上げられれば、今年(巳年)も「大相場」の年として記憶されるだろう。
このように「辰巳天井」という“お告げ”が2年続けて的中すると、「2度あることは3度あるのではないか」と疑いたくなるのも人情だ。そして、その“お告げ”は「午年(来る2026年)」が「尻下がり」だというのである。

バブル崩壊の幕開けとなった──1990年の「午尻下がり」

話を進める前に、「午尻下がり」の“お告げ”が的中したケースを紹介しておく。それは3つ前の「午年」に当たる1990年だ。50歳代半ばより年配の方ならばピンと来る人も少なくないだろうが、この「午年」こそ、その後30年以上にわたって日本をデフレ経済で悩ませることになる、あの「バブル崩壊」の幕開けとなった年である。この年の日経平均株価の終値は、2万3848円に沈んだ。実に、それまでの過去最高値(3万8915円)だった前年の大納会から1万5067円(率にして38.7%)も下げる大暴落だった。
念のために、この1990年の午年に先立つ2年間の相場展開もみておこう。辰年の1988年と巳年の1989年の日経平均株価の終値はそれぞれ前年末比で39.8%高、同29.0%高。この後に続く1990年までの3年間を通じて、見事に「辰巳天井、午尻下がり」が的中していたのである。
では、「辰巳天井、午尻下がり」は毎回、的中しているのだろうか。日本経済の復興が本格化した1950年代以降の「午年」をみると、「尻下がり」のケースはあと2回ある。前年末比で5.8%安の1954年と同じく18.6%安だった2002年である。
しかし、1950年代以降にあと3回あった「午年」をチェックすると、1966年が前年末比2.4%増、1978年が同じく23.4%増、2014年が7.1%増と“お告げ”はすべて外れだ。

年末の日経平均株価の推移(表)

年末の日経平均株価の推移(グラフ)

結局のところ、過去6回を見ると「午尻下がり」は的中が3回、外れが3回で、的中したのは半分に過ぎない。この程度の確率ならば、科学的な根拠もないし、神経質になる必要はまったくないと結論付けてよいだろう。

GDP減速と株高予想から読み解く、2026年経済の行方

次は、足元のGDP(国内総生産)指標から2026年の経済を探ってみよう。内閣府の11月半ばの発表を見ると 、2025年4~6月期に前期比0.6%増だった実質GDP(季節調整済み、速報値)は、7〜9月期に0.4%減(年率換算で1.8%減)と減速した。これは6四半期ぶりのマイナスだ。筆者はこの結果は先行き弱含みというサインとみている。減速の原因で目立つのはトランプ関税の影響で、米国向け輸出の低迷の引き金になった。
この点について、筆者は、来年が米国の4年に一度の中間選挙イヤーなので、支持率の低下に直結しているインフレを抑制するため、トランプ政権は関税の引き下げを迫られるとみている。とはいえ、日本の対米輸出が劇的に回復するとは考えにくい。
加えて、内需の面では、「サナエノミクス」の物価高対策などで補正予算の一般歳出がコロナの3年間を除いて史上最大という規模に膨らんだことも、逆効果になりかねないとみている。円安傾向が続き、物価が押し上げられるリスクも大きい。そうした中では、賃上げが物価高に追い付かず、内需の柱である個人消費の足を引っ張りかねないだろう。
一方、株式相場の先行きについては、プロのアドバイザーというべきエコノミストたちの中に、残された師走相場や来年の早い時期にも日経平均株価の6万円乗せを予想する見方がある。彼らが根拠としているのは、歴史的なカネ余りが続く可能性が高いという見方だ。実際のところ、代表的なマネーストックのM2(現金通貨+預金通貨+準通貨+譲渡性預金)は、米国、ユーロ圏、日本、中国と世界中で増加が続いている、こうしたカネ余りが株式相場をもう一段押し上げても不思議はない。
筆者はそうした強気が実現しないと主張する気は毛頭ない。むしろ、目下のリスクは、日経平均の6万円乗せの前か後かは別にして、どこかで高値警戒感が臨界点に達することではないかと考えている。この3年近くの急騰がスピード違反ではないかと指摘したいのだ。加えて、最近の1日の値動きの大きさも気になるところである。1日に1000円以上の値動きのあった日を数えると、トランプ関税に一喜一憂した今年4月の6回に続き、11月にも5回もあったのだ。この値動きの大きさが、株価が大きく下落する前兆とされる「高値波乱」であっても筆者は驚かない。 

万が一の「午尻下がり」に備えるには? 

最後に、仕事柄よく質問されるので、NISA(少額投資非課税制度)などを利用して株式相場を始めてから、それほど日の経たない投資家の皆さんに一つメッセージを送りたい。よく聞かれる質問は、「NISAで日経平均株価と連動する投資信託を買ったんですが、これは安全ですよね」といったものだ。率直に言って、筆者には「イエス」と言う自信を持てない点が二つある。
第一は、相場や指数が数年単位の長期にわたって下げ続ける可能性があるという点だ。指数に連動する投信は相場が上がろうが下がろうが、相場の大きな動きに連動する点が最大の特色だ。下がるときは連動しないと考えることは間違いだ。
第二は、最近の日経平均株価で顕著になっているAI関連銘柄の影響力の高まりという問題だ。端的に言うと、ソフトバンク、アドバンテスト、東京エレクトロンのわずか3銘柄の最近の日経平均株価の値動きの7割近くに寄与する事態が生じている。似たような現象は米株式相場の代表的指数S&P500でも起きている。マグニフィセント7(GAFAM5社とテスラ、エヌビディアの7社を指す)の動向が米国株式の代表的指標のS&P500の動きを大きく左右している点にもある。つまり、日経平均連動型の投信を購入しても、その効果はこの3銘柄だけに投資したケースと変わらないという状況が生じているのだ。
万一の「午尻下がり」のリスクに備えるのならば、割安に放置されている個別銘柄に分散投資をする手もあるのではないだろうか。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年12月1日時点の情報に基づきます。
※あくまでも町田徹さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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