まいど、相場の福の神こと、藤本誠之です。
2025年夏の株式相場は、まさに「異様な加熱」という表現がふさわしい展開となりました。日経平均株価の急騰をはじめ、テーマ株の過熱ぶりは多くの投資家の記憶に残る相場となったのではないでしょうか。今回は、なぜここまで上昇したのか、その背景を分析し、秋相場に向けた戦略をお話しします。
2025年夏相場の状況を振り返り 〜なぜここまで上がったのか?
2025年夏相場の最大の特徴は、生成系AIバブルの継続とその波及効果でした。ChatGPTをはじめとする生成AIの普及が本格化し、企業のDX投資が一気に加速。これに伴い、AIデータセンターの建設ラッシュが全国各地で展開されました。
この流れは半導体関連銘柄から始まり、その周辺産業へと波及していきました。特に注目すべきは電力関連銘柄の急騰です。AIデータセンターは膨大な電力を消費するため、電力インフラの整備や省エネ技術への投資が急拡大。これまで注目されていなかった電力株や、データセンター向け冷却システムを手がける企業まで、幅広い銘柄が物色されました。
日経平均株価も、この流れに押し上げられる形で急騰。テーマ株の過熱ぶりは、まさにバブル的様相を呈していたといえるでしょう。AI関連銘柄の中には、短期間で株価が2倍、3倍になるものも続出し、市場全体が熱狂的な雰囲気に包まれました。
夏相場が過熱した背景 〜世界経済と日本経済の好循環
この異様な相場加熱の背景には、世界経済と日本経済の好調な動きがありました。
まず、米国経済について見てみましょう。春先にはトランプ関税の影響を懸念した急落がありましたが、夏にかけて市場はその影響を「当初予想より軽微」と判断するようになりました。さらに、経済指標の解釈においても、市場は実に都合の良い見方をしていました。経済指標が悪ければ「利下げ期待が高まる」として好材料視し、良ければ「企業業績好調の証拠」として評価する。まさに「いいとこどり」の相場展開でした。
一方、日本経済も好調な推移を見せました。トランプ関税の日本への影響は当初の懸念ほどではなく、むしろ日本企業の競争力向上につながる面もありました。インフレは続いているものの、それを上回るペースで賃金も上昇し、実質賃金がプラスに転じたことで個人消費も堅調に推移。企業業績の改善期待が高まり、株式市場への資金流入を後押ししました。
この日米両国の良好な経済環境が、AI関連のテーマ性と相まって、夏相場の異様な加熱を演出したのです。
秋相場の見通し&注目ポイント 〜東証の新基準がもたらす変化
秋相場を考える上で最も重要な変化は、東京証券取引所の発表でした。9月26日、東証はグロース市場の上場維持基準を大幅に見直すと発表。上場5年経過後に時価総額100億円以上という新基準は、現行の「上場10年経過後に40億円以上」と比べて格段に厳しいものです。2030年3月1日以降、最初に到来する事業年度末から適用されます。
この発表を受けて、私が注目しているのは時価総額50億円から100億円の企業群です。以前、東証がPBR1倍割れ企業に対してガバナンス改善を求めた際、バリュー株相場が始まり、該当銘柄の水準訂正が進みました。今回も同様の現象が期待できます。
特に東証グロース市場の企業は、新基準をクリアするために積極的な成長戦略を打ち出してくる可能性が高まることが考えられます。M&A、海外展開、新規事業への投資など、様々な成長シナリオが描かれるでしょう。投資家としては、各企業がどのような成長戦略を描くのか、その実現可能性はどの程度なのかを見極めることが重要になります。
また、AI関連のテーマ性は秋以降も継続すると予想されます。ただし、夏場のような全面高ではなく、より選別色の強い相場展開になるでしょう。本当に競争力のある技術を持つ企業と、単なるテーマ株との格差が明確になってくる時期です。
個人投資家へのアドバイス 〜秋相場での投資行動のコツ
まず、1銘柄にこだわらないことです。特に夏場に大きく上昇した銘柄については、感情的な執着を持たず、客観的に判断することが大切です。買値から10%下がった銘柄は迷わず損切りし、次の投資機会に備えましょう。一方で、上昇している銘柄についてはできるだけ引っ張り、値幅を取ることを心がけてください。ただし、高値から20%下落したら売却のタイミングです。
東証グロース市場の銘柄については、社長の影響が非常に大きいという特徴があります。経営者の資質、ビジョン、実行力が株価に直結するケースが多いのです。そこで活用していただきたいのが、私がラジオNIKKEIで担当している「この企業に注目 相場の福の神」や「企業トップが語る威風堂々」のオンデマンド配信です。
これらの番組では、企業のトップが直接語る成長戦略や経営哲学を聞くことができます。決算資料や四季報だけでは分からない、経営者の人柄や熱意を感じ取ることができるでしょう。特にグロース株投資においては、このような定性的な情報が投資判断の重要な材料になります。
まとめ
秋相場は夏場の熱狂から一転して、より冷静な投資判断が求められる相場になると予想されます。テーマ性だけに惑わされず、企業の本質的な価値を見極める目を養ってください。東証の新基準という追い風を受けて、真の成長企業が浮き彫りになってくる時期でもあります。
しっかりとした投資戦略を持ち、冷静な判断で臨んでいただければと思います。皆さんの投資成功を心から願っています。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年9月28日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤本誠之さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
年間400社の上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介しています。
「まいど!」のあいさつ、独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIで5本の看板番組を持ち、年間で約240社、累計で1000社以上の上場企業社長が、藤本の番組に出演しています。その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。
日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、「相場の福の神」と呼ばれる日本一上場企業社長(1300社超)に会ったマーケットアナリスト証券アナリスト、ITストラテジスト、All About株式ガイド、Youtuber
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