金融・投資

2024.01.18

【2024年】新NISAってどう変わる?現行NISAとの違い、かしこく活用するコツ

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岸田首相が打ち出した「資産所得倍増計画」の目玉ともいえるのが新NISAです。投資家にとっては、夢のような制度ですがそもそもどのようなメリットがあるのでしょうか? 国策だけに使わないともったいないこの制度、この機会にしっかり理解しましょう。

今回お話を伺ったのは…

山中伸枝(やまなかのぶえ)さん

山中伸枝(やまなかのぶえ)さん

心とお財布を幸せにする専門家 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役  https://www.nobueyamanaka.com/asset-advantage/
FP相談ねっと 代表 https://fpsdn.net/
一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事 https://siaa.or.jp/
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。
執筆:金融庁サイト 有識者コラム連載、50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話(東洋経済新報社)、ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他
www.nobueyamanaka.com

そもそもNISAとはどんな仕組み?

NISAの日本語表記は少額投資非課税制度と言います。「投資はお金持ちがするものだから私には関係ない!」とかたくなに投資を避けていた日本人に、非課税で投資ができるという特典を付けるので投資をしましょうと推奨する制度です。
例えば金融機関の投資口座で投資信託を100万円で購入したとしましょう。1年後にそれを売却し10万円の利益が出た場合、2万315円の税金が差し引かれます。しかしNISA口座で同様の利益を得ると税金が一切かからず10万円まるまる自分の手元に入るのです。
20.315%という税率は消費税の2倍以上です。なぜ国はそんな特典を付けてまで国民に投資を推奨したいのでしょうか?
ご存じのように、日本の預金金利はずっと低いままです。インフレも懸念される中、預金だけでは、お金の価値はする一方です。さらに長生きに備えるには、国民一人一人が経済成長の恩恵を受ける投資をすることで自らの生活を守る必要があります。
そこで、イギリスで広く普及していたISAという非課税制度を日本に輸入してきた、これがNISAの始まりです。ISAに日本のNを付けてNISAとしているのです。
そのような背景のもと2014年に一般NISAが、2016年からはジュニアNISAが、そして2018年にはつみたてNISAが生まれました。現行3種類のNISAが併存しているのですが、それぞれ使い勝手の悪さなどが指摘され、今回それらが整理、統合され2024年1月に新NISAが誕生します。

新NISAの変更点とは?

これまでのNISAはそれぞれに税制優遇期限が設けられていました。例えば一般NISAなら5年、つみたてNISAは20年です。その期間内で投資商品を売却し利益が出たら非課税で受け取ることができますが、その期間を過ぎると課税されてしまいます。
また非課税口座に預け入れする金額にもそれぞれ上限が設けられていました。一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円、さらにどちらか一方しか使えないため使い勝手の悪さが指摘されていました。
二つのNISAが統合され生まれ変わるのが新NISAです。非課税期間は無制限、年間投資可能額は360万円と大幅拡大となります。一方投資開始における下限はないので、100円からスタートできるとしている金融機関もあります。
新NISAは、投資に不慣れな方でも始めやすい仕組みを備えています。それがつみたてNISAを踏襲する「つみたて投資枠」というものです。ここでは、金融庁が「長期・積立・分散投資」に向いている投資信託をセレクトして、それ以外は購入できないようにしています。
「長期・積立・分散」という三つのキーワードは、過去の市場分析をもとに導き出された失敗しない投資のセオリーです。無理のない金額でコツコツ積立、どっしり構えて長期で運用を継続すると、市場のアップダウンが均され経済成長の恩恵を受けやすくなるとしています。日本には、6000本程度の投資信託がありますが、つみたてNISAに認められている商品は約300本、わずか5%です。
一方、投資経験者で個別株を買いたい、ご自身が選んだ特定の投資信託が買いたいという方は、一般NISAを踏襲した「成長投資枠」で購入することができます。こちらの投資方法は積立に限定されず一括投資も可能です。
つみたて投資枠は年間120万円ですが、実際この枠を超え年間360万円まで「つみたてNISA」対象商品を購入することができます。一方成長投資枠は年間240万円で、これを超えて個別株などを購入することはできません。

新NISAをかしこく活用するコツ

・生涯投資枠を活用した資産形成プランを立てる
新NISAには新しい概念として「生涯投資枠1800万円」が設定されました。NISA口座に投資元本として預け入れられる金額の上限という意味です。例えば毎年360万円の投資を行うと5年で1800万円の上限に達してしまいます。すると、一旦そこで新規の投資はできなくなるのですが、例えばその後資金500万円を引き出すとその枠が翌年以降投資枠として再生されるので、新たな投資を年間360万円以内で継続することができます。NISA口座においては、投資商品の保有期間などに制限がありませんので、いつでも金融商品の売買が可能です。
例えば、共働き夫婦がお子さんの誕生とともにそれぞれ月3万円ずつ積立を行います。この積立を18年継続すると、5%運用なら2000万円まで膨らみます。仮に3%運用であっても1700万円には到達します。18年間の投資元本は1296万円ですから、お子さんの大学資金として投資元本500万円ほど解約し引き出します。もちろんそこについた利益は非課税で受け取ります。
更に二人は積立を継続します。時には応援している会社の株を買い配当や株主優待を楽しんだり、あるいは住宅購入資金として一部引き出したりしながら投資を継続し定年後は生涯投資枠に達した資産を老後資金として少しずつ取り崩していきます。
このように、新NISAは一生もののお財布として活用ができます。自由度が高いので、ライフプランに合わせて長期の資産形成が実行しやすくなります。
・年間投資枠の拡大に合わせて資金計画の見直しを!
すでにNISAをしている方は、今年の年末に自動的に新NISA口座が開設されるので、特に何もしなくても結構です。とはいえつみたてNISAをしている方は、せっかく年間投資枠が拡大しますので、今後の資金計画および運用商品の選択を再考されると良いでしょう。またこれまでつみたてNISAで投資をしていた商品は、新NISAに合算されるのではなく別の資産としてそのまま非課税運用が継続します。
・一般NISAは新NISAへロールオーバーできない点に注意
一般NISAをしている人も同様、これまでの投資は新NISAに引き継がれず独立した形で運用が継続します。ただ来年からはロールオーバーができなくなりますので注意が必要です。例えば2019年に一般NISAで購入した投資商品は2023年末で5年を迎え非課税期間が終了します。その際の選択肢は、売却するか課税口座に移すかの2択となります。
・NISAを始めるなら、2023年中が◎
これから投資を始めようという方は、今年のうちにつみたてNISAを始めておくのも一考です。2023年の投資分は20年間非課税で運用できますし、なにより来年に備え投資を学ぶ良い勉強期間になります。つみたてNISAを始めるには、金融機関で口座を開設する必要があります。この際、それぞれの金融機関ごとに取扱う商品数が異なるのでできるだけ選択肢が多く、わかりやすい情報提供をしてくれるところで開設すると良いでしょう。
・保有のみなら複数口座も可!
NISAは一人一口座が原則ですが年に1回変更が可能です。例えばA銀行でNISAをしていたけれど、翌年はB証券会社で行うということができます。その際A銀行のNISA口座をすべて解約し新たにB証券で投資を始めることもできますし、A銀行のNISA口座をそのまま残し運用のみを継続し、B証券のNISA口座で新たな投資を行うことも選べます。つまり一人一口座というのは、投資資金投入口座は年間1口座という意味で、保有のみの口座は複数持つことができます。

まとめ

資産形成の新たな仕組みとして登場する新NISAは、非課税メリットが国民に与えられた権利ともいえますし、同時にそれぞれが自己責任で資産形成を行う義務を負ったのだということも心得ましょう。
お金は人生に選択肢をもたらしてくれるものです。ぜひ自分の人生を支える自助努力という義務だけではなく、豊かな人生を送るための権利としてNISAを活用していきましょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年8月22日時点の情報に基づきます。
※あくまでも山中伸枝さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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