金融・投資

2026.09.11

2026年米中間選挙がわが国の経済や金融市場に与える影響

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米中間選挙が日本経済や金融市場に与える影響について、真壁昭夫さんが解説します。底堅く推移する米国経済に潜む「トランプリスク」をはじめ、原油価格の不透明感や円安・金利動向、今後の日本市場への波及効果をわかりやすく読み解きます。

今回お話を伺ったのは…
真壁昭夫(まかべあきお)さん

真壁昭夫(まかべあきお)さん

多摩大学特別招聘教授。1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。
https://www.tama.ac.jp/guide/teacher/makabe_akio.html

底堅い米経済と「トランプリスク」の懸念

ここまで、米国経済は基本的に底堅く推移してきました。労働市場は改善基調をほぼ維持し、個人消費を下支えしました。AI(人工知能)データセンター建設など、設備投資も伸びました。それは、わが国の半導体や電気機器、さらにハイブリッド車(HV)などの輸出を支えました。
今年の米国中間選挙において最も注目されるのは、トランプ大統領の政策への影響です。いわゆる「トランプリスク」への懸念が高まっており、選挙結果によっては米政治の先行き不透明感が増し、トランプ大統領の政策運営にも変化が生じる可能性があります。
そうしたトランプ大統領の政策リスクは、わが国の経済・金融市場にも相応のインパクトを与えるはずです。目下のところ、イラン戦争の影響もあり、原油価格の動きが不安定です。今後も原油価格が上昇するようなことになると、米国の物価上昇懸念が高まって個人消費の勢いが失われることも考えられます。
米国の景気に減速の懸念が高まると、わが国の輸出などに打撃が及ぶリスクがあります。また、インフレや財政悪化への懸念から米金利が上昇すれば、景気を冷やすだけでなく、株価にもマイナスの影響を与えかねません。
外国為替市場では、米金利上昇や高市政権の積極財政政策などもあり、円安傾向が続いています。そうした状況下、日銀は金利引き上げに動くことが予想されます。米国のベッセント財務長官は、日本政府に対して円高政策を促しているようです。ただ、11月3日の米中間選挙によって、米国議会の情勢次第で、米国の政策が変化することも考えられます。それは、わが国の経済や金融市場の動きに重要な変化を与えることになるでしょう。

今年の米国の中間選挙の焦点

米国の中間選挙は、大統領任期4年の中間年(2年目)の11月に、実施される国と地方の統一選挙です。現在、上下両院で、トランプ大統領の与党である共和党は僅差ながら多数派を維持しています。連邦議会選挙では、上院(定数100)の約3分の1と、下院(定数435)の全議席が改選されます。各州の議会選挙や基本的に36州の知事選も実施されます。
中間選挙を控えた8月末、一つの世論調査では、トランプ大統領の支持率が33%でした。1期、2期目の在任期間を通して最低でした。下院選挙の政党支持率調査によると、民主党支持は43〜45%、共和党の43%前後を上回りました。
トランプ大統領の支持率低下と民主党への支持の主な要因は、トランプ大統領の経済政策にあると考えられます。バイデン前政権から続く、物価高や生活負担の高止まりから人々の不満は高まっているようです。
過去の中間選挙では、大統領の所属政党(現与党は共和党)が議席を失うパターンが多くありました。今年の中間選挙では、民主党が下院で多数派になり、上院は共和党が過半数を維持する、ねじれ議会の状態になると予想する専門家が多いようです。
ただ、事態はそう単純ではないかもしれません。民主党の内部では、左派から右派まで色々な意見が出ています。そのため、民主党としても、反トランプで一致団結とは言えない状況のようです。
1990年代以降、民主党は多国間の自由貿易協定を推進しました。大手の多国籍企業にも比較的寛容な姿勢をとりました。現在、民主党の穏健(主流)派は、そうした政策理念を基礎にしています。しかし現在のところ、米国経済の成長率を引き上げる具体的なビジョンは示せていません。
一方、党内では“民主社会主義者(DSA系)”と呼ばれる政治家たちの影響力が増しています。DSAはアメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America)の略語です。ニューヨーク市長選で当選した、ゾーラン・マムダニ氏はその代表例です。民主党内部で意見統一が必ずしも図られていないため、中間選挙で、本当にトランプ大統領率いる共和党に勝利できるかは不透明な部分もあります。

わが国の経済・金融市場への影響

基本的に、あと2年間トランプ政権が続きます。これまでのトランプ大統領の政策運営を見ると、中間選挙後、米国が多国間の経済連携などを重視する方針に回帰することは現実的ではないでしょう。
むしろ、トランプ大統領は支持率の維持や任期後の動向を見越して、これまで以上に“MAGA(米国を再び偉大にする)”を強力に打ち出す公算は大きいと考えられます。それは、わが国の経済に無視できないマイナスの影響を与える恐れがあります。
トランプ大統領は、米国に製造業を連れ戻すと主張してきました。トランプ政権がカナダに続き、日中欧などに追加の関税を課すことが考えられます。それは、わが国の自動車、工作機械、半導体などの輸出減少要因につながります。
関税引き上げは、グローバルなサプライチェーンを不安定化させます。米国をはじめ世界各国で企業コストが増大して業績懸念が高まり、日本を含む世界経済全体への下押し圧力となるでしょう。
トランプ政権の外交政策にも、無視できない懸念があります。特に、イラン戦争など中東情勢のさらなる混乱が懸念されます。仮に、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長引けば、世界経済への原油や天然ガス、石油関連の基礎資材供給は減少し、インフレ懸念は一段と上昇するはずです。
その場合、わが国では、ナフサなど基礎資材の不足が再燃することも懸念されます。今春の様に、製造業から建設業、サービス業などの景況感が悪化するかもしれません。接着剤や塗料、さらには食料品の包装資材には追加的な価格上昇圧力が加わります。今年秋口以降、多くの製品の値上げが予定されていることもあり、わが国のインフレ懸念はこれまで以上に高まるとみられます。
現政権が財政拡張政策を重視していることもあり、わが国の長期金利はさらに上昇すると予想されます。金利上昇は、住宅ローンを抱える個人や借入金のある企業の利息支払い負担を増加させ、景気にとって大きな重荷となります。それは、景気にとって大きなマイナス要因になります。一部企業の資金繰り悪化懸念が出るかもしれません。

懸念高まる金融市場への影響

経済・金融市場への影響の中で、懸念されるのは為替市場の動きです。これまでの日米の政策運営、円の為替レートの推移を見ると、中間選挙後、為替市場での動きが一段と不安定化することが考えられます。
8月下旬の時点で、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会関係者は、金融引き締めの必要性が高いと明確に示しました。背景には、賃金の緩やかな伸びや中東情勢の緊迫化、財政拡大、気候変動リスク等によるインフレ懸念があります。米国の政策金利が引き上げられれば、さらなるドル買い・円売り圧力につながるでしょう。
一方、わが国では、高市政権は財源を明確にしないまま財政拡張を進めています。2027年度の概算要求は、過去最大の140兆円超になる見通しです。また、現政権は日本銀行に対して、政府と歩調を合わせるよう要請をしてきました。そうした状況下、円売りを仕掛ける投資家が増えることも想定されます。
また、トランプ政権がイランへの攻撃を激化させると、外国為替市場では有事のドル買いが増えるはずです。その場合、原油や天然ガスなどの価格上昇と、円安の相乗効果でわが国の輸入物価は上昇する恐れが高まります。すでに、4~7月の輸入物価上昇率は前年同月比で20〜30%の上昇を記録しました。
円安は、海外展開する大手企業の業績を押し上げるメリットがある一方で、輸入物価の騰貴を通じてインフレ懸念を増幅させます。これが結果として、国内金利の上昇圧力を強めることになります。
インフレが高進すると、わが国の個人消費は下押しされることになるでしょう。これまで、景気を下支えしてきた、民間企業の設備投資も減少する恐れが高まります。値上げが難しい中小企業では、事業継続に行き詰まる事業者が出てくるかもしれません。
米国の政策は、色々な経路を通って、わが国の経済や金融市場に重要な影響を与えます。特に、現在のトランプ大統領の政策運営の先行きの読みにくい状況では、今年の米国中間選挙の結果は、日本のみならず世界の経済や金融市場に大きな影響を与えることになりそうです。米国中間選挙に関する動向から目が離せません。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年9月4日時点の情報に基づきます。
※あくまでも真壁昭夫さんによる経済情勢の分析に関する見解および例示であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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