今回お話を伺ったのは…
株式売買の手数料無料化(ゼロコミッション)とは?
手数料ゼロと聞くとなんでも無料になるかというとそうではありません。基本的には、株式売買時に証券会社に支払う売買手数料がゼロになることを指します。この手数料無料化をゼロコミッションとも言います。
貯蓄から投資へのフレーズのもと、NISA制度の構築などにより投資を始める人が日々増加しています。そのような中で、証券会社による顧客獲得競争も激化しています。各社が差別化する中で打ち出された一つが、このゼロコミッションです。条件付きではあるものの、株式売買手数料をゼロとすることでメインの取引に使ってほしい。そして、株式だけではなく、投資信託や債券など幅広く運用を行ってもらうことで株式の売買以外の部分で手数料を獲得したい。こうした流れがオンライン証券では一般的となってきています。
投資家にとっては、株式売買の手数料が無料となることは喜ばしいことです。余分なコストをかけずに運用が可能となるからです。ただし、条件付きであるため、その条件を満たさなければ株式の売買手数料がかかる点には注意が必要です。
ゼロコミッションを掲げるオンライン証券会社の比較
それでは、大手オンライン証券5社をもとに、どのような条件を満たせばゼロコミッションとなるのか、確認していきましょう。
SBI証券
SBI証券では、インターネットコースにおけるインターネット取引(個人・法人)がゼロコミッションの対象です。ダイレクト、IFA、対面コースは対象外となります。そして、以下の3つの報告書を郵送から電子交付に切り替える必要があります。
- 円貨建・米株信用取引の各種報告書
- 外貨建(米株信用を除く)の各種報告書
- 特定口座年間取引報告書
こうした条件を満たすことにより、国内株式の現物取引、信用取引、S株(単元未満株)取引の売買手数料が無料になります。なお、新NISAでは条件なしで米国株式や海外ETFの売買手数料が無料となります。
楽天証券
楽天証券では、手数料コースをゼロコースに変更するだけで国内株式(現物取引、信用取引、かぶミニ®)の株式売買手数料が無料となります。ただし、ゼロコースでは、楽天証券のSOR/Rクロスを利用することが前提となります。
SORとは、東京証券取引所やPTS(私設取引システム)などの複数の市場から最良価格を自動的に選び注文する方法であり、Rクロスとは楽天証券のダークプールを利用した注文マッチングシステムのことです。楽天証券は、このシステムを利用することでコスト削減につながり手数料無料を実現させています。
楽天証券のゼロコミッションの特徴は、SORやダークプールの利用が条件となっていることです。ちなみに、SBI証券、マネックス、auカブコム証券は、ゼロコミッションの条件と関係なくSORを投資家に提供しています。松井証券はベストマッチという独自の約定価格改善サービスを、ゼロコミッションに関わらず提供しています。
このほか、投資信託の1ヵ月の平均残高が3,000万円以上などの大口優遇条件を達成している場合には、国内株式手数料(現物取引、信用取引)が約定代金にかかわらず無料となる「超割コース 大口優遇」という仕組みもあります。NISA口座では、国内株式、投資信託、米国株式、海外ETFの売買手数料が無料となっています。
auカブコム証券
auカブコム証券では、1日定額手数料を選択した場合、現物株式と信用取引の売買手数料が合計で約定代金100万円まで無料となります。このほか、対象月の1日時点で25歳以下の場合には、現物株式の取引手数料は無料となります。
デイトレードで信用取引を活用したい場合や、当日中に返済するデイトレード向けの信用取引を活用する場合にも取引手数料は無料です。この場合、買い方金利および貸株料も無料となります。
このほか、プチ株®(単元未満株)の積立買付手数料も無料です。プレミアム積立含む投資信託の購入時手数料も無料となっています。NISA制度では、国内株式、プチ株®、米国株、投資信託の売買手数料が無料です。
なお、基準日の預り資産残高が1億円以上などの条件を満たす大口優遇プランに該当すれば、国内株式(現物・信用)取引の手数料が無料となる仕組みもあります。
松井証券
松井証券では、特にコースを選ぶといったことはなく、現物取引と信用取引の1日の約定代金の合計で売買手数料が決まるシンプルな仕組みとなっています。このうち、1日の約定代金合計金額が50万円までであれば売買手数料は無料です。なお、未成年を含む25歳以下の方に関しては、1日の約定代金合計金額に上限なく売買手数料が無料となっています。
また、インターネット経由でデイトレードによる信用取引を行った場合の新規・返済の手数料も無料です。投資信託も購入時手数料は無料です。
このほか、米国株現物取引は、約定代金が2.22米ドル以下の場合は手数料がかかりません。米国株信用取引は、約定代金が3.33米ドル以下であれば手数料は無料です。
NISA制度では、国内株式、米国株式、投資信託の売買手数料が無料となっています。
マネックス証券
マネックス証券では、通常の株式取引においては手数料無料体系をとっていません。ただし、ワン株と呼ばれる単元未満株取引の場合には、買付時の手数料が無料です。売却時には約定代金の0.55%(最低手数料52円)が売買手数料としてかかります。米国株式に関しては、約定代金が1.1010米ドル以下の場合に売買手数料がゼロとなります。投資信託の手数料は無料です。
NISA口座では、すべての取引の売買手数料が無料です。国内株式のほか、米国株式、中国株式、投資信託の売買手数料が無料となっています。中国株式の売買手数料が無料というのはマネックス証券の特徴といえます。
<大口取引を除く一般的なゼロコミッションの条件など>
証券会社 |
ゼロコミッションの条件 |
売買手数料が無料となる金融商品 |
1日の無料となる約定代金の上限 |
SBI証券 |
・インターネットコースを選択する(スタンダードプラン、アクティブプラン) ・以下の3つの報告書を電子交付に切り替える
円貨建・米株信用の各種報告書
外貨建(米株信用を除く)の各種報告書
特定口座年間取引報告書
|
・国内株式 (現物取引、信用取引、S株(単元未満株)) ※S株のスプレッドなし
|
・現物取引、信用取引ともに制限なし |
楽天証券 |
・ゼロコースを選択する ・楽天証券のSOR/Rクロス利用同意が必須
|
・国内株式 (現物取引、信用取引、かぶミニ®(単元未満株)) ※かぶミニ®は寄付取引のみスプレッド無料。リアルタイム取引の場合、スプレッドがかかる
|
・現物取引、信用取引ともに制限なし |
auカブコム証券 |
・1日定額手数料を選択する |
・国内株式(現物取引、信用取引)・投資信託・プチ株®(単元未満株)の積立買付手数料 |
・現物取引と信用取引を合算して1日100万円までであれば無料 |
松井証券 |
・特にコースを選択する必要はなく、1日当たりの約定代金で決定される |
・国内株式(現物取引、信用取引)・投資信託・米国株式は少額取引の場合には売買手数料が無料 |
・現物取引と信用取引の1日の約定代金の合計が50万円までであれば無料 |
マネックス証券 |
・取引毎手数料コース、一日定額手数料コースとあるが、いずれも国内株式について売買手数料が無料に設定されていない |
・ワン株の買付時手数料無料・投資信託・米国株式は少額取引の場合には売買手数料が無料 |
・なし |
証券会社 |
NISA口座における手数料 |
SBI証券 |
国内株式、投資信託、米国株式、海外ETFの売買手数料が無料 |
楽天証券 |
国内株式、投資信託、米国株式、海外ETFの売買手数料が無料 |
auカブコム証券 |
国内株式、プチ株®、米国株、投資信託の売買手数料が無料 |
松井証券 |
国内株式、米国株式、投資信託の売買手数料が無料 |
マネックス証券 |
国内株式、米国株式、中国株式、投資信託の売買手数料が無料 |
<主要オンライン証券の単元未満株の取引手数料比較>
まとめ
株式の売買手数料を中心に、ゼロコミッションについて大手オンライン証券5社の状況を解説しました。一言でゼロコミッションといっても、各社で条件が異なります。取引金額のほか、手数料無料対象となる金融商品などを比較し、ご自身にとって使いやすい証券会社を選択することで、コストを抑えた取引が可能です。
手数料の違いを理解したら、各社のデモ画面を活用し、取引のしやすさも確認しましょう。また、手数料以外の部分として、今後利用したい金融商品があるかどうかなども証券会社選びのポイントとなります。
証券会社選びが終わったら、口座開設を行いましょう。そして手数料を気にせずにご自身の資産作りを行える環境を作っていきましょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年8月9日時点の情報に基づきます。
※あくまでも伊藤亮太さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。