2024年、日本株は本来あるべき株価に戻ってきた
今の日本株式市場をどう見るか?
日経平均株価は、2023年には年間で約28.2%も上昇したうえに、2024年になってからも年初から大きく上昇し、2月にはついにバブル後最高値を更新したことで大いに盛り上がっています。
東証が公開する投資主体別売買動向をみると、そのどちらも上昇時の大きな原動力となっているのが海外投資家の日本株買いであることがわかります。円安の要因もありますが、米国のインフレが一服したことで株式へ資金がシフトしたことや、半導体セクターを中心に日本企業の好調な決算を背景に力強い上昇を見せてくれました。
EPS(一株当たり利益)はバブル時では約640円程度でしたが、最高値を更新した2024年2月では、2,300円以上となり4倍近くになっていることから、企業業績が本来あるべき株価に戻ってきたといえるでしょう。
今後も市場の改革が進み、企業が成長投資やM&Aなどに尽力していけば日本株式市場は本格的に株価を定期的に更新する波に乗れるでしょう。日本株には悲観的な個人投資家が多いようですが、そのあいだにも海外投資家が日本株を買っているという現実があります。
今後の見通し
日経平均株価は継続して上昇することを想定していますが、そのために重要なのは日本企業の売上高が伸びること、そしてそこからより高い収益を生み出すことです。日本企業の売上高は過去10年で見ても2割も上昇していませんが、営業利益では4割以上も上昇しています。株価は企業業績の伸びによって上昇するのが本来あるべき姿だと私は思います。外部要因も多々ありますが、企業決算に注目していくべきです。
ただし短期的にはAIブームによる半導体セクターを中心とした株価の急騰や円安によって上昇している日経平均株価には割高感が否めません。予想PERもほぼ17倍まで上昇しており、一度落ち着いて相場を俯瞰する必要があるようです。
2023年3月8日のメジャーSQでは3月限の日経平均先物のSQ(特別清算指数)は「39,863円92銭」となりました。同日の終値は「39,688円94銭(前日比+90円23銭高、+0.23%)」で、日経平均株価がSQ値を下回って終わりました。短期的には相場が弱含むサインが出ています。
とはいえ安易なポジション取りは危険です。株価は上昇と下落を繰り返しながら上がっていくものなので、短期的な変動に踊らされないよう、目先は企業決算に注目して日本株の実力を確認しましょう。
個人投資家さんへのアドバイス
個人投資家が今後注目しておくべきイベントには、企業本決算や米国大統領選挙、米国金利の動向、中国景気の波及など多数あります。しかしながら、本来一番気を付けるべき点はこうした相場で下落したタイミングを狙った逆張りをし、安易に大きな投資資金を入れないことです。
2023年の株価も、最初の半年で2割以上と大きく上昇した後は年末まで調整していました。2024年は既に日経平均株価が2割ほど上昇し40,000円を超えたことで、個人投資家の売買も活発になっています。売買をすることに問題はありませんが、自分の資産状況に合わせた適切な投資金額で投資することが重要です。株式のようなハイリスクハイリターンの投資であれば、買付時期を分散するのも大切です。
短期的な目線で相場を判断することも危険ですが、資金の投入時期についてもしっかりと考慮し、投資していきましょう。
※以上は、2024年3月9日時点の情報に基づきます。
日本株はまだまだ「買い」だが、銘柄の選択が重要!
今の日本株式市場をどう見るか?
日経平均株価が最高値を更新し、上昇基調が続いている様子ですが、今の日本株はまだまだ買いに行ってもいい状況かと思います。前回1989年に日経平均株価が高値をつけた際と比較すると、PERの水準はまだまだバブルの状態にはありません。
今後の見通し
今回の日経平均株価の高値更新についてはいくつかの特殊要因が重なったものかと思います。アメリカのエヌビディアの株価上昇を追い風とした半導体銘柄の急進や、アームの好業績を反映したソフトバンクグループの株価高騰。寄与度の高いファーストリテイリングの好業績やドル円が150円を超えるような円安を受け、トヨタなどの輸出関連銘柄が上方修正を繰り返したようなことが挙げられます。
一方で、TOPIXに関しては未だ最高値を更新していないということがまだまだバブルのような高騰感がない証拠です。今後は行き過ぎた半導体銘柄の揺り戻しをこなしつつも、TOPIXも史上最高値を狙っていく展開となることが考えられます。
個人投資家さんへのアドバイス
このような状況下で買っていく際、ある程度銘柄選択が重要な相場になると考えられますが、3月中は配当狙いの高配当銘柄、4月以降であれば、中小型の成長銘柄が狙いどころと考えます。
もちろん「PBR1倍割れ問題」をきっかけとしたバリュー株の上昇もあるとは思いますが、PBR1倍を達成した後にさらに上昇を継続するとはあまり考えにくく、再度日本株を牽引していくのは、この相場環境でも利益を成長させていける中小型の成長銘柄かと考えます。
今回東証グロース市場が崩れてしまったのは、コロナ禍が終わってしまったことが大きな要因です。直近のグロース銘柄はリアルの店舗を持つような銘柄は少なく、BtoBのいわゆるSaaS銘柄などネット関連の企業が多くなっています。こういった銘柄はコロナの直接的な影響は受けにくく、逆にコロナによってIT環境への投資が進み、業績が良くなっていたという特徴があります。昨年の5月に新型コロナが5類へと変わり、アフターコロナが進んだことによってリアルへの回帰が起こり、重荷となっていました。
また、ウクライナ戦争をきっかけとした世界的なインフレにより、世界中で利上げなどが起こったことでマーケティングや広告の費用が出しにくくなっていることも重石の一つでした。今後は消費財の価格転嫁が進み、ある程度業績が良くなる企業が増えていくことを考えると、過度に削減したマーケティング費用が通常に戻り、ネット関連企業の業績は上向いてくることが考えられます。
また、22ヶ月連続の下落を見せている実質賃金が直近では下落幅を縮小させており、今期の春闘を受けて上向いてくるとした場合、個人消費やインバウンド需要を受けた内需関連の銘柄にも注目が集まりそうです。また、新NISAの追い風や、日経平均株価の最高値更新を受けた資産効果により国内消費が堅調になりそうなことも考えると、外需の輸出関連企業が相場を牽引していた2023年の市場とは打って変わり、国内の内需関連企業が狙い目だと考えます。
※以上は、2024年3月12日時点の情報に基づきます。
市場の過熱感に振り回されず、長期的な視野で投資を
今の日本株式市場をどう見るか?
日本の株式市場における日経平均株価の動向は、多くの注目を集めています。史上最高値を更新したことで多くのメディアに取り上げられている今、日本株への関心を高めている方も多いのではないでしょうか。しかし、この「実感なき株高」とも称される現象は、経済全体の動向と必ずしも一致していない、という声もあります。
注目すべき点は、日経平均株価の動きに見られる特定の偏りです。
日経平均株価は、日本を代表する最も有名な株価指数であり、日本株といえば日経平均株価といったイメージを持つ人も多いでしょう。この指数が34年ぶりに史上最高値を更新したという事実は、日本経済全体が好調であるかのように受け取られがちですが、それは必ずしも正確ではありません。
日本にはもう一つ重要な株価指数である東証株価指数(TOPIX)がありますが、こちらは2024年3月現在では史上最高値を超えていません。
日経平均株価は225の企業から成り立っており、日本経済新聞社が独自の基準で選んだ銘柄の株価平均で計算されています。一方、東証株価指数(TOPIX)は東京証券取引所プライム市場に上場する約2,000の企業の時価総額の加重平均で算出されています。
この二つの指数の算出方法の違い(日経平均が株価平均型、TOPIXが時価総額の平均)により、評価のポイントも違ってきます。特定の銘柄による影響、例えば、日経平均ではファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテストなどの構成比率が異常に高く、これらの銘柄の上昇が日経平均株価を押し上げている側面があります。特にファーストリテイリングの構成比率は10%を超え、この3社だけで日経平均株価を算出するために選定された225銘柄のうちの約25%程度を占めています。これらの特定銘柄の上昇が目立つために、TOPIXと比べて日経平均株価の上昇速度が速い傾向にあるのです。
今後の見通し
現在の日本株式市場の展望について考えるとき、偏りや過熱感に対する懸念の声もあるものの、これが必ずしも悪い状況を示しているわけではありません。
実際、TOPIXも史上最高値にかなり近づいてきており、トヨタや三菱UFJフィナンシャルグループといった日本を代表する企業もまた上場来高値を更新しています。これらの株価上昇には様々な理由があり、その背景を理解することが重要です。
特に「生成AI」というテーマが注目されています。
チャットGPTの普及によってOpenAI社が脚光を浴び、その株を保有するマイクロソフトがアップルを時価総額で追い越しました。また、生成AIに不可欠な最先端半導体技術を持つエヌビディアの業績は著しく成長しており、これが株価の爆発的な上昇を牽引しています。
日本の強みは、半導体そのものではなく「半導体製造装置」にあります。エヌビディアが製造する半導体の検査装置をほぼ独占しているアドバンテストなど、日本企業は生成AIとエヌビディアの成長に伴う恩恵を大きく受けており、これが市場を後押ししています。
加えて「デフレ脱却」が海外投資家の間で日本株の再評価を促しています。日本は長らくデフレに苦しんできましたが、最近になって目標としている2%程度のインフレが続いており、これが健全な経済成長の兆しと捉えられています。インフレ率以上の経済成長があれば、景気は成長に向かうため、デフレ脱却は日本株にとって長期的なポジティブ要因と見ることが可能です。
さらに、東京証券取引所からの資本コスト改善要請や新NISA制度の導入も、市場に良い影響を与えています。
これらの施策は、割安に放置されていた多くの日本株への資金流入を促しており、海外投資家だけでなく個人投資家の買いや、事業法人による自社株買いも伴って、日経平均の史上最高値更新を可能にしました。
全体として、日本株式市場は複数のポジティブな要因により後押しされています。長期的な視点から市場を見ることで、現在の動きをより深く理解し、将来的な投資戦略を練るための有用な情報を得ることができるでしょう。
個人投資家さんへのアドバイス
日経平均株価が上昇基調にある現状を踏まえ、日本株に関心を持つ個人投資家の方々へのアドバイスとして、いくつかの注目ポイントや気を付けるべき点、投資行動のコツを共有します。
短期的視点:様子見のタイミングか?
・季節性アノマリー:「セル・イン・メイ」という言葉が示すように、5月以降、特に夏場は夏枯れ相場とも呼ばれ、株価が横ばいか調整に入る傾向があります。
暴落の可能性:10月には過去に市場が大きく暴落した事例が複数あり、秋口までは特に大きな動きへの警戒が必要です。
・大統領選挙の影響:2024年はアメリカ大統領選挙があり、政治的な不確実性から市場のボラティリティが高まる可能性があります。
長期的視点:買いのチャンス
・デフレ脱却と経済成長:日本が本当にデフレを脱却し、長期的な景気成長フェーズに入るのならば、日本の株式市場はさらに活況を呈することが期待されます。そうなるとPER(株価収益率)水準の上昇も期待でき、これが株価のさらなる上昇を後押しする可能性があります。
投資行動のコツ、気を付ける点
・過熱感への注意:2024年に入ってからの急ピッチでの上昇には、市場の過熱感が伴います。テクニカル分析でも過熱感が指摘されている現状を認識し、上昇トレンドが継続しているのかを見極めることが重要です。
・長期的視野での投資:短期的な市場の変動だけに惑わされず、長期的な視野での投資を心がけることが大切です。特に、重要な経済指標の定期的な確認からの日本景気の成長の持続性を考えた投資判断が求められます。
投資は自己責任のもとに行うものですが、市場の動向を慎重に分析し、自身のリスク許容範囲内で行動することが成功への鍵となります。
※以上は、2024年3月12日時点の情報に基づきます。
※本記事は、あくまでも執筆者個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。楽天証券メディア「トウシル」ではコラム連載やYouTubeにレギュラー出演する他、メディアヘの寄稿多数。東証JPXで講師を務めるなど、外部講師の経験も豊富。
著書に「60歳を過ぎたらやってはいけない資産運用」「老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門」がある。
HP:リーファス株式会社 (https://refas.co.jp)