株式

2024.04.23

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

3月18日(月)に四季報春号が発売され、もうすぐ1ヶ月になります。四季報ラバーとしては、すでに全ページに目を通していなければならないのですが、なんせ年度末はバタバタと忙しくて。とくに今年は、家族のイベントと自分の仕事が重なって、ゆっくり四季報を開く時間がなかなか取れない状況です。読者のみなさんの中にも、慌ただしい毎日に、じっくり四季報を読む時間が取れないとお嘆きの方も多いことでしょう。
そこで今回は、わたしがいつも四季報を手にして最初に行う、究極のスピード銘柄チェック法を紹介します。名付けて「月足ぴょこ」チェック。数年前に編み出して、今までにも各所で紹介しておりますので、すでにご存じの方もいるかもしれませんが、あらためて「月足ぴょこ」チェックについて、まとめてみたいと思います。

「月足ぴょこ」とは?

「月足ぴょこ」は、四季報の上部に掲載されている月足チャートが「ぴょこ」っと、陽線になっていることです。陽線というのは、四季報では中が空洞になっているロウソク足(以下のチャートでは赤色のロウソク足)で、月の初めの株価より、終わりの株価が高かったことを表しています。今までほとんど株価が動かず凪状態だったところから、急激に「ぴょこ」っと陽線が立っているチャートのみをひたすら探すのが、「月足ぴょこ」チェックです
実際に「月足ぴょこ」からのその後、株価が上昇した銘柄を紹介します。
2023年秋号で「月足ぴょこ」銘柄だったやまみ(2820)は、四季報に記載されている株価は1,712円(8/28)ですが、直近2024年春号では3,775円(2/26)と、ざっくり2.2倍に上昇しました。

月足チャート:やまみ(2820) 画像提供元:SBI証券チャート

また、2022年秋号で「月足ぴょこ」が出ていたJVCケンウッド(6632)の株価は、205円(8/29)から2023年の新春号の時点では764円(11/27)に、ざっくり3.7倍に上昇しました。
こんな風に「月足ぴょこ」が出たあとは株価が大きく上昇する銘柄もあります。

月足チャート:JVCケンウッド(6632) 画像提供元:SBI証券チャート

「月足ぴょこ」はその後上昇するのか

月足で大きな陽線が立つというのは、1ヶ月間、株価が継続的に上昇していることを表します。1日、2日の短期的な上昇ではなく、継続した上昇なので、そこにはなんらかのファンダメンタルズ的なプラスの要因があることが考えられます。たとえば今まで業績が赤字だったのが黒字に転換するとか、新年度予想が大幅増益とか。そういったファンダメンタルズの裏付けがある場合、その後も好調が続きやすいです。「月足ぴょこ」は、その上昇スタートのサインとして読み取ることができます。
ただし、「月足ぴょこ」でも十分注意する必要があります。四季報には、キャッシュフローも記載されていますが、営業キャッシュフローが2期連続でマイナスになっている銘柄は、避けたほうが無難です。資金繰りが詰まると、場合によっては倒産の可能性もゼロではありません。
また、有利子負債が多すぎるのも危険です。今後、金利が上昇すれば、返済負担が利益を圧迫します。例えば、純利益の10倍以上の有利子負債がある企業は避けた方がよいかもしれません。

四季報春号で見つけた「月足ぴょこ」銘柄

今回の四季報春号は、いつもより「月足ぴょこ」銘柄が少なかったように感じました。今年に入っての日本株は、大型株が大きく上昇して、それ以外はあまり動かないといった二極化が進んでいます。ほとんどの銘柄が、株価がかなり上昇しているか、冴えない動きをしているかのどちらかに偏っていたせいかもしれません。
そんな中でも、きれいな「月足ぴょこ」を描いている銘柄をいくつか紹介します。

月足ぴょこ 例1

ルネサンス(2738)

ルネサンス(2738) 画像提供元:SBI証券チャート

総合スポーツジムの最大手。ジムはコロナで大きなダメージを受けた業種のひとつで、ルネサンスも例外ではありません。行動制限が解除されても、光熱費など維持費にお金がかかるためなかなか業績が改善しなかったという状況でした。

月足ぴょこ 例2

ベガコーポレーション(3542)

ベガコーポレーション(3542) 画像提供元:SBI証券チャート

家具雑貨をネット販売する「LOWYA」を運営しています。こちらはさきほどのスポーツジムと違って、コロナ禍では自宅を整える人が増えたため、家具販売は好調でしたが、その後の反動減により業績が落ち込んでいました。

月足ぴょこ 例3

ニフティライフスタイル(4262)

ニフティライフスタイル(4262) 画像提供元:SBI証券チャート

大手ポータルサイト比較検索の不動産が収益の柱。その他、求人や温泉のアプリなども運営しています。2021年12月上場の比較的若い会社ですが、名前から分かるとおりニフティが65.2%株を保有しています。
上場直後に1,823円の高値をつけ、そこからずるずると下落し続ける典型的な軌跡をたどっていました。

月足ぴょこ 例4

フジシールインターナショナル(7864)

フジシールインターナショナル(7864) 画像提供元:SBI証券チャート

熱で収縮するラベルで市場シェア5割の業界トップ企業。海外売上比率が48%のグローバル企業でもあります。プライム市場に上場していますが、PBRは0.88倍と1倍割れの状況です。
ほかにも、「月足ぴょこ」に当てはまる銘柄はありますので、ぜひ見つけてみてください。
こうしてチェックした「月足ぴょこ」銘柄のファンダメンタルズを確認することで効率的に投資対象を絞り込むことができると思います。
四季報からどうやって銘柄を選んでいいか分からない、じっくり読んでいる時間がない、という方におすすめの「月足ぴょこ」チェック。ぜひお試しください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年4月15日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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