株式

2024.03.13

今回お話を伺ったのは…

足立武志(あだちたけし)さん

足立武志(あだちたけし)さん

公認会計士・税理士・個人投資家。足立公認会計士事務所代表。株式会社マネーガーディアン代表取締役。一橋大学商学部経営学科卒業。
25年にわたる株式投資の経験をもとに、個人投資家が株式投資・資産運用で成功するために必要な実践的な知識・情報を書籍、セミナー、コラム、ブログ、メルマガ等で精力的に提供。「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(いずれもダイヤモンド社)はシリーズ累計24万部のベストセラー。楽天証券にて株式投資や税金コラムを14年にわたり連載中。
公式ブログ:https://kabushiki-adachi.com/
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昨年から続く物価上昇に、賃金上昇の兆しも

新型コロナも落ち着き、人々の暮らしも平常モードにすっかり戻りました。そして経済再開とともに日本株も大きく上昇しています。
2023年には日経平均株価が28%という大きな上昇となりましたが、2024年もその勢いは止まらず、ついに2月22日には日経平均株価が39156円97銭まで上昇し、1989年12月につけたバブル時の高値38,957円44銭をおよそ34年ぶりに更新、史上最高値をつけました。
さて、皆さんが日々生活していて最近特に感じるのが、「色々なモノの値段が上昇している」ということではないでしょうか。
筆者もよく飲食店で食事をしますが、どのお店も価格が10%~20%くらい上昇していますし、ホテルもコロナ前の水準より価格が高くなっていると感じます。
スーパーに並ぶ品物も価格が上昇していますし、メーカー側は価格を上昇する代わりに内容量を減らしているケースも多く、これも実質的な値上げです。
そして最近注目すべき流れとして、賃金の上昇の流れも起きつつあるということです。例えば飲食店などは慢性的な人手不足であり、時給をアップしないと求人ができない状況です。
また、先日テレビをみていると北海道のニセコの状況が映し出されていましたが、ホテルの清掃員の時給が2,000円超えと紹介されていました。東京のアルバイトの時給より高いと筆者も驚きましたが、他にも外資系が地方にスーパーを進出する際、相場より高い時給でアルバイトを募集している動きもあります。
もし継続的な賃金の上昇、しかも物価上昇率を上回る実質賃金の上昇が全国的に起きれば、物価上昇でも購買力が維持できますから、適度なインフレの状態で経済が循環することが期待できます。
日経平均株価の上昇は、こうしたインフレ・物価上昇および賃上げにより日本経済がデフレから脱却する可能性が高まっていることを先取りしているのではないかと筆者はみています。

金利とインフレ・デフレの関係

・金利とは?

金利とは、一般的には預金利子や借入金利息などのことを指しますが、株式投資・資産運用の世界で一般に金利といえば「長期国債の利回り」や「中央銀行の政策金利」を指すことが多いです。
長期国債の利回りは、日本やアメリカであれば、10年物国債の利回りが代表的なものです。また、中央銀行の政策金利は、日本なら日本銀行、アメリカならFRBが決定しています。

・なぜインフレだと金利が上がるのか?

各国の中央銀行の大きな役割は「物価の安定」です。景気が良くなりすぎると、需要(モノを買いたい)が供給(モノを売りたい)を上回る状況が続くので、物価が上昇します。このことをインフレと呼びますが、これが度を超えてしまうと、物価が大きく上昇してしまい、国民生活も混乱してしまいます。
インフレの要因の一つが、中央銀行の政策金利が低いことです。借入による調達が低金利でできることから、市中に回るマネーが増え、需要過多からインフレを引き起こします。そのため、インフレを抑制すべく中央銀行が政策金利を引き上げるのです。
逆に景気が悪化した場合、需要を引き出して景気を浮揚させるため政策金利を引き下げます。
また、長期国債の利回りは、この中央銀行の政策金利の動きをマーケット参加者が先読みして変動します。
ですから、今後中央銀行が利下げをしそうだ、と多くのマーケット参加者が思えば10年物国債の利回りは下がりますし、逆に利上げをしそうだ、という予想が増えれば10年物国債の利回りは上がります。

・日本の景気はよくなっているのか?

日本の賃金上昇率はここ30年の間、ほとんど上昇していませんし、足元では名目賃金は上昇しているものの物価上昇に追いついておらず、実質賃金は減少が続いています。景況感が悪い原因もここにあると言われています。
2024年に入り、日経平均株価が大きく上昇していますが、これはすでに実質賃金が上昇して景気が良くなっているから、というわけではありません。賃金上昇率が今後好転し、適度なインフレと賃金上昇が景気の好循環をもたらすという期待感が株価を押し上げていると考えておいた方がよいでしょう。

図表1・各国の名目・実質賃金の推移

出所:内閣府HP

インフレ・金利上昇が進んだら、どうなる?

今後もインフレが続くかどうかは、賃金の上昇次第と言えるのではないでしょうか。
もし、インフレが続いたとして、賃金が上がらなければ消費者の購買力は低下しますから、財布のひもを締めて節約に走るでしょう。そうなったら、価格を上げても買ってくれる人がいないので、結局は値下げを余儀なくされ、再びデフレ経済に沈んでしまいます。

・これからの日銀の金利政策の方針とは

現状、日銀はゼロ金利政策を継続していますが、一方で市中では物価上昇が続いています。もし、インフレ・物価上昇が続く中、低金利が継続すると、理屈的にはインフレがひどくなってしまいます。
中央銀行は物価安定が重要な役目の一つですから、インフレの悪化を防ぐために早晩利上げをせざるを得なくなると思います。ただ、今までの超低金利の継続が異常な状態だったわけですから、利上げは短期的にはマーケットにショック安をもたらすかもしれませんが、長い目でみればプラスに作用すると思われます。
日本国債10年物利回りをみると、マーケットはすでに日銀の利上げをある程度織り込んでいることが分かります。

図表2・10年物国債 利回り推移

・インフレ・金利上昇が進んだら株式市場はどうなる?

適度なインフレ・金利上昇であれば、それは景気が良いことによる健全な状況といえますから、株式市場にとってプラスです。
ただ、過度なインフレになったり、金利が大きく上昇するようなことになれば、景気へのマイナスの影響が大きくなってしまいますから、株価によってマイナスに作用することになるでしょう。

経済環境が激変する中で、注目の業界&銘柄は?

インフレ・金利上昇が進み日本経済が大きく変化する可能性が高まる中、どのような業界・銘柄に注目していくのが良いのでしょうか?
一言でいえば、「インフレや金利上昇がプラスに作用する業界・銘柄」ということになります。例えば銀行株は、金利上昇により貸出金の金利アップが見込まれ、それが収益の増加につながります。
逆に、借入金が過多の銘柄は、金利が上昇すると借入金利息の支払い額が業績にマイナスの影響を与えますので、金利上昇は逆風になるでしょう。

図表3:三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の株価チャート

また、インフレ・物価高になると原材料費も人件費も上昇するでしょうから、ライバル社に対する「価格競争力」の有無がポイントの一つとなります。
例えば食品業界でいえば、いかに他社と同じジャンルの食品を、他社より低コストでつくることができるかが業績に直結します。スーパーマーケットが食品を仕入れるとき、より安い価格で納入できる会社に対し、多くの需要が集まるはずです。
したがって、営業利益率や、ROEなど資本利益率などを比較し、同業他社と比べてより高い利益率を挙げている銘柄を選ぶとよいでしょう。
インフレによる諸コストの上昇を上回る売上アップを図れるかどうか、という視点で銘柄選定をしてみてください。

まとめ

バブル崩壊から30年超が過ぎ、「失われた30年」と言われて久しいです。この間、日本は長期間のデフレ経済により低迷を続けてきました。
しかし足元では、インフレ・金利上昇だけでなく、賃金上昇の兆しも見えてきています。インフレだけでは早晩日本経済は尻すぼみになってしまいますが、実質賃金上昇と物価上昇が同時に起これば、諸外国の過去30年のように、企業業績が向上し、株価も大きく上昇することが期待できます。
また、九州に続々と半導体工場が建設されていることなどをみても、アジア地域の製造業の拠点が中国などから日本国内に回帰しているように強く感じています。これらも日本経済にとっては大きなプラス効果となります。
巷では、日経平均株価がバブル時の高値を超えて40,000円を突破するのも時間の問題だ、と騒がれていますが、実際に2月22日には39000円を突破して史上最高値を更新しましたし、筆者は日経平均株価が100,000円に達するのも全く夢ではないと思います。
実際、日本株がバブル崩壊後低迷していた30年間に、アメリカをはじめ諸外国の株価は大きく上昇しました。それと同程度の上昇を果たせば、日経平均株価が100,000円というのは現実的な話です。
そのためには、適度なインフレと物価上昇、そして何よりも賃金の上昇が不可欠です。失われた30年を今こそ取り戻し、活気ある日本に生まれ変わることを、私たち個人投資家も株式投資を通じて実感したいものですね。
また、日本株が長期的に大きく上昇することが期待される中、これからの成長や利益が望める銘柄を見つけたなら、適切なタイミングで買っておきたいです。
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※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年2月22日時点の情報に基づきます。
※あくまでも足立武志さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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