株式

2023.05.31

Introduction

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、
実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。
ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著者に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw
 2022年の株式市場を振り返れば、日経平均株価の最高値が年明けすぐの1月5日(水)につけた29,388円、その後、何度か上げ下げを繰り返すも、結局高値を超えられず冴えない一年となりました。その原因は、
1.コロナ感染が、5波、6波、7波と何度も押し寄せたこと
2.ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や、地政学リスクの勃発
3.欧米をはじめ、世界中でインフレが急激に進行し、景気を鈍化させたこと
などが挙げられます。
 欧米に比べてコロナ感染からの経済回復が遅れていた日本は、2022年こそリオープンによるリベンジ消費に沸き立つと期待していただけに、がっかりな一年でした。とはいえ、希望がないわけではありません。わたしが暮らす東京には、外国人の方の姿が日に日に増え、一時はシャッター街のように寂しくなっていた原宿の竹下通りもまっすぐ歩けないほど人混みに溢れています。肌感としては、日本の景気は決してお先真っ暗ではありません。

2023年の投資テーマは?

 2022年は、日米の金利差拡大により、1ドル150円台と、1990年以来およそ32年ぶりの円安水準にタッチしました。年末にかけてやや円高方面に戻したものの、2023年も為替の変動に振り回されることは、覚悟しておいたほうがよいでしょう。
 となると安心して物色できるのは、国内でお商売をしている企業となります。個人的には、コロナで大打撃を受けたところから這い上がってくるようなスポ根企業を応援したい! ズバリ! 2023年の投資テーマは「復活力」。ズドーンと奈落の底に落とされたところから、”ピンチはチャンス”と捉え、積極的に攻めの姿勢を貫く企業には、大和魂を感じます。

原宿のど真ん中に回転寿司!?

 コロナ感染による経済活動の規制が解除され、わたしの仕事場がある原宿にも人出が戻ってきておりますが、コロナ前とは、ガラリと店舗のラインナップが変わりました。いまだ空室もちらほらありますが「こんなところに、こんなお店が入ったんだ」という新鮮な発見も多々あります。そこで、目についたのが、原宿明治通り沿いのビルの柱にどーんと書かれた「くら寿司 原宿」の文字。店舗は4階ですが、十分に目をひきます。
 ビルの前には、10代、20代の若い男女がたくさん群がっています。さっそくググって調べてみたところ、原宿店は、グローバル旗艦店の3号店とのこと。グローバル旗艦店は、ジャパンカルチャーの発信を意識した店舗で、デザインは、なんとあの、佐藤可士和氏。ホームページには、”「寿司×スイーツ」をコンセプトとして、ジャパニーズモダンなデザインに加え、くら寿司スイーツブランド「KURA ROYAL」を中心に思わずシェアしたくなる限定スイーツや空間を演出。”とあります。これは行くしかない!
 とはいえ、ヤングの聖地に一人で行く勇気はありません。高1の娘(妹)を誘ったところ「行く行く!」と喜んでついてきてくれました。

いちはやく人手不足に対応

 飲食店といえば、コロナの打撃をもっとも受けた業種のひとつです。何度も押し寄せるコロナの波に、どれほど翻弄されたことか、想像に難くありません。店を開けたり、閉めたり、時間調整したりで、従業員の調整もかなり大変だったことでしょう。大学生の娘(姉)は、コロナ禍で飲食店のバイトを始めましたが、慣れてきた頃にお店が閉まり、次いつ入れるか分からないということが何度かあり「もう飲食店ではバイトしたくない」とのこと。おそらくそう考える若い人が増えたのでしょう。飲食店ではどこもバイトが集まらないと嘆いています。もちろんくら寿司とて、同様の悩みを抱えていたと思われますが、そのソリューションとして、なるべく人を必要としない徹底的なスマート運営を行なっています。具体的には、入店から退店までお客さんが従業員と一切、接することなく飲食できるセルフ会計やセルフレジを、2021年10月には国内ほぼ全店に導入を完了。また、感染予防対策も徹底しており、会話による飛沫などの菌やウイルスからお寿司とお皿を守る、特許取得済みの抗菌寿司カバー「鮮度くん」の導入も行なっています。

楽しさとおいしさの体験型

 娘のアドバイスにより、専用のアプリで予約を行なってから来店すると、14時という中途半端な時間にもかかわらず、店内には順番待ちの行列が。若い人の意見は聞くものですね。入口に設置されたタッチパネルに入力すると、5分ほどで席に案内されましたが、店員さんの案内ではなく、電子表示による誘導です。席につくと、注文もすべてタッチパネル。高速レーンで注文したお寿司がスパッスパッと配送されます。なんとスマートな動線。
 昭和世代のわたしの感覚では、飲食店のよさは、店員さんの接客次第という思い込みがあります。ところが、ここまでノンストレスで飲食できると、気が利かない店員さんにイラッとすることもなくむしろ快適なのでは?と感じるように。もちろん店員さんがまったくいないわけではなく、困ったときにはすぐフォローできるような配慮がされています。
 くら寿司は、1999年からコロナ前の2019年まで連続増収を遂げている超優良企業です。ところがコロナによって休業をよぎなくされ、2021年には初めての赤字転落。翌年も連続赤字となりましたが、現在進行中の2023年10月期は大幅黒字転換予想です。苦しいときに徹底的に無駄を省き、省人化を猛スピードで進め、さらには、コロナがなければ空かなかったであろう都心の好立地に積極的に店舗を構えて、攻めの経営を行なっています。
 ピンチに陥ったときの経営判断は、スピードが大事です。先が見えない中で正しい判断をくだすのは、相当な重責のはず。社長はどんなお顔なのかしら?と、これまた好奇心でホームページで拝見したら、とても親しみの湧くやさしそうな笑顔のお写真。(https://www.kurasushi.co.jp/company/ir/management/message.html

どん底からの復活こそ株価を押し上げるチャンス

 2023年の景気予想は、どちらを向いてもあまりよい話は聞こえてきません。欧米ではインフレによる消費意欲の減退や、利上げによる経済活動の抑制が避けられず、中国では、いまだコロナ感染に苦しめられ経済再開への糸口が見えません。そんな暗いニュースが毎日のように流れてくると、とてもとても株式投資をする気持ちにはなれないかもしれません。
 しかし、そんなときこそ”森を見ず、木を見よ”です。暗い森の中でも、青々と成長している木はあります。くら寿司のように、一度谷に落とされたところから這い上がってくる力がある会社は、以前よりも強くしなやかに生き延びていくでしょう。
 そんな視点で株スイッチを入れて周りを見渡すと、案外オワコンからの復活を遂げている会社はたくさんあります。たとえば、かつて賞味期限切れの商品を販売するという不祥事で工場停止に追い込まれた不二家は、2022年12月期は”ちょこまみれ”シリーズの大ヒットで、過去最高益を更新予定です。カラオケボックス”まねきねこ”を運営するコシダカホールディングスは、コロナ前の2019年度には過去最高益を達成するほど絶頂だったところから、ドスーンと奈落の底に落とされ赤字転落しましたが、やはりそこから”ひとりカラオケ”利用の提案や、駅近・繁華街への積極出店で急激に業績を回復し、株価もきれいに上昇しております。
 つねに成績優秀なスター選手より、挫折を経験したことある苦労選手を応援してしまうように、投資家も赤字から黒字転換したような企業を応援したくなる特性があります。2023年は、ぜひそんな「復活力」のある企業を発掘してみてはいかがでしょう? 
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業の紹介、特定の個別銘柄の推奨、または取引の誘引をするものではありません。
本記事に掲載されている全ての情報は、2022年12月23日時点の情報に基づきます。

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