金融・投資

2024.01.18

「ほぼ日手帳」が海外でも人気! 投資家目線で「ほぼ日」を評価するなら…【投資スイッチ#13】

  • facebook
  • twitter
  • LINE

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1 )など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

街には早くもクリスマスツリーが飾られ、すでに年末に向けてのカウントダウンが始まっています。この時期になると、今年やり残したアレコレは置いといて、来年はどんな年にしようかと少し先の未来へと思考を巡らせる人も多いことでしょう。そんなちょい先の未来を描くために、新年度の手帳を用意するのは有効です。この時期、文房具売り場の主役はなんといっても手帳です。これだけデジタルが発達し、スケジュールだってクラウドで管理できるというのに、アナログ手帳じゃないとダメという人は案外多いのです。
じつはわたしも、今年から「朝活手帳」というアナログ手帳をつかいはじめ、すでに2024年度版も購入済みです。10年近くアナログ手帳を使わず、すべてデジタル上で管理していたのにいったいなぜでしょうか?
そもそもは、ひょんなことから、朝活手帳の刊行者である池田千恵さんと知り合ったことがきっかけです。そこで朝活手帳の存在を知り、実際に使ってみると、案外、デジタルとアナログのダブル使いがわたしには合っていることが分かりました。
アナログ手帳には、日々の小さな目標や、1日の感想など、感情の記録が多く、あとから振り返る楽しみがあります。そして、未来の予定を書き込むのは、デジタルカレンダーに入力するより断然ワクワクします。どうしてそうなのかは分かりませんが、朝活手帳に限らず、アナログの手帳がなくならないのは、そういった魅力を感じてる人が多いからでしょう。
というわけで、アナログ手帳の魅力を再発見したわけですが、となると投資に活かさない手はありません。手帳といえば、日本一有名といっても過言ではないあの手帳。「ほぼ日手帳」を投資対象として分析したいと思います。

売上の半分は海外!? 「ほぼ日手帳」が売れる理由

2017年に上場したほぼ日(3560)の売上は、ご存じ「ほぼ日手帳」と、生活雑貨などを販売する「ほぼ日商品」で構成されています。直近10月20日に発表された2023年8月期の決算では、「ほぼ日手帳」の売上が41.36億円で全体の売上の60.7%を占めています。前年比では売上が28.3%伸び、売上構成比は6.1%アップしました。
じつは「ほぼ日手帳」は、海外でも人気です。日本の手帳が海外で売れるなんてこれはもう画期的だと思いますが、海外売上比率は年々伸びており、現在は「ほぼ日手帳」の売上の47.7%、つまり約半分は海外で売れているのです。“ほぼ日”というネーミングから、当初は海外で販売しようとは思っていなかったのではないでしょうか? とくに最近では、ヨーロッパでの伸びが大きく、前期比では72.5%と急伸です。デザインにうるさいヨーロッパでも認められつつあるとは、すばらしいですね。
2001年に「ほぼ日手帳」は販売スタートし、2024年度版で23年目を迎えるロングセラー商品です。累計販売数は、なんと1,000万部を突破! たしかにわたしの周りでも、「ほぼ日手帳」愛用者は、ずっと愛用し続けているんですよね。
もともと「ほぼ日手帳」は、社長の糸井重里氏が、手帳1冊の中に、糸井氏の感想も公の予定も、いろいろな錯綜する情報をすべてまとめてしまえるコンテンツを、手帳という形で商品化したものです。それがここ最近、海外で注目されてきた理由は、じつはデジタル化によって、情報過多となったせいでもあります。毎日大量に流れてくる情報に疲れたときに、内なる自分に向きあい、自分自身の思考や感情を、自分自身の手を使って書き留める「ジャーナリング(journaling)」が、アメリカで流行し始めました。その流れから「ほぼ日手帳」が口コミでじわじわ広がったのです。
アナログ手帳は、ただ単にスケジュール管理をするためのものではなく、自分と向き合うためのツールでもあります。それは、わたし自身がアナログ手帳の利用を再開して、肌身で感じています。朝、起きて、まず心を整えるために手帳を開く。夜、1日の終わりにその日の感情を持ち越さないために手帳を開く。手帳のある毎日が、日々の生活を少し緩めてくれる気がするのです。

投資家として、ほぼ日を評価するならば

ほぼ日の上場直後は、注目度も高く、株価は上場来高値6,890円をつけましたが、その後は右肩下がりで、現在は約半値の3,000円台前半になっています。業績の推移は、コロナ前の2019年8月期に営業利益6.4億円で過去最高益をつけたのち、大きく凹んでいますが、2024年8月期は、2019年の最高益を上回る6.6億円の予想を出しています。
コロナ禍では、「生活のたのしみ展」などのイベントが開催できず、かなり苦しんだようですが、その間に社内でコンテンツ力を磨く活動に注力したことが、その後のジャンプアップにつながっているように感じます。
そのひとつとして、インターンからベテランまでほぼ日のメンバー全員が、ある企画について「もっとこのようにしたらよいのではないか」「このように紹介したらよいのではないか」と意見をぶつけあう「ほぼ日の道場」というのが毎週開かれたそうです。その結果、コンテンツを作るプロセスである「生み出す」「仕入れる」「伝える」「盛り上げる」力が飛躍的に高まり、会社全体としての力がついたとのこと。
「ほぼ日」のコンテンツ力は、独自の強みと言えます。どれだけAIが発達しても、ゼロから何かを生み出すことはできません。デジタル化が進む中で、かえって「ほぼ日手帳」のアナログのよさが光ったように、これからの世の中、多くのものが機械化される中で、人間らしいコンテンツを生み出す企業としてほぼ日が際立ってくるような気がします。「ほぼ日手帳」がどんどん海外に拡散していることも追い風です。
しかし、投資対象として判断する上で、どうしても目をつぶれないことがあります。それは流動性の低さです。
発行株数が2,320千株と、もともと少ないのですが、そのうちの27.05%を糸井重里氏、20.69%を糸井氏の娘である池田あんだ氏、14.08%を取締役の山本英俊氏が保有しており、この3名で60%以上を占めています。その結果、わたしたち投資家が市場で売買できる株数は非常に少なくなるため、1日の売買代金が平均300万円程度なのです。このような場合、買うときはまだよいとして、売りたいときに売れないというリスクが高まります。
最近、糸井氏が自分の保有株の一部を役員、正社員、契約社員、バイトなど約190人に100株ずつ贈与しました。これは、そもそも糸井氏に、流動性を高めようとする意図がないように思えます。

売らない前提で考えてみる

わたしが運営しているオンラインサロンのメンバーさんの中に、ほぼ日の株主がおり、株主総会の招待状を見せてくれました。
通常の株主総会は、業績の報告、今後の展望、最後に質疑応答で大体2時間程度ですが、ほぼ日の場合は12:00に開場で、終了は17:15。ほぼ日で働くほぼ日乗組員と糸井氏が、ひな壇に集合し、質問に答える「ひな壇」質問会や、株主のみなさんが各自持ち寄ったプレゼントを交換する会なんかもあります。また、ほぼ日が新しく立ち上げたキャンプのブランド、「yozora(ヨゾラ)」の最初のプロダクトであるテントの展示もあるそうです。
なんだかワクワクしますね。このワクワク感を毎年味わうことを目的として投資するのもアリかもしれません。そうすれば売ることを考えず、ずっと保有していればよいのですから、NISA口座で買ってもいいですね。配当も毎年出していますので、非課税で配当を受け取りながら、ほぼ日の生み出すワクワク感を体験する、そんなゆるりとした投資もまた楽しいかもしれません。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年11月24日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

RELATED

>