金融・投資

2022.07.04

自分の貯蓄体質と投資の前提条件を確認して、インデックス投資を始めよう

  • facebook
  • twitter
  • LINE

投資初心者に向いていると紹介される「インデックス投資」を始める前に、確認すべきポイントがあるとFPのかえるさん(尾上堅視さん)は語ります。これから投資を始める方が押さえておくべきことについて、お話を伺いました!

今回お話を伺ったのは...

FPかえるさん(尾上 堅視さん):個人投資家として、2005年から日本株式や投資信託への投資を始めて資産形成をスタート。その後、証券会社や運用会社などへ取材を行うライターとして活動。2010年には、家計の総合相談センターの相談員(FP)として従事。現在は、個人投資家の金融リテラシーの向上と、お金と仲良くお付き合いする方法を広く伝えるため、FPとして活動中。
ブログ:      https://kaeru.orio.jp/
Twitter:      https://twitter.com/kaeru_onou
Facebook: https://www.facebook.com/kaeru.onou

1. 投資を始める前に、まずは「貯蓄体質」になろう

ー 最近は、お金についてメディアで取り上げられることが多くなったと感じます。投資に興味が出てきた人も増えていると思うのですが、投資を始める前に押さえておくべきことはありますか?

尾上さん: 投資を始める前に押さえておきたいことは2つあります。

1. 自分が貯蓄体質かどうか
2. 投資を始める前提条件の設定

投資を続けられる人は、前提としてお金を貯められる体質があります。まず、「自分の貯蓄体質」を確認してみましょう。貯蓄体質の方はさらに、「投資を始める前提条件」を設定しておきたいですね。

この2つを行ってから、投資を始めると良いと思います。具体的な投資手法として、投資初心者の方には「インデックス投資」から始めてみるのはいかがでしょうか。

ー 「自分の貯蓄体質」と「投資の前提条件」を確認した上で、投資を始めたほうが良いということですね。

それでは、順にお聞きしていきます。まずは、なぜ最初に自分の貯蓄体質を確認すべきなのでしょうか。

尾上さん: 投資をしていれば、損失を抱える期間がどうしても発生すると思います。もし、銀行残高が少なかったり、キャッシングを利用したりしている人が投資をすると、現金が急に必要になったときに、投資した金融商品をその都度売却することになってしまいます。値上がりしていれば利益が出ますが、売却するときに値下がりしていたら元も子もありません。

また、貯蓄をせずに短期的な資金が必要になるたびに金融商品を売却していては、複利効果(※)を十分に享受することができません。急な出費に備えて資金を確保し、貯蓄体質になってから、余剰資金で投資を始めるべきだと考えます。個人的には生活費の3ヶ月から6ヶ月分の貯蓄ができてから投資をスタートするのが良いと思っています。

※複利効果とは、運用で得られた収益を再投資することで、運用金額が増え、その結果リターンも増えていく効果のこと。

ー 投資を始める前に、貯蓄ができる習慣を身に付ける必要があるのですね。

尾上さん: そうですね。収入よりも支出が多く、かつ貯蓄がないのであれば、投資を始めてはいけませんね。

また、ネット上には「投資で○百万円貯めました!」と発信している方も一定数いますが、そのような方は、もともと貯蓄体質があるからこそ、投資でさらに資産を築けていると思われます。

貯蓄体質がないのにもかかわらず、“投資は稼げるんだ!”という思い込みから投資を始めても良い結果を望みにくく、それは投資ではなくギャンブルです。まずは貯蓄体質になってから、投資を始めてください。

貯蓄体質になる努力は明日から実践できると思います。例えば、こんなことから始めてみてはいかがでしょうか。
  • 家賃の見直し(エリアや物件条件の見直し)
  • リボ機能やキャッシング機能を利用した買い物をやめる
  • 欲しいと思ったらすぐに買う癖や衝動買いを見直す
  • 外食を減らす
節約して浮いたお金をコツコツと貯金することから始めてみてください。

2. 投資の前提条件を設定して、自分の投資スタイルを築こう

ー 貯蓄体質になっている方は、「投資の前提条件を設定」することが必要でしたね。投資の前提条件とは何でしょうか。

尾上さん: 投資の前提条件とは、年齢や収入・貯金額、家族構成、生活スタイル、人生設計、投資目的、リスク許容度など、お金に関わるすべての項目を指します。これらの項目は常に変化するので、既に投資を行っていても、定期的に見直すことが大切です。

ー なぜ、投資の前提条件を設定する必要があるのでしょうか。

尾上さん: 自分流の投資スタイルを築くためです。自分に適当な投資額と投資する金融商品などは、収入や生活スタイルなどの投資の前提条件を明確にしなければ、決めることはできません。

ー たしかに、年収300万円の方と年収1,000万円の方では投資に使える余剰資金や投資のスタンスも異なりますよね。年収がいくら高くても、貯蓄がないまま投資を始めるのは賢い選択ではないのかもしれません。投資の前提条件はどのように設定すれば良いのでしょうか。

尾上さん: 自分一人で検討するのが難しい場合は、例えば私たちのようなFPに相談するのも一つの方法です。FPは、基本的にご相談者様の投資の前提条件やお金に関する悩みなどをヒアリングした上で、お金の運用に関する提案を行います。

また、お金や投資に関する書籍も参考になりますよ。書籍は、著者の方が多くの方に参考になるように、あるいはご自身が歩んできた経験を体系的に展開していることが多いので、どのような投資が今の自分にあっているのか、イメージしやすいのではないでしょうか。

また、投資の前提条件を設定・再確認するプロセスを通して、情報リテラシーも上がるかと思います。

とくに、SNS上では投資に関する発信が玉石混交です。「○○が上がると思う」「早く売らないと大変なことになる」といった情報を目にすると気になってしまいますよね。投資初心者の方は、自分で判断することができずに慌ててしまうかもしれません。

“みんな、それぞれ投資の前提条件が違う”ことをきちんと理解しておけば、むやみに情報に流されず、慌てることがなくなります。

ー 具体的に説明していただけますか。

尾上さん: 例えば、「早く売らないと大変なことになる」と発信している方は、投資で得る利益を生活費に充てていたり、その投資している商品を高値で購入していた方かもしれませんよね。そのような場合は、投資している商品の価格が下がることに敏感で、“早く売らないと大変なことになる”と感じることでしょう。はたまた、そのような情報を発信することで対価を得ているのかもしれません。

一方、もし自分が老後資産を築くために長期投資をしているのであれば、少しの下げぐらいは気にならず、「早く売らないと大変なことになる」という情報に振り回されなくなります。

発信者の前提条件が異なることが理解できれば、安易に情報に流されないようになるので、自分の投資の目的・前提条件・スタイルはしっかりと設定しておくべきです。

ー たしかに、異なる前提条件を持つ発信者の情報を鵜呑みにしても、参考にならないですね。

尾上さん: 投資も「うちはうち、よそはよそ」ですね。自分に関連性のない情報に惑わされずに、自分流の投資スタイルを確立して欲しいなと思います。

3. インデックスファンドへの投資は初心者にもおすすめで投資の醍醐味を味わえる

尾上さん: 細かく「投資の前提条件」を設定するのが難しいと感じる投資初心者の方には、少額から投資ができる「インデックス投資」がおすすめです。

インデックスとは、一般的には索引や見出しのことですが、金融では「指数」のことを意味します。市場全体あるいは特定の銘柄で構成されていて、市場の動向を把握するための目安となる数値です。ニュースでよく耳にする「日経平均」や「ダウ平均」もインデックスの一つです。株式に連動する株価指数が代表的ですが、債券やREITに連動した指数もあります。

インデックス投資とは、その指数に連動するよう設計された金融商品に投資をすることです。しかし、個人投資家がインデックスに含まれる商品を買いそろえることは大変なことなので、インデックスファンドという投資信託を購入することが一般的です。

ー 「インデックス」や「指数」、「ファンド」と言う言葉は、日常生活ではあまり耳にしないので、「インデックスファンドは難しい、よくわからない」と思っている投資初心者の方も多いのではないでしょうか。

尾上さん: イメージとしては、トップ選手が集まったサッカーや野球の代表チームを想像してみてください。つまり、「上手な選手=すごい企業」が集まっているのがインデックスファンドです。インデックス投資は、長い目で見ると、企業と経済の成長に伴って資産が増えていく傾向にあります。私自身も、確定拠出年金やつみたてNISAなどを活用してインデックスファンドへ投資をしています。

ー そもそも、なぜインデックス投資が投資初心者の方におすすめなのでしょうか。

尾上さん: 投資初心者でも、投資の醍醐味を味わいやすく、選びやすい。そして継続しやすいからです。

ー 投資の醍醐味について詳しく教えてください。

尾上さん: 投資は、生い立ちや育った環境に関係なく、同じ商品へ同じタイミングで投資をすれば、リターン(の比率)は同じで、とても公平なものです。ライフスタイルや属性には関わらないんです。

中でも、世界中の企業に投資をするインデックスファンドを購入すると、これらの企業が成長するにつれて、自分の資産を増やすことができます。インデックス投資だけではなく、企業に投資をする株式投資全般に言えるのですが、こうした投資の醍醐味・性質は使わない手はないかと思いますね。

ー そのほか、インデックス投資の投資対象であるインデックスファンドの魅力は何でしょうか。

尾上さん:コストの安さと、手軽に分散投資ができることです。

基本的に投資信託の利益は、購入時手数料、信託報酬、監査報酬、信託財産留保額、税金などを利益から差し引いて求めることができます。税金は、どの金融商品に投資をしても一律20.315%の税率がかかりますので、購入時手数料と信託報酬、信託財産留保額が低ければ低いほど投資額に対する利益率はよくなります。(※)特にインデックスファンドは、信託報酬が安いので、その点でも人気があります。

あわせて、本来であれば課税される、利益や分配金を非課税で投資できる制度(NISA・つみたてNISAや確定拠出年金)を使えば税金を抑えることができます。
※投資信託のコストについて
信託報酬とは運用管理費のことで、投資信託保有時に、保有額に対して間接的に支払う日々のコスト。
監査報酬とは投資信託が監査法人などから受ける会計監査などに係る費用のことで、投資信託保有時に、保有額に対して間接的に支払う日々のコスト。
信託財産留保額とは、投資信託の(購入時または)解約時に手数料とは別に徴収されるコスト。
税金は、2037年12月31日までは復興特別所得税を含んだ20.315%。
その他、上記以外にもコストが発生する投資信託もありますので、目論見書などでご確認ください。
ー 手軽に分散投資できることも、インデックスファンドの魅力なんですね。

尾上さん: 例えば、世界の株式に投資できる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や、世界の株式だけではなく債券にも投資できる「世界経済インデックスファンド」など、1本保有するだけで世界中の異なる資産に分散投資ができるファンドもあります。投資信託を複数購入しなくても、1本で分散投資の効果があるのは魅力ですね。

4. インデックス投資のコツは「タイミングを逃さないこと」と「管理のしやすさを意識すること」

ー これからインデックス投資を始めたいと考えている方にアドバイスをお願いします。

尾上さん: 「慎重になりすぎて、投資のタイミングを逃さないように」とお伝えしたいです。まとまった金額を投資しようと思うと、できるだけ安く購入しようとタイミングを見計らってしまいますよね。ただし、どのタイミングが安いのか、投資タイミングはそう簡単に読めるものではありません。

またタイミングばかり読んでいると、「アメリカ経済が落ち着いたら投資しよう」「価格があと10%下がれば投資しよう」など、ずっと“たられば”状態になってしまい、資産運用を始められません。その意味でも、あまりタイミングに固執しないほうが良いと考えます。

また、複数のインデックスファンドを持つ方は、管理をしやすいという観点から、「eMAXIS(イーマクシス)シリーズ」や「たわらノーロードシリーズ」など、シリーズでまとめるとストレスなく投資ができて良いでしょう。

ー 最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いいたします。

尾上さん: 繰り返しになりますが、投資は職業や学歴が異なっても、同じ商品へ同じタイミングで投資をすれば、リターンは同じです。このように、投資はある意味とてもフェアなもので、とりわけインデックス投資は投資初心者を卒業しても積極的に活用できる仕組みだと思っています。ぜひ気長に一緒に資産形成をしていきましょう!

※この記事で出てくる投資信託は、あくまでも尾上さんが選び方として紹介するものであり、ジャパンネクスト証券が推奨または紹介するものではありません。

本記事に掲載されている全ての情報は、2022年4月25日時点の情報に基づきます。

RELATED

>