任天堂(7974)の株価推移を振り返る
任天堂(7974)は、2025年6月に発売した新型ゲーム機「Nintendo Switch 2」(以下「スイッチ2」)が大ヒットとなり、同社のゲーム機として過去最速のペースで販売台数を伸ばしています。
2026年3月期の売上高は2兆3,130億円と前期のほぼ2倍に達し、過去最高を更新しました。
ところが株価はというと、2025年11月6日に14,630円の高値を付けた後は下落が続き、2026年6月26日には6,544円の安値まで売り込まれました。わずか7か月半ほどで、株価は55%も下落してしまったのです。
任天堂といえば、マリオやゼルダなど世界中で愛されるキャラクターを持つ、日本を代表する優良企業です。そのため、「業績は好調なのだから、株価が下がったところは買い場だ」と考え、株価の下落局面で任天堂株を買ってしまった個人投資家はとても多かったように思います。
今回は、任天堂の株価チャートを振り返りながら、「良い会社」の株との付き合い方について考えてみましょう。
好業績なのに株価は半値以下に(2025年11月~2026年6月)
2025年11月4日、任天堂は2026年3月期の業績予想を上方修正し、スイッチ2の販売計画も1,500万台から1,900万台へと引き上げました。これを好感して株価は急騰し、11月6日には上場来高値(2025年8月18日の14,795円)に迫る14,630円まで上昇しました。
しかしその後、株価は下落に転じます。AI向けの需要急増でメモリー価格が高騰し、スイッチ2の採算が悪化するのではないかとの懸念が広がったのです。2026年1月13日には終値で1万円を割り込みました。
2月3日に発表された第3四半期決算では、4~12月の営業利益が前年同期比21%増と好調でした。ところが翌日の株価は約11%の急落となりました。
5月8日に発表された2026年3月期決算も、売上高は前期比98.6%増、営業利益は同27.5%増と、数字だけを見れば文句のつけようのない内容でした。しかし、2027年3月期の業績予想が減収・最終減益だったことや、スイッチ2の値上げの発表もあって株価はさらに下落し、6月26日には6,544円の安値を付けたのです。
このように、この間の見た目の業績は決して悪くありませんでした。だからこそ、「業績は好調なのに株価が下がりすぎだ」「任天堂ほどの会社なら、いずれ株価は戻るはず」と考えて買ったり、下がるたびに買い増すナンピン買いをしてしまったりした方も多かったのではないでしょうか。
例えば、1月に「1万円を割り込んでお買い得だ」と任天堂株を100株(約100万円)買ったとします。6月26日の安値6,544円の時点では評価額は約65万円。わずか5か月ほどで、35万円近い含み損を抱えてしまったことになります。
25日移動平均線割れで売却していれば大きな損失は防げた
では、株価チャートを見て行動していればどうだったでしょうか。
筆者が用いている売買ルールは、「25日移動平均線を超えたら買い、割り込んだら売る」という極めてシンプルなものです。
<25日移動平均線を用いて売買タイミングを読むポイント>
任天堂の株価は、11月6日に高値を付けた後、11月下旬には25日移動平均線を割り込みました。このときの株価は13,000円前後です。
そしてその後、2026年3月上旬までのおよそ3か月半もの間、株価は終値で一度も25日移動平均線を上回ることはありませんでした。25日移動平均線を下回り続けるということは、言い換えればその間、株価はずっと下降トレンドにあったということです。
もし11月下旬の25日移動平均線割れで売却していれば、13,000円前後で手仕舞うことができ、その後の株価半減に巻き込まれずに済みました。
また、先ほどの例のように1月に1万円で買った場合も、その時点の株価は25日移動平均線を下回っていましたから、「下降トレンドの間は買わない」というルールを守っていれば、そもそも買うことはなかったはずです。
好業績の会社の株価が下がると、どうしても「割安になった」と感じてしまいます。でも、株価が下がっているのには理由があります。今回であれば、メモリー価格の高騰による採算悪化や、スイッチ2の販売の勢いが2年目以降に鈍るのではないかという懸念でした。こうした懸念は、決算の数字よりも先に株価に表れるものなのです。
25日移動平均線のルールには「だまし」もあるが…(2026年3月~9月)
もちろん、25日移動平均線を用いたルールも万能ではありません。
任天堂株は3月10日に一度25日移動平均線を上回り、3月16日には10,435円まで上昇しました。しかしこの上昇は長続きせず、3月下旬には再び25日移動平均線を割り込んでしまいました。ルール通りに売買した場合は、2%前後の損失となります。6月にも、25日移動平均線を上回ったり下回ったりする方向感のない動きが続きました。
一方、7月27日に25日移動平均線を上回ってからは、9月9日に割り込むまでのおよそ1か月半、上昇が続きました。7月27日の終値7431円で買い、9月9日の終値8,401円で売ったとすれば、13%ほどの利益になります。
このように、小さな損失は何度か出てしまいますが、大きな下落は避けられ、上昇局面ではきちんと利益を得ることができる。これが25日移動平均線を用いた売買ルールの最大のメリットだと筆者は考えています。
なお、10月8日現在の任天堂の株価は7,851円で、再び25日移動平均線を下回っています。
任天堂株は5年足らずで9分の1に(2007年11月~2012年7月)
「とはいえ任天堂は良い会社なのだから、長い目で見れば持ち続けていても大丈夫だろう」と考える方もいるかもしれません。
ここで知っておいていただきたい事実があります。任天堂株は過去にも、とてつもない下落を経験しているのです。
ニンテンドーDSやWiiが世界的な大ヒットとなり、任天堂の株価は2007年11月に7,320円(※株式分割考慮後。分割前の株価は73,200円)の高値を付けました。
ところがその後株価は下落を続け、2012年7月には807円まで下落しました。わずか4年8か月で、株価はおよそ9分の1になってしまったのです。
注目していただきたいのは、任天堂の業績がピークを迎えたのは2009年3月期で、売上高1兆8,386億円、営業利益5,552億円と、いずれも当時の過去最高を記録していたことです。それなのに、2009年3月末の株価は2,845円と、すでに高値から6割以上も下落していました。業績のピークを待たずに、株価は先に天井を付けていたのです。
その後、3DSの値下げや円高などの影響もあり、2012年3月期には上場以来初の営業赤字に転落しました。そして株価が2007年11月の高値を再び上回ったのは、2023年12月のこと。高値を取り戻すまでに、実に16年もの歳月がかかったのです。
「良い会社だから大丈夫」のバイ・アンド・ホールドは危険
任天堂は間違いなく「良い会社」です。それでも、株価が9分の1になったこともあれば、今回のように7か月半ほどで半値以下になることもあります。どれほど優れた企業であっても、株価が大きく下落する可能性は常に存在するのです。
バイ・アンド・ホールドについては考え方が分かれますし、それで成功している方がいるのも事実です。ただ、高値圏で買ってバイ・アンド・ホールドを続けた結果、何年にもわたって塩漬け株を抱えてしまう、というのは個人投資家の典型的な失敗例です。
「良い会社だから」「業績が好調だから」と株価の下落を放置するのではなく、筆者が行っているような「25日移動平均線を割り込んだら売却する」などのルールを決め、業績よりも株価の動きを重視して行動することで、大きな損失や塩漬け株の発生を避けるよう心掛けることが大切です。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年10月15日時点の情報に基づきます。
※あくまでも足立武志さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
28年にわたる株式投資の経験をもとに、個人投資家が株式投資・資産運用で成功するために必要な実践的な知識・情報を書籍、セミナー、コラム、ブログ、メルマガ等で精力的に提供。「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(いずれもダイヤモンド社)はシリーズ累計27万部のベストセラー。楽天証券にて株式投資や税金コラムを15年にわたり連載中。
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