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2025.08.13

VIX指数(恐怖指数)とは?知っておきたいその特徴や使い方を解説

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VIX指数は、株式市場の先行きをめぐる投資家の警戒感や不安、恐怖といった心理を数値化した指標です。「恐怖指数」とも呼ばれ、CBOE Volatility Index(CBOEボラティリティ・インデックス)の略称で、予想される価格変動の大きさや不安定さを示します。実は多くの投資家が、このVIX指数を参考に投資判断を行っています。 本記事では、VIX指数の基本的な概念から、その数値が示す意味、投資における活用方法について解説します。

今回お話を伺ったのは…
山下耕太郎(やましたこうたろう)さん

山下耕太郎(やましたこうたろう)さん

金融・投資ライター
一橋大学経済学部卒業後、証券会社で営業・マーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。保有資格は証券外務員一種。

VIX指数(恐怖指数)とは

VIX指数は、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500株価指数を対象とするオプション取引の変動率(ボラティリティ)をもとに算出し、公表しています。S&P500は、アメリカの代表的な500社の株価平均を示す指数であり、アメリカ株式市場全体の時価総額の約80%をカバーしているため、市場全体の傾向を把握する上で非常に重要です。
VIX指数はアメリカの指標ですが、世界の株式時価総額に占めるアメリカの割合が約50%と大きいため、世界の株式市場に強い影響を与えます。そのため、日本の投資家にとっても見過ごせない指標となっています。
日本にも独自のボラティリティを使った指数として、日経平均VI(日経平均ボラティリティ・インデックス)が存在します。その他、ナスダック市場のVXN指数、債券市場のMOVE指数、欧州市場のVストックス指数など、各市場に対応した恐怖指数が存在し、これらは投資家が市場の将来動向をどのように予測しているかを示す「市場の体温計」のような役割を果たしているのです。

基準と特徴

VIX指数は0%から100%の範囲で表されますが、通常は10%から20%の間で推移しており、この範囲内では市場が比較的安定していると見なされます。
VIX指数は、市場の不安心理を数値で表す指標として知られていますが、その水準からS&P500の今後30日間の予想変動率を読み取ることもできます。VIX指数の値が高ければ高いほど、投資家が予想する将来の価格変動は大きく、逆にVIX指数が低ければ、市場は安定していると判断されます。
この予想変動率は「インプライド・ボラティリティ」とも呼ばれ、現在のVIX指数水準を年率換算し、30日間ベースに変換することで導き出されます。具体的には、VIX指数の数値を√12(12の平方根)で割ることで、30日間の予想変動範囲を算出できます。
たとえば、VIX指数が20であれば、S&P500は今後30日間でおよそ±5.8%の範囲で推移することが予想されます。VIX指数が30であれば±8.7%、VIX指数が10なら±2.9%といった具合です。以下はVIX指数水準とS&P500の予想変動範囲の関係をまとめたものです。
出典:CBOE
このように、VIX指数は市場が想定する将来の価格変動リスクを具体的な数値で表すツールとして活用できます。短期的なリスク感度を測る上でも、投資戦略の参考として有効です。
しかし、市場に対する警戒感や投資家の不安が高まると、VIX指数は大きく上昇する傾向があります。具体的な目安は以下の通りです。
  • 20%を超えると、市場に対する投資家の不安が少し高まっていると判断されます
  • 30%を超えると、市場には懸念材料が多く、投資家の不安が高まっており注意が必要な状態です
  • 40%を超えると、市場は混乱状態にあることを意味し、パニック状態に陥る可能性もあります
VIX指数が上昇する時期は、一般的に経済状況が不安定になっていることを暗示するため、株価とは逆相関関係にあると考えられています。株価は上昇するときは緩やかに、下落するときは急激に変化する傾向があるため、VIX指数が上昇することは多くの場合、株価急落の予兆として警戒されるからです。
過去には、2008年のリーマンショック時に90%程度、2020年のコロナショック時には75%程度までVIX指数が上昇した例があります。

VIX指数の活用方法

売買判断に役立つ

VIX指数は単なる投資対象としてだけでなく、他の金融商品への投資判断の参考としても活用できます。例えば、米国VI(VIX指数先物に連動するCFD)が急上昇している場合、株式市場で暴落が起きている可能性が高いため、株式銘柄の売買タイミングを計る指標として利用できます。
VIX指数の水準によって、株式市場の動向や投資戦略は大きく異なります。
・恐怖指数が高い場合(30%以上)
VIX指数が高い水準では、投資家の市場に対する不安が非常に強まっている状態です。結果として、投資家はリスク回避の傾向を強め、株式市場では売り圧力が優勢となり、株価が下落するリスクが高まります。しかし、このような市場が極度に不安定で株価が低迷している時期は、長期的な視点で見ると「買い場」となる可能性があります。
・恐怖指数が低い場合(20%以下)
VIX指数が低い水準にある場合、投資家は市場に対して安心感を抱いており、株価の変動は比較的穏やかになる傾向があります。投資家の買い安心感が広がり、株式市場では買いが優勢となり、株価が安定的に上昇する傾向が見られます。
ただし、VIX指数があまりにも低い水準で推移したり、長期間にわたって低水準が続いたりする場合には、市場参加者が過度に楽観的になっている可能性があります。このような状況下では、予期せぬ悪材料に対して、通常時よりも市場に与えるインパクトが大きくなることが多く、相場が急反落することもあるため、一定の警戒感を持って投資戦略を立てることが重要です。
また、VIX指数自体に直接投資することはできませんが、VIX指数と連動する金融商品を通じて、利益を得たり、リスクヘッジに利用したりすることが可能です。

大きな利益を狙える可能性

VIX指数を対象とする先物取引やETF(上場投資信託)は、通常は値動きが比較的穏やかですが、突発的な市場変動時には大きな値上がりを見せることがあります。

リスクヘッジができる

VIX 指数は米国の代表的な株価指数であるS&P500と概ね逆相関の関係にあります。そのため、S&P500に連動する株式と同時に保有することで、リスクヘッジの手段として機能します。片方の銘柄が下落しても、もう片方が上昇することで、全体の損失を軽減できる可能性があります。

活用する際の注意点

VIX指数と連動する金融商品については注意点もあります。

長期投資には不向きな場合がある

VIX指数は、コロナ禍やウクライナ侵攻のような世界的混乱や有事の際に急上昇する傾向がありますが、そのような世界規模の出来事の発生タイミングを予測することは非常に困難です。また、価格が急上昇した後、元の水準に戻るタイミングを判断するのも難しいため、長期的な投資スパンでは利益を得ることが難しいと言えます。

レバレッジによる大きな損失リスク

先物取引のようにレバレッジをかけて取引できる商品では、思惑と反対方向に市場が動いた場合、手元資金に対して非常に大きな損失が発生する可能性があります。先物取引には、レバレッジリスクの他にも、金利コスト、流動性リスクなど、複数のリスクが存在します。

商品別の注意点

・VIX先物取引
VIX先物は2004年に登場し、 市場変動リスクのヘッジや投機目的で利用されています。価格は現物のVIX指数だけでなく、満期日ごとの市場予想にも左右されます。VIX先物に投資する際は、S&P500の動きなどを基にした市場予測が重要ですが、価格変動リスクも大きく、慎重な判断が求められます。
・ETF(上場投資信託)
VIX先物に連動するETFは2009年以降、分散投資やリスクヘッジ手段として活用されています。ただし、ETFは先物価格を反映し、期限が近づくと次期先物に乗り換える「ロールオーバー」が発生します。この際に市場状況次第でコストがかかり、長期保有ではパフォーマンスが低下しやすいため、短期的な利用に適しています。
・VIX短期先物指数ETF(318A)
S&P500VIX短期先物指数超過リターンを対象指標とし、外国の金融商品取引所に上場する先物取引を利用することにより、円換算した対象指標に連動する投資成果を目指す追加型株式投資信託です。先物のロールオーバーの過程が損失となる傾向があり、長期的には大きな損失となるため中長期投資には向いていません。

まとめ

VIX指数は投資家の心理状態や市場の変動率を示す有力な指標ですが、これだけで全ての投資判断を行うべきではありません。経済指標、企業業績、テクニカル指標など、他の多様な情報を併用することで、より正確な投資判断が可能になります。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年7月11日時点の情報に基づきます。
※あくまでも山下耕太郎さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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