金融・投資

2024.01.18

今回お話を伺ったのは…

藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん

藤本誠之(ふじもとのぶゆき)さん

相場の福の神
年間400社の上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介しています。
「まいど!」のあいさつ、独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIで5本の看板番組を持ち、年間で約240社、累計で1000社以上の上場企業社長が、藤本の番組に出演しています。その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。
日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、「相場の福の神」と呼ばれる日本一上場企業社長(1300社超)に会ったマーケットアナリスト証券アナリスト、ITストラテジスト、All About株式ガイド、Youtuber
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Introduction

経済ニュースだけでなく一般のニュースでも「2024年問題」が取り沙汰される機会が多くなりました。一般のニュースでも見聞きするということは、私たちの生活にさまざまな影響が考えられるということです。
特に深刻な人手不足が懸念されているのが、物流業界と建設業界です。すでに他の業種では残業規制が適用されているのですが、物流と建設の両業界には人手不足の問題が横たわっていることから猶予期間が設けられてきましたが、2024年3月31日にはその猶予期間が終了し、年間960時間までとする残業規制がこれらの業界にも適用されます。
慢性的な人手不足に悩むこれらの業界だけに残業規制によってさらに人手不足に拍車が掛かるのではないかというのが、いわゆる「2024年問題」です。
しかしながら、この「2024年問題」にはさらに深刻といえる事情が絡んでおり、そのことが株式投資の投資アイディアにもつながっています。
投資家目線で見る「2024年問題」の本質を解説し、そこから導き出される投資アイディア、おすすめ銘柄を紹介します。

「2024年問題」がさらに深刻といわれる理由

「2024年問題」では、新たに適用される残業規制によってさらなる人手不足が懸念されているわけですが、ドライバーや技術者などを雇用する企業側からは、さらに深刻な事情が透けて見えます。
年間960時間の残業を月間ベースに換算すると、80時間です。それなら残業を月80時間までに抑えれば問題なしというほど問題は簡単ではありません。
というのも、時間外労働には25%の賃金上乗せがありますし、さらに60時間を超える時間外労働については50%の上乗せとなります。月に80時間までは合法的に残業ができるとはいえ、大半を占める中小企業にとってはこの上乗せ分が経営を圧迫することになります。
可能な限り残業を減らしたいというのが企業の本音であり、その本音どおりの勤務体系にすると人手不足はさらに深刻化するわけです。

投資家目線で見る「2024年問題」の本質

特に物流と建設の業界で深刻化することが必至の「2024年問題」、もちろん業界も手をこまねいているわけではなく、すでにさまざまな取り組みが始まっています。
両業界に共通する大きなテーマは、自動化や効率化による人的リソースの削減です。人が足りないのであれば機械による自動化や効率化によって問題を解決しようというわけです。
物流業界では1台のトラックに複数のトラックが追走する技術の実用化が進められていますし、残業規制をクリアするために往復のトラック輸送では途中でドライバーを入れ替えるといった運行管理も考案されています。
これまでになかったような技術や仕組みが必要になることは間違いなく、投資家目線ではこれらの新しいニーズに応えられる新しい産業としてDXやパレット輸送の標準化、技術者採用のアウトソーシングなどに着目しています。

「2024年問題」で注目したい関連銘柄10選

投資家目線で「2024年問題」に関連して注目しているキーワードについて、やはり自動化や効率化を進める上でDXは物流、建設の両業界で外せません。そして個別に見ると物流ではパレットレンタル業、建設では施工監理技術者の派遣業が要注目です。
それでは、業種ごとに紹介していきましょう。
◎物流業界
物流業界が残業規制をクリアするにはまず、外で勤務している各々のドライバーの勤務状況を正確に把握する必要があります。そこで運行管理や運転情報、位置情報を記録、管理できるシステムを提供するシステムやクラウドサービスの開発、提供を手がけるスマートドライブ(5137)やアクシス(4012)へのニーズが高くなると考えられます。
そしてもうひとつ、注目したいのがパレットレンタルです。パレットに荷物を載せたままトラックで輸送することでドライバーの時間的、体力的な負担を軽減し、人手不足の解消につなげようとする動きがあります。そのために必要となる標準仕様のパレットを提供する企業としてパレットレンタル大手のユーピーアール(7065)と日本パレットプール(4690)への注目度はより高まるでしょう。
かねてからパレット輸送による効率化は試験的に行われてきましたが、パレットを積み込む分だけ積み荷のスペースが少なくなることから敬遠されてきた部分があります。しかし、それよりも深刻な「2024年問題」の解決に資することが分かっているパレット輸送が注目されるのは当然の流れで、構造的な変化が材料視される可能性は大いにあります。
また、「2024年問題」と直接の関わりはありませんが、物流業界ではドライバーのアルコールチェック厳格化に伴い、アルコールチェッカー導入のニーズが高まっています。半導体不足によって本格的な規制強化が延期されたものの、2023年12月にはいよいよ正式に厳格化されます。アルコールチェックシステム大手のトリプルアイズ(5026)には、特需景気といえる材料がもたらされると思います。
◎建設業界
建設業界にも、人手不足への対策としてDXの波が押し寄せています。施工管理のDX化を進めるためのプラットフォームとして「スパイダープラス」を開発・提供するスパイダープラス(4192)は高い知名度を誇りますし、同様に現場業務支援システム大手のシーティーエス(4345)も建設DX関連銘柄として要注目です。
また、建設業界では施工監理技術者(いわゆる現場監督)の人手不足が業界全体で深刻化しています。自社で採用、育成するには多大なコストがかかることや採用・育成のノウハウのない中小建設会社も多いことから、こうした業務をアウトソーシングできる施工監理技術者の人材派遣会社が業績を伸ばしています。優良銘柄は、ナレルグループ(9163)やオープンアップグループ(2154)、コプロ・ホールディングス(7059)など。
これらの派遣会社に共通しているのは、未経験もしくは経験の浅い「技術者の卵」を大量に採用し、それを建設会社に派遣している点です。この技術者たちは建設会社の現場で経験を積み、そのまま建設会社に採用されるケースも少なくありません。
建設会社の多くは施工監理技術者の高齢化が進む一方で採用や育成に費やす費用や時間がなく、また仕事が少ない時期に技術者を遊ばせておくわけにはいかないという事情から最低限の人員だけを確保する傾向が強まっています。繁忙期に足りない人員は派遣会社から調達する形がコストパフォーマンスに優れているため、こうした派遣会社へのニーズはますます高まっていくでしょう。

まとめ

「2024年問題」は名称に年号が入っていることからも分かるように、あらかじめ期限の決まった「待ったなし」の問題です。それだけに投資家としては投資行動に反映しやすい部分があります。しかも「2024年問題」は国が新たに設けた規制によって生まれたものです。「国策に売りなし」と言われるように、投資家としては比較的安心感をもって注目銘柄を物色しやすいのではないでしょうか。
ただし、国策などイベントドリブン型の銘柄は材料が相場に反映するタイミングが見えづらく、取引時間中に動意づくとは限りません。「2024年問題」に限らず、業務提携など株価に影響を与えやすいニュースは大引けの後で発表されることも多く、このことが相場に織り込まれるタイミングの見極めを難しくさせています。
こうした事情を踏まえて、「2024年問題」の関連銘柄などイベントドリブン型銘柄については取引時間中に仕込み、材料となるようなニュースがあった際にはPTSの夜間取引を活用して利益確定売りをするといった手法も有効です。
ただし、こうした材料に由来するイベントドリブン型の取引では、「噂で買って事実で売れ」の相場格言を意識した投資行動がとても重要になることも付け加えておきたいと思います。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年11月13日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤本誠之さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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