金融・投資

2023.04.13

様々な経済指標…投資家は何を見ている?株取引の重要指標とその見方とは

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株式投資のために経済指標をチェックしたいけど、種類がたくさんあり何を見ていいか分からないと思っていませんか?また、それらが株価とどのように関係があるかよく分からないと思う方もいらっしゃると思います。その時々の経済状況により注目される経済指標は変わることもありますが、まずは投資家が押さえておきたい経済指標を、GDPが大きい順でアメリカ、中国、日本に分けて解説し、株価にどんな影響を与えているかを事例と共に解説しますので、一緒に見ていきましょう。

今回お話を伺ったのは…

片山理恵さん

片山理恵さん

ファイナンシャルプランナーの資格取得と3男出産をきっかけに株式投資を開始。
株式投資の楽しさと、労働以外で資産形成ができる大切さに気づき、
電子書籍、ブログやメールマガジンで株式投資やちょっと難しいお金のことをわかりやすく発信中。
電子書籍は、ベストセラー『株式投資で初心者を卒業するために実践したい25のこと』他がある。
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株式投資を楽しく学べるメルマガ「株好きFPかたやまりえの株式投資時々マネーの話」
http://foomii.com/00264

「経済指標」はどんなものがある?:アメリカ

まずは、世界最大の経済大国であるアメリカから見ていきましょう。アメリカ株の値動きは日本株にも影響するので、アメリカの経済状況を把握することは大切です。チェックしておきたい経済指標は、下記6点です。
・FOMC政策金利発表
・実質GDP速報値
・ISM製造業景気指数
・非農業部門雇用者数・失業率
・消費者物価指数(CPI)
・小売売上高
FOMCとは、アメリカの中央銀行であるFRBによる金融政策決定会合のことです。この会合では、経済指標の結果などを元に政策金利を決定します。2022年は、ロシアのウクライナ侵攻による食糧、エネルギー価格の高騰が原因でインフレが加速しました。それを抑制するためにFRBは利上げを継続して行いました。行き過ぎた物価上昇を抑えるために金融引き締めをしている状態で、景気が後退する可能性を含んでいることから、株価は下落傾向となっています。毎回、会合でのパウエル議長の発言が注目され、金融引き締めに積極的な発言が多い場合には株価は下がり、金融引き締めに消極的な場合は(もしくは金融緩和に向かう発言が多ければ)株価は上昇する傾向にあります。パウエル議長の発言内容やFOMCでの政策金利の動向を確認しましょう。

GDPとは国内総生産のことで、一定期間内に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の総額を表しています。GDPの数値が上がれば、株価が上がるのが普通です。ただ、GDPは発表が遅いため、短期的な株価の動きについては、以下で紹介する指標に注目しましょう。

ISM製造業景気指数は、アメリカの製造業の300社以上の購買担当者や供給管理者に景況感についてアンケートを取ったもので、景気の拡大縮小の境目を50として、50以上であれば景気拡大、50以下であれば景気縮小となります。毎月第1営業日に(月次のアメリカの指標で1番早く)発表されるため注目度の高い指標で、アメリカの株価指数 S&P500 と連動性が高いと言われています。実際2022年1月の指数は57.6、2022年12月は48.4となっていて、下落トレンドの S&P500 と連動しているのが分かります。単月の結果だけで判断するのではなく、毎月チェックして景気の方向性を確認するとよいでしょう。

非農業部門雇用者数は、通称雇用統計と言われていて、注目度の高い指標です。また、雇用統計と合わせてチェックしておきたいのが、失業率と平均時給です。失業率が高いと雇う側は安い賃金で労働者を雇うことができますが、反対に失業率が低い状態では、労働者側が賃上げ要求をしやすい状況と言え、賃金上昇や物価高の要因になります。2022年12月のアメリカの失業率は、3.5%でした。3.5%は完全雇用状態と言われており、よい状態であると思われるかもしれませんが、コロナ禍で金融緩和や財政給付が行われ、今すぐに働かなくてもよいと考えている人が多いことを表しているとも考えられます。

消費者物価指数(CPI)は、アメリカのインフレ(物価上昇)率を分析するための重要指標です。数値は、通常前年比で2%上回る程度がよいと言われています。2%を大きく上回り、インフレの懸念が出てくると、FRBは経済をクールダウンさせようと金融引き締め(利上げ)に向かいますので、株安につながります。

小売売上高は、百貨店やスーパーマーケットなどの小売業者の売上高を集計したものです。アメリカのGDPの約7割を占める個人消費の状況が分かるので、景気全体に与える影響が大きく、重要な指標です。2022年11月、12月は2ヵ月連続、前月比マイナスが続きました。12月分の発表の後は、景気後退懸念からアメリカ株は下落しました。

「経済指標」はどんなものがある?:中国

次に中国です。中国関連株と言われる日本株銘柄もあるくらい、中国の経済状況も日本株に影響します。また、2015年に起きたチャイナショックは、中国発の世界同時株安でした。ですから、中国の経済状況も見ておく必要があるでしょう。
・実質GDP速報値
・消費者物価指数
・製造業PMI購買担当者景気指数 政府版
上記3点を、チェックします。

中国の実質GDPは、2022年全体では前年比3%プラスでした。ゼロコロナ政策の影響が大きく、政府目標の年間成長率5.5%前後を大きく下回る結果でした。ただ、ゼロコロナ政策は終了しましたので、経済活動再開の期待が浮上し、中国株は、2022年10月の安値からは上昇傾向にあります。

中国の消費者物価指数は、3~4%が目安とされています。5%以上になると金融引き締めに向かいますので、株安につながります。反対に金融緩和で金利が低下すると不動産が売れ、不動産バブルにつながります。金利が上がりすぎても下がりすぎてもよくないというバランスが難しいのが中国です。直近の2022年11月の消費者物価指数は、前年比で1.6%でした。世界中がインフレの渦中にありますが、中国はロックダウンの影響でインフレ率は低水準となっています。

製造業PMIとは、製造業の購買担当者に新規受注や雇用の状況など、景況感についてアンケートを取り、結果を数値化したものです。アメリカのものと同様、50を上回るとよいとされています。直近に発表された2022年12月の製造業PMIは47.0と50を下回り、2020年2月以来の低水準でした。ただ、経済再開とともに製造業PMIの数値が向上すると、日本株にいい影響が出る可能性も考えられます。

「経済指標」はどんなものがある?:日本

最後に日本です。チェックしておきたい内容は以下の6項目です。
・日銀金融政策決定会合
・実質GDP速報値
・日銀短観
・景気ウォッチャー調査
・消費者物価指数
・鉱工業生産指数速報値
日銀金融政策決定会合は、その名の通り日本の政策金利を決定する会合で、年8回開催されます。日本は、バブル崩壊から長らく金融緩和の状態が続いていますが、2022年12月20日の日銀金融政策決定会合では、これまでの金融緩和政策の一部修正を発表するという誰もが予想していなかった内容でした。株式市場は大きく反応し、その日の日経平均株価は前日比でマイナス669.61円も下落しました。この会合をきっかけに急激に日銀金融政策決定会合に注目が高まっています。なお、1月の会合で政策の現状維持を発表後、日経平均株価は大きく上昇しました。現時点では、市場は金融緩和終了を嫌っていますが、過度な物価上昇を抑えるために、一時的な痛みを伴っても、政策の変更が必要になるかもしれません。

実質GDPは、年率1%程度のプラスなら、まあよいとされ、約6割を占める民間消費の伸びを表すと考えられています。直近の2022年第3四半期実質GDPは、年率換算でマイナス0.8%、民間消費支出は0.1%プラスとなり、決していいとは言えない状況です。

日銀短観は、日本銀行が公表している景気の現状や先行きを見ていく上での代表的な統計の1つで、金融政策への影響も大きいと言われています。日銀短観の中で最も重要視されているのが、大企業製造業業況判断DIです。好不況の目安は0となっていて、2022年12月に発表された大企業製造業業況判断DIは、プラス7でした。プラスと言っても、4四半期連続の悪化でした。

景気ウォッチャー調査は、内閣府が街角の景況感を調べるために毎月実施する調査です。景気動向をより早く把握するため、景気に関して観察のできる職業の人、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケット、百貨店などの小売店やタクシーの運転手、レジャー業界など景気を肌で感じる人たち2,000人超を対象に質問、調査をしています。先行き判断DIが株価の先行指標となるので、注目しましょう。50が景気の良し悪しの分岐点となります。

消費者物価指数は、これまで注目されていませんでした。というのも、日銀は、2013年にインフレ目標2%を掲げたものの、全く達成されていなかったからです。しかし、2022年11月に日本もついに消費者物価指数が3.8%上昇、12月は4.0%上昇しました。今後、この数値次第で、金融政策が変わってくる可能性も考えられ、株価にも影響があると考えられます。

鉱工業生産指数速報値は、日本のGDPの約20%を占める製造業の景況感を把握できる先行指標なので重要です。株価にも影響しやすい指標で、好不況の目安は100です。前年比でプラスだとよい印象になりますが、反対に3ヶ月以上悪い指標が続くと、景気後退と判断されて株安につながることがあります。

経済指標を投資に活かす事例

少し前までは、アメリカで月初に発表されるISM非製造業景気指数や雇用統計が大々的にメディアでも報道されていましたが、今は消費者物価指数(CPI)の方が注目されています。2022年は7月に発表された6月分のCPIが、前年同月比で9.1%上昇という40年半ぶりの高水準となり、FRBが、インフレ抑制のため、6月のFOMCで通常の3倍の0.75%の利上げを行いました。また、9月と10月に発表された消費者物価指数も、市場予想を上回ったため、FRBが0.75%の利上げを連発するのではという観測から、株価が大きく下落するCPIショックが起こりました。このことからも分かるように、市場は経済指標が映し出すマクロ要因に大きく反応します。

私は、政策金利や経済指標が発表されるとニュースを視聴し、専門記事を読んで前回と大きな違いはないか調べ、景気が良い方に向かっているか、悪い方に向かっているかの方向性を確認して投資判断に役立てています。現在であれば、金融引き締めによる景気後退懸念があるので、積極的に買いに行くのではなく、投資金額を抑えながら取引して、負けない投資を心がけるようにしています。また、積極投資を行わない期間は、業績がよく割安な銘柄をリサーチするようにもしています。このように備えておくと、好景気になったときにリスクをとった取引をすることが可能になるからです。

経済指標の発表は、みなさんが相場をリアルタイムで見ていない時が多いですよね。例えばアメリカの経済指標は、日本時間の夜に発表されることが多く、朝起きたらアメリカ株がビックリするくらい下落しているといったこともよくありますし、2022年12月の黒田ショックの時も、仕事中でザラ場を見られなかった方も多かったことでしょう。このように、投資機会を失っていると感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで活用したいのが、夜間取引ができるPTSです。PTSでは、東証の取引時間中はもちろん、15時から16時、16時半から23時59分も取引が可能です。保有株が大きく下落した場合、翌日の取引を待たずに損切りすることもできます。反対に買いたいと思っていた銘柄の株価が下がっていたら、PTSで買うことも可能です。夜間の取引量は昼間より少ないので、必ずしも希望の株数や株価で取引できるとは限りませんが、ご自身のペースで落ち着いて取引することが可能です。実際CPIショックが起きたときなどは取引量が増えています。ぜひ、夜間取引も投資手段のひとつとして活用してみてくださいね。

こんな見方が身につけば、投資はもっと面白くなる!

私が株式投資を始めた2年目の2017年はちょうど景気が良く株価は右肩上がりで、比較的容易に株式投資で利益を出すことができました。しかし、2018年に入ってからは相場が一変し、私の投資成績も大きく落ち込みました。その原因は、経済の状況を把握していなかったからでした。例えば、2018年2月に起きたVIXショックは、1月分の雇用統計で賃金上昇が予想を上回る伸びとなり、FRBの利上げペースが加速するとの見方が強まり米国の長期金利が急上昇したことが原因での株安でした。私は、経済指標のチェックはおろか指標内容も理解していなかったため、どうしてこのような暴落が起きたのか受け止められず、損失を拡大させてしまったのです。そのことがきっかけで、経済指標について勉強し、それぞれの指標が株価にどのような影響を与えているのかを理解できるようになり、経済ニュースも投資ももっと面白くなりました。経済状況を理解できてくると、どのような投資スタンスで臨むべきなのかが分かって、投資の幅も広がります。経済指標を理解することが、株式投資で成果を出す一助となることは間違いなしです。

私がこれまで読者の方から株式投資に関するご質問をいただいた中で、保有株を損切りしたいけどどうしたらよいか、このまま保有していても問題ないだろうかなど、判断が難しく悩んでいる方が多いように感じました。株式投資で成果を出していくためには、負けない投資を心がけながら自分なりの投資ルールを作っていくことが大切だと考えています。特に負けない投資をするためには経済の大きな流れを知ることがとても大切で、経済指標の見方を知っておくことはとても重要です。ぜひ、個別株の研究と合わせてチェックしてみてくださいね。
※ あくまでも片山さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引を誘引するものではありません。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年1月25日時点の情報に基づきます。

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