よるかぶコラム

2026.02.03

皆さま、大変遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。2026年が皆様にとって、実り多き素晴らしい年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。

さて、本連載のPTS解説につきましては簡潔に締めくくる予定でしたが、私の不徳の致すところ、前回の更新から2年もの月日が流れてしまいました。しかし、この空白の2年間こそ、日本の資本市場が劇的な変貌を遂げた期間でもありました。今回はコラムの締めくくりとして、変革期における「PTSの今後」についてお話しさせていただきます。

PTSの今後

市場におけるPTSの存在感

この2年間、PTS(私設取引システム)を取り巻く法的な位置づけに大きな変化はありませんでしたが、市場における存在感はかつてないほど高まっています。
当社の創立以来の売買代金推移をご覧ください(2020年の下ヒゲは、東証の全日売買停止によるものです)。2024年から売買代金が飛躍的に伸びているのがお分かりいただけるでしょう。これは新NISAの開始による個人投資家の参入や、市場全体の好調といった外部要因に加え、PTS間の競争激化によって投資家により有利な価格を提供できる環境が整い、認知度が向上した結果であると考えています。

「10兆円で大商い」という現状への危機感

しかし、グローバルな視点に立てば、PTSが本来果たすべき役割はまだ道半ばです。米国では連日1兆ドル(約150兆円)近い売買が行われるのに対し、日本では1日10兆円で「大商い」と呼ばれます。

米国にはNVIDIAやマイクロソフト、Appleのようなメガテック株が存在しますが、日本にもトヨタやソニー、任天堂といった世界水準の優良株が数多く存在します。企業のガバナンスも改善し、株主還元も強化されました。それでもなお、株価やPBRが伸び悩む要因があるとするならば、それは企業側の努力不足ではなく、我々PTSや取引所を含む「取引インフラ側」の努力不足ではないでしょうか。このまま流動性が停滞すれば、国内の優良企業が米国上場を優先する「市場の空洞化」さえ現実味を帯びてきます。

米国市場の強さは「競争」から生まれた

米国の強さは、徹底した市場間競争にあります。2000年頃まではNYSEの独壇場でしたが、電子化の波に乗ったNASDAQの台頭、そして有力なPTSであったBATSを買収したCboeなどが激しく競り合ってきました。現在ではIEX、MEMX、さらにはテキサスやマイアミの地方取引所、そして数多くのATS(米国版PTS)やダークプールが、投資家の利便性を巡って切磋琢磨しています。

米国には「ナショナル・マーケット・システム(NMS)」という概念およびそれに基づく規制があり、全取引施設が一体となって一つの市場を形成しています。そこでは「最良執行義務」が厳格に課され、結果として世界最高の流動性を生み出しているのです。

すなわち、米国では「テクノロジーによる効率化」と「規制による公正性の確保」の両輪で、市場自体が進歩しているのです。

日本の資本市場をさらなる高みへ

当社は日本初の小数点以下呼び値の導入や、高度な執行手法(IOC、FOK等)の提供など、常にテクノロジーの刷新に挑んできました。しかし、現在の日本のPTSの規制下では、価格決定方法や取引量に制限があり、PTSが取引所の真の対抗馬となるにはまだ壁があります。

2026年2月現在、日本の売買代金は米国の約15分の1(7%)に留まっています。GDP比(約14%)や時価総額比(約11%)を鑑みれば、日本の売買代金は現在の2倍、22兆円程度あっても然るべきです。スタートアップをはじめとする未公開株市場の創設も重要ですが、まずは既にある上場株市場の流動性を、米国並みの効率性に引き上げることが先決です(上場企業の数は日米でほとんど差はありません)。

スタートアップを含む日本企業の発展、そして日本経済の再興のために、我々PTSは単なる「掛け声」に終わることなく、激しい競争の中で切磋琢磨し、不断の努力で資本市場を盛り上げていく所存です。

今後とも、当社の新しい市場、新しいテクノロジーへの挑戦にご期待ください。
ジャパンネクスト証券株式会社 CEO 山田正勝(やまだ・まさかつ)

ジャパンネクスト証券株式会社 CEO 山田正勝(やまだ・まさかつ)

1989年に慶應義塾大学卒業後、野村證券、パリバ証券(現・BNPパリバ証券)において主に金利ビジネスなどを担当。1999年に金融監督庁(現・金融庁)に入庁し、金融検査や各種マニュアル作成に従事。その後、BNPパリバ証券およびみずほ証券におけるリスク関連のシニアポジションを経て、2015年にSBIジャパンネクスト証券株式会社(現・ジャパンネクスト証券株式会社)に入社。COOを経て2020年より現職。

PTSとは何か

(前編でご紹介)

日本におけるPTSの歴史

(前編でご紹介)

PTSを支える技術

(後編その1 でご紹介)

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