金融・投資

2023.08.04

投資をするとふるさと納税の限度額に影響あり?知ってお得に活用しよう

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「投資」と「ふるさと納税」は一見関係なさそうに見えますが、実は連動して影響することがあります。すでに投資やふるさと納税をしている人も、まだの人も、しくみを正しく知って理解しておくことが大切です。 この記事では、投資とふるさと納税がどう関係しているのか、どう行動するのがお得なのか解説します。

今回お話を伺ったのは…

馬場 愛梨(ばば えり)さん

馬場 愛梨(ばば えり)さん

ばばえりFP事務所 代表
関西学院大学商学部を卒業後、銀行にて金融商品を扱う窓口業務に従事。その後、保険代理店や不動産業界などでも経験を積み、独立。自身が過去に金銭的に苦労したことから、難しいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えするべく活動中。これまで1,000本以上のお金に関する解説記事に携わり、執筆や監修を担当。ばばえりFP事務所公式サイト(https://babaeri.com/

そもそも「ふるさと納税」とは?

まずはふるさと納税とはどんなものなのか、基本をかんたんに整理しておきましょう。
ふるさと納税は一定の金額までは「寄附金控除」の対象になり、手続きすればお金が戻ってきます(自己負担分2,000円を除く)。さらに、ふるさと納税先の自治体から特産品などの返礼品が受け取れることもあり、お得な制度として広く知られるようになりました。
控除の対象になるのはいくらまでなのか、それは人によって違います。収入、家族構成、住宅ローン控除や医療費控除といった他の控除の利用状況などが関係してくるためです。おおまかな目安は以下のとおりです。
【ふるさと納税の年間上限の例】
本人の給与収入 独身または共働き 夫婦(片働き) 共働き+子1人(大学生) 共働き+子2人(高校生と大学生)
300万円 28,000円 19,000円 15,000円 7,000円
400万円 42,000円 33,000円 29,000円 21,000円
500万円 61,000円 49,000円 44,000円 36,000円
700万円 108,000円 86,000円 83,000円 75,000円
1,000万円 180,000円 171,000円 163,000円 153,000円
(参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」ふるさと納税のしくみ
所得(収入から経費や控除を差し引いたもの)が高いほど、ふるさと納税の上限も高くなります。基本的には「収入が上がる=ふるさと納税の控除の上限も上がる」と覚えておくとよいでしょう。
ふるさと納税で制度の概要やどのようなしくみで返礼品がもらえるかを把握したり、自分の希望に合った納税先を探して実際に手続きしたりする経験は、投資にも役立つかもしれません。投資も情報を集めたり、NISAやiDeCoといった制度やしくみを理解したり、投資先を選んだり、各種手続きをしたり似たところがあります。
どちらかに取り組んだことがある人なら、もう片方もスムーズに取り組めるのではないでしょうか。また、投資とふるさと納税の関係は知識や経験といった側面だけではありません。続いて、詳しく見ていきましょう。

株式投資をするとふるさと納税の限度額に影響が出る?

株式投資などに取り組んでいる人は、ふるさと納税の上限が変わってくる場合があります。前述のとおり、ふるさと納税の上限は所得に比例するからです。
◎株式投資で利益が出た場合
たとえば保有していた株を売却して利益が出た年は、確定申告などの手続きを行うことでふるさと納税の上限が上がります。具体的には利益の1~2%程度、100万円の利益を申告したらふるさと納税の上限が1~2万円ほどアップするイメージです。
上限が上がれば、よりたくさんふるさと納税できるようになるので、より多くの返礼品を受け取ることも可能になります。投資で利益を出せば出すほど、ふるさと納税をオトクに活用しやすくなるでしょう。
ただ、所得が上がることで場合によっては「国民健康保険料が上がる」「所得制限の対象になって補助金や助成金を受け取れなくなる」といった経済的デメリットが発生する可能性があるので要注意です。
◎株式投資で損失が出た場合
では逆に、株を売却して損失が出たときはふるさと納税の上限が下がるのかというと、それは「No」です。少々ややこしいですね。
税金のルール上、「上場株式等の譲渡で発生した損失は他の所得と損益通算できない」ことになっています。つまり、投資で利益が出た場合は給与等と合算して税金を計算しますが、損失が出たときは給与等と合算しないしくみになっているのです。
そのため、株を売って損失が出たとしても、ふるさと納税の上限は変化しません。ちなみに、株式を売却していない「含み益」や「含み損」の状態も、ふるさと納税に特に影響しません。
◎自分のふるさと納税の限度額がわからないときは?
先述のとおり、ふるさと納税の上限は収入の他にもさまざまな要因が影響して変動します。自分の上限を手軽に知りたいときは、ふるさと納税サイトなどにあるシミュレーションが便利です。より正確に知りたいときは、市区町村役場や税務署、税理士などに尋ねてみましょう。

ふるさと納税で控除を受ける手続きとは?

ふるさと納税で控除を受けたいときは、原則として「確定申告」をすることになっています。ただ、以下の2つの条件を両方満たす場合は、簡易版の「ワンストップ特例」という手続きでも代替できます。
・確定申告の必要がない給与所得者等
・ふるさと納税先(寄付先)の自治体が5団体以内
ワンストップ特例なら、申請書に記入して寄付先の自治体に提出するだけです。近年はオンラインでの申請も可能になっているのでより手軽に済ませられます。
一方、確定申告は1年間の所得と所得税額を計算して申告することになるため、もう少し手間と時間がかかります。確定申告書を作成して提出しましょう。近年は「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」が利用できるようになり、以前よりは簡便になっています。
確定申告が必要な場合とは?
ワンストップ特例ではなく確定申告が必要になるのは、たとえば以下のような人です。
・自営業やフリーランスなどの個人事業主
・年間の給与収入が2,000万円を超える人
・副業の利益が年間20万円を超える人     など
投資に取り組んでいる場合、以下のようなケースでも確定申告が必要になるため要注意です。
・「一般口座」や「源泉徴収なしの特定口座」で取引をしている人
・損失が出て「損益通算や繰越控除(税金の負担軽減措置)」を利用したい人
確定申告では、投資とふるさと納税の両方の税金を一度にまとめて計算&申告できます。よくわからないときは税務署に問い合わせれば教えてもらえますよ。

まとめ

所得が上がれば上がるほど、ふるさと納税の控除の上限(限度額)も上がっていきます。そのため、投資に取り組んで利益を出せば、お得なふるさと納税を活用できる余地もアップするでしょう。
投資もふるさと納税もどちらも実践中の人は、投資で利益や損失が出たときにふるさと納税にどんな影響が出るのか、どんな手続きが必要になるのか把握しておきましょう。
投資やふるさと納税に取り組んだことがない人は、ぜひこの機会に始めてみてはいかがでしょうか。お得な国の制度や社会のしくみを正しく知って、うまく使いこなしたいですね。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年7月18日時点の情報に基づきます。
※あくまでも馬場愛梨さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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