株式

2023.04.13

四季報の読み方を知るともっと楽しい!愛読歴10年超の投資家FPが教える四季報チェックポイント

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株式投資のバイブル「会社四季報」は、年に4回、3月(春号)、6月(夏号)、9月(秋号)、12月(新春号)に発行されます。「有望銘柄を探さそう!」と四季報のページをめくってみても、“何をどのように見たら良いのか分からない”方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は四季報の読み方・活用法について、四季報愛読歴10年超、「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」の著者でもあるFPの藤川 里絵さんにお話を伺いました。四季報を手元で開きながら、一緒に読み進めてみませんか?

今回お話を伺ったのは...

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん:
キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著者に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube

巻頭を読み飛ばさないで!四季報に込められた記者からのメッセージをキャッチしよう

ー 早速ですが、四季報は分厚くて字も小さいです。「読み方が分からない」「どこから読んだらいいか分からない」という方も多いと思いますが、まずはどこを読めばいいのでしょうか?

藤川さん:四季報を手にすると、まずは銘柄のページを開きたくなると思うのですが、巻頭にある「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」と「業種別業績展望」は読み飛ばさずに最初に確認してほしいです。前者は日本経済全体の見通しから投資タイミングを計るため、後者は好調な業界をチェックするために、ぜひ目を通してみましょう!

「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」を確認

※2022年1号参考

藤川さん:「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」には合計5つの号(現在号+過去4号)の見出しランキングが1位から15位まで掲載されています。この「見出し」は各銘柄の紹介ページにある「業績報告」に使われている単語です。四季報を執筆する記者が、短い言葉で各企業の動向を表しています。

このランキングで「堅調」や「回復」などポジティブな単語が多い号は、日本経済も好調。逆に「反落」や「減額」などネガティブな単語が多い号は、日本経済も不調だと推測できますね。

ー 見出しの単語から読み取れることがあるのですね!ではポジティブな単語が多い号=日本経済が好調なタイミングが絶好の投資タイミングなのでしょうか?

藤川さん:いえ、逆です!投資は常に未来を織り込む性格を持つため、ポジティブな単語が多く出ているタイミングでは、株価が高値圏にあるケースが少なくありません。逆に、ネガティブな単語が多く、経済が不調であるタイミングの方が、株価が底値付近にある可能性があるため、これからの値上がりを狙う投資のタイミングとしてはおすすめです。こうして相場全体のトレンドを見ながら、個別銘柄の投資額を調整しても良いですね。

「業種別業績展望」を確認

※2022年1号参考

ー 「業種別業績展望」では何をチェックするのでしょうか?

藤川さん:好調な業界をチェックします。このページには各業界の売上高や営業利益などの前期実績・今期予想・来期予想が載っており、業界ごとの好不調を見ることができるんです。

業界全体が増収の場合は赤文字で書かれているため、赤文字の業界をチェックしていけば好調な業界を一目で確認できます。

「業種別業績展望」は業界全体の好不調を測る資料ではありますが、調子の悪い業界ではなく、好調な業界の中から銘柄を選んだ方が上がる銘柄を当てやすいため、個別銘柄の選定にも活用できますよ!

「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方 」より

ー 巻頭を読んで経済の大きな流れをつかんでから、各銘柄のページを見ていく流れがよいのですね。

藤川さん:はい!経済の大きな流れをつかんだ上で各銘柄のページを見てみましょう。一番上に載っている月足チャート※に注目して、下落もしくは横ばいが続いていた中で、直近1ヶ月の株価が急騰して、陽線※※がぴょこっと1本立った銘柄を探してみます。

※月足チャート:1ヶ月の株価の値動きを表したチャートのこと。
※※陽線:始値よりも終値の方が高い場合の線のこと。株価が上がる力が比較的強いことを示している。

「月足ぴょこ」を探せ

ー下落または横ばいの月足チャートで、直近の陽線がぴょこっと1本立った銘柄ですね。「ぴょこ」と表現されているのは、直近の成長が著しい印なんですね。

藤川さん:そうです。四季報では陽線が白いローソク足で、陽線の逆の陰線は黒いローソク足で表されているため、陽線がぴょこっと1本立った銘柄とは、例えば下記チャートのような銘柄ですね。

「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方 」より

藤川さん:この月足チャートで陽線がぴょこっと出ている現象を私は「月足ぴょこ」と呼んでいます。これが上昇の合図となるパターンが多いんですよ。

ー このサインだけなら、初心者の方でもパラパラとめくりながらチェックできますね。

藤川さん:そうですよね。とはいえ、四季報には3,800銘柄以上の企業データが載っていて、全銘柄の月足ぴょこをチェックしてられないので、例えば多くの人に馴染みのある味の素や江崎グリコなど、食品メーカーが載っている2000番台だけを確認するなど、工夫をしてみても良いですね。

ー 自分にとって身近な業界を見ていくとハードルも下がりますね。
<藤川さん流 四季報の読み方のポイント>
「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」でネガティブな単語の多いタイミングが投資タイミングとして良好
「業種別業績展望」でチェックした好調な業界の中から銘柄を選ぶのも◎
銘柄ページでは、上昇サインである「月足ぴょこ」を探す

ケース①【四季報で見つけた印象的な銘柄】発見のきっかけは“月足ぴょこ”!

ー では、藤川さんが過去に四季報を読み解いて実際に投資をした銘柄の中で印象的だったものを教えてください。

藤川さん:「アートスパークホールディングス(証券コード:3663。以下、アートスパーク)」です。2020年秋号(2020年9月18日発売)で綺麗な月足ぴょこを見つけたのがきっかけで投資しました。

ー 上昇のサイン・月足ぴょこがきっかけだったんですね!

藤川さん:はい、このサインを見つけたことで、投資対象として適当かどうかを四季報で調べ始めました。
藤川さん:2020年秋号の四季報の業績記事で「①イラスト制作ソフト販売が主軸に」と書かれていました。この号が発売されたのが2020年9月18日。世界中がコロナ禍の最中ということもあり、巣ごもり需要が拡大していた時期ですね。「②イラスト制作ソフトは巣ごもり消費や積極的な広告宣伝で国内外とも想定超の好調。」とも書かれています。

ー アートスパークは世界的な巣ごもり需要を捉えたんですね。

藤川さん:そうですね。コロナ禍では私の子どもたちもタブレットをよく使うようになり、「たしかにタブレットでイラストを描く人は増えているかも」という実感もありました。

加えて、四季報には「【海外】42」とも書かれていました。【海外】は海外の売上高比率のことですが、アートスパークは42%と、世界中の市場で売上を上げていることがわかります。また、業績についても営業利益に伸びが見られました。
営業利益
19年12月期 2億4,100万円
20年12月期 7億円
21年12月期 8億円
※2020年秋号参考
藤川さん:加えて、アートスパーク公式HPにて商品であるイラストソフトを確認したところ良い商品だと感じられたことや、イラストレーターの知人が使っているという話も聞き、投資を決めました。

2020年秋号の発売時(2020年9月18日)のアートスパークの株価は462円。その後、2021年10月26日には1,279円をつけたタイミングもあったんですよ。正直なところ、アートスパークはこれまで存じ上げない会社ではあったのですが、月足ぴょこのおかげで出会うことができ、利益を出すことができました!

ケース②【いま注目の銘柄】造船所が奇跡の大復活を遂げる!?

ー 続いて、今、藤川さんが注目している銘柄を教えてください。

藤川さん:「名村造船所(証券コード:7014)」です。実はこれも、2022年春号(2022年3月18日発売)にて、月足ぴょこがきっかけで見つけた銘柄なんです。

ー 名村造船所のどこに注目されていますか?

藤川さん:一つは「黒字転換」をしたことです。
藤川さん:2022年春号には、業績記事の最後に「①継続前提に重要事象」と書かれています。要は存続が危うい企業ということですね。そんな名村造船所ですが、「②【黒字転換】」とも書かれています。

こういう赤字→黒字に転換した企業、しかもそれが存続が危うい企業の場合はすごく株価が上昇しやすいんですね。

右側には「③大幅増額 大幅強気」との記載もあり、「これは良いかも」と思いました。

ー 奇跡の大復活を遂げそうな材料が書かれていたのですね!ほかには名村造船所のどこに注目されていますか?

藤川さん:「④大型LPG運搬船を初受注」もビビッときました。2022年4月現在、世界中でエネルギーを運搬するコンテナが不足している中、LPG運搬船を初受注というのはポジティブな材料ですよね。

また「⑤【環境船】」という見出しもキャッチーで良いなと思いました。世界中で脱炭素やSDGsといった“環境”に関する問題がテーマになっている中、【環境船】という見出しには、実際に名村造船所を取材した四季報記者の「時流に乗りそうな会社ですよ!」という“匂わせ”が含まれているのでは?と思っちゃいましたね。

限られた文字数の中で企業の熱量を伝える四季報の記事欄には、名村造船所の解説のように、四季報記者さんの職人芸的な表現の工夫を感じることが多々あります。記者が仕掛けた匂わせは何だろう?と謎解き感覚で四季報を読むのもすごく楽しいですよ!

ケース③【いま注目の銘柄】”こなし”というキーワードを見落とさない!時流に乗り始めた合成皮革

ー 今注目されている銘柄を、もう一つ教えてください!

藤川さん:2021年秋号(2021年9月17日発売)を読んでから、「ウルトラファブリックス・ホールディングス(証券コード:4235。以下、ウルトラファブリックス)」に注目するようになりました。

ー どのような企業なのですか?

藤川さん:家具や自動車、航空機等向けの、高品質な合成皮革の製造及び販売をしている企業です。私はこれまで合成皮革にあまり良いイメージを持っていなかったのですが、2021年秋号の業績記事欄を読んでガラリとイメージが変わり、これから成長していく企業なのではないかと期待するようになりました。

ー 業績記事のどの点に着目されたのでしょうか?
藤川さん:まずは「①【上振れ】」というポジティブな見出しです。「②輸送費増や投資負担等こなし前号比営業増益幅拡大」とも書かれています。この“こなし”は、見つけたらぜひ注目したいキーワードです。

というのも、あまり調子の良くない企業は、同じ輸送費が増えた状況下では「輸送費増が負担」や「輸送費増で減益」などのネガティブな記載があります。しかし、このウルトラファブリックスは輸送費や投資負担の増加を“こなし”て営業増益幅を拡大させています。負担増加を乗り越えられる、これは非常に良い傾向ですよね。

「③【レジャー】コロナで米国の家族連れ等向けのRVや船舶の需要が膨らむ。」とも書かれています。以前、「アメリカの富裕層は自分の船で旅行へ行く。」というニュースを見たことがあり、このウルトラファブリックスの事業内容と繋がりましたね。

このあたりで“合成皮革って需要があるのかも”と思い始めました。そして次の2022年新春号(2021年12月15日発売)を読んで、「合成皮革の未来は明るい!」と確信しました。

ー 2022年新春号には何が書かれていたのですか?
藤川さん:2022年新春号には「①英JLR社の高級SUV新モデル内装材に当社品採用。」と書いてありました。英JLR社とは高級車の代名詞「ジャガー」を製造するジャガー・ランドローバーのことですね。つまり、海外の高級車の内装にウルトラファブリックスの合成皮革が使われているんです!

たしかに動物愛護の観点から、ファッション業界など含めさまざまな業界で本革の使用を避ける動きが出ていますよね。そうした時代のニーズにウルトラファブリックスの質の良い合成皮革が合ったのでしょう。

また、同じく2022年新春号には「②他社やEV向け等拡販強める。」と記載があります。EV車は今後ますます普及していく見通しですよね。

さらに2022年4月現在、ガソリン代の高騰によりアメリカではガソリン車からEV車へ乗り換える人が増えているというニュースも見ました。

となると、EV向けの拡販を強めるウルトラファブリックスの業績は今後伸びていくことが予想されますよね。

ー 時代の流れもあり、今後ウルトラファブリックスの合成皮革の需要は伸びそうですね。肝心の業績はいかがでしょうか?

藤川さん:業績面も好調ですよ!営業利益も予想以上の数字で推移しています。
2021年秋号 営業利益 2022年春号 営業利益
21年12月期 予想12億円 実績14億8,100万円
22年12月期 予想19億円 予想20億円
23年12月期 - 予想24億円
※2022年春号参考
藤川さん:上記のとおり、私が注目し始めた2021年秋号から2022年4月現在最新号の2022年春号までの営業利益(実績・予想)は右肩上がりなのが分かりますね。
藤川さん:さらに2022年春号の記事欄には、「【最高益】合成皮革はシート用など自動車向けの好調続く」ともあります。ここからも業績好調なことがわかりますね!ウルトラファブリックスについては、引き続き注視していこうと思っています。

四季報+普段から見聞きする情報で多角的に銘柄分析してみよう

ー 四季報の着眼点もさることながら、四季報の情報と日々のニュースや日常生活で見聞きした情報とを結びつけて銘柄を追う藤川さんの手法がとてもよく分かりました。

藤川さん:日常生活の中に投資のヒントはたくさんあります。そのヒントをキャッチし、四季報の情報と結びつけることで、より多角的に銘柄分析ができるようになりますよ。

また、四季報は継続して読むことで、自分の中で気づきが出てくるようになります。「前回までは目に付かなかったけれど最新号で急にこの単語が増えたな」という発見ができるかもしれません。

例えば「EV自動車」、「メタバース」や「VR」のような最新と感じられる動きも、ニュースで取り上げられる前から四季報では登場していることもあります。ニュースで取り上げられている頃には、四季報ではたくさん出てきているんですね。

ネガティブな動きの予測という使い方もありますが、これから流行りそうな投資テーマ、伸びそうなテーマも先に感じ取れるのが、四季報を読み続けるメリットだと思います。

ニュースの種や芽となる情報が四季報には散りばめられているので、それが実際の経済の動きや自分が注目する株と結びつくときがくるはずです!

参考記事:【数字オンチから株式投資の人気講師になったFPが解説】投資家マインドを持つこと!日常に溢れる投資の情報をキャッチしよう。

ー 今回は四季報を読むのが楽しくなるようなお話をありがとうございました!

藤川さん:こちらこそ、ありがとうございました!今回のテーマ・四季報の読み方については、著書「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」でも詳しく解説しています。同書では、数字嫌いの私が、業績の読み解き方といった王道的な読み方ではなく、四季報を推理小説のように謎解き感覚で読み解く方法をお伝えしております。興味がある方はぜひご覧ください!


※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、ジャパンネクスト証券が情報の正確性を保証するものではありません。

本記事に掲載されている全ての情報は、2022年5月20日時点の情報に基づきます。

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