「ストック」と「フロー」とは?投資の判断力 を高める考え方をわかりやすく紹介
投資に大切なのは、的確な判断力。タイミングよく投資に資金を注入したり、逆に引き上げたりできるようになるには、資産状況に合わせた投資になるよう見極めることが基本です。
それには、ストックとフローの考え方が役に立ちます。この記事では、ブレない投資に不可欠な、ストックとフローの考え方についてお伝えします。
今回お話を伺ったのは…
ストック・フローとは
ストック(stock)は、つまり、貯まっている資産のことです。ある時点、たとえば年度末などの区切りの時に、保有している資産を指します。
企業であれば、決算時に作られるバランスシートが、ストックを表しています。
バランスシートは、3つの要素で作られます。
・資産:現預金、株式、不動産など
・負債:借入金、買掛金など
・純資産:資産から負債を差し引いたもの
現預金などの資産があり、借金などの負債が少なければ、純資産は多くなります。逆に現預金などの資産が多くても、負債にあたる借金が多ければ、純資産は少なくなります。純資産が大きいというのは、自由に使える資金が大きいということですので、個人のバランスシートでも純資産は大きくなるように考えたいですね。
フロー(flow)は、流れている資産です。ここでいうフローとは、支出だけでなく、収入も含めたお金の流れ全体を意味します。
企業の決算時に作られる損益計算書は、資産のフローを表しています。一定の期間でどれだけの収入と支出があり、いくら残ったのか、というお金の流れがわかります。個人であれば、フローは家計簿や預金口座の取引明細で把握できるでしょう。
資産形成における「ストック・フロー」とは?
では、ストック・フローの考え方を、個人の資産形成に置き換えて考えてみましょう。
ストックは、ある時点での資産状況を表すので、バランスシートにまとめられます。個人であれば、年末時点でのバランスシートを作るのが合理的です。なぜなら、所得税は1月1日~12月31日の1年間の収入から計算されるから。税金の計算にも便利です。年末年始の休みを利用すれば、じっくり落ち着いて作ることもできそうです。
バランスシートを作るには、まずは資産の部を整理します。
株式や投資信託は値動きがありますが、その日の終値あるいはその月の平均株価などで考えます。不動産も値動きがあり、実際の売却価格はわからないので、公示価格や基準地価などを参考にしますが、毎回同じ指標にすれば価格の変動がわかるのでいいでしょう。
負債の部は、これから返済するローンや支払いを指します。負債は資産よりも少なくして、純資産を大きくしていきたいですね。資産・負債・純資産は、相対的なバランスで考えることがポイントです。
バランスシートができたら、次にバランスシートを作成するタイミングまでに改善したいと思うところを見つけます。純資産を増やすには、資産を増やすか、負債を減らすか、その両方をすることになります。
資産を増やすなら、以下のようなことが考えられます。
・預貯金を増やす
・株式投資の含み益を増やす
・車を大切に乗って資産価値を維持する
負債を減らすなら、以下のようなことが考えられます。
・住宅ローンの繰り上げ返済をする
・買物をひかえてクレジットカードの支払いを減らす
バランスシートの改善を実現させるためには、その間のフロー管理が大切です。収支のフローが適切であれば期末にはプラスになっているので、現金もしくは預金が増えて、資産が増えるからです。
計画的な支出は基本的なことですが、さらに収入が増やせると、バランスシートの改善に弾みがつきます。収入を増やすには、本業をしっかり継続するのと同時に、株式投資の売買益や配当益、不動産投資の家賃収入などを得ることが考えられます。
ストックとフローの考え方を投資判断に活かすには
バランスシートのストックと、資金の流れのフローは、どちらも同じくらい重要です。
ある時点のバランスシートで把握した資産状況が、その後のフローによって変化して、次のバランスシートで資産状況がどのように変わったのかがわかります。そして、その後のフローによってさらに改善され…と、よいスパイラルが生まれるからです。
しかし、投資の初心者は、得てしてフローだけで考えがちです。〇〇円投資して、値動きがあり、〇〇円の利益になった、あるいは損失になった、というひとつの流れだけでとらえてしまうのです。
もちろんフローは大切ですが、それだけでは不足と言わざるを得ません。
投資は、ストックの一部です。
フローで見た場合には成功した投資でも、バランスシートで見てみると預貯金が大きく減っていたり、ローンが増えて純資産が減っているなどした場合は、決して資産形成に成功したとは言えません。
ひとつの投資の損益だけで考えず、ストック全体で考えなくては、フローに振り回されてしまいます。
資産形成は、目標を立てることがスタートラインです。
純資産を5年後に300万円増加という目標と、1000万円増加という目標では、とるべき戦略が異なるからです。
そのためには漫然と投資を続けるのではなく、一定の期間ごとにバランスシートでストックを確認し、その後の見通しを立てることが重要です。
まとめ
ストック・フローの考え方は、投資判断に役に立ちます。ストックは貯まっている資産。ある時点のストックはバランスシートで表され、フローは資産の流れ・収支を表します。
投資はフローだけではなく、ストック全体で考えることが大切です。資産形成を着実に成功させるためにも、定期的にバランスシートでストックを確認し、目標に向かって見通しを立てることを意識してみましょう。
ストック・フローの考え方を取り入れることで、投資を俯瞰して考えることができます。値動きに一喜一憂しない、冷静な投資ができるのではないでしょうか。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2024年12月2日時点の情報に基づきます。
※あくまでも(タケイ啓子)さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
大手生命保険会社に就職、その後保険の総合代理店に転職。
保険の電話相談業務に従事、約1万件の相談に応じる。
43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーと
して、相談、執筆業務を中心に活動中。