金融・投資

2023.07.31

Introduction

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著者に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw
 2023年の大発会は、日経平均株価が377円の下落からのスタートとなりました。2022年の投資成績が振るわなかったので、今年こそは!と鼻息荒く意気込んでおりましたが、いきなり出鼻をくじかれた格好です。
 しかし、考えてみれば、去年からのリスク要因は引き続き健在で、新年を迎えたからといってリセットされるわけではありません。世界各国で逼迫するインフレ、それに伴う急激な金利引き上げ、終わりが見えないウクライナ侵攻、中国でのコロナ感染拡大など、2023年もたくさんのリスクとお付き合いしていくことになりそうです。

外部環境に振らされにくい投資テーマは?

 不透明要素が多い中で、株式投資を行うときの鉄板格言は「国策に売りなし」です。そのまんま、国策を推進するサービスや製品を提供する企業の株は、しっかり握って手放すな、という意味です。国家予算が投じられるのですから、当然といえば当然。
 株式投資を始める前は、国家予算なんて言葉、口から出たことありませんでしたが、投資家になってからは、毎年、国家予算の振り分けを気にするようになりました。
 財務省のホームページには「令和5年予算案のポイント」という資料が公表されています。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/seifuan2023/01.pdf
 冒頭には「歴史の転換期を前に、我が国が直面する内外の重要課題に対して道筋をつけ、未来を切り拓くための予算」と、なんとも勇ましいお言葉。
 具体的な、わが国の課題への対応として以下4つが挙げられています。
1.安全保障・外交
新たな国家安全保障戦略等を策定。5年間で緊急的に防衛力を抜本的強化するため、43兆円の防衛力整備計画を実施。
2.地方・デジタル田園都市国家構想
自治体のデジタル実装の加速化や、デジタルの活用による観光・農林水産業の振興等の地方創生に資する取組などを支援。
3.こども政策
こども家庭庁を創設し、こども・子育て支援を強化。
出産育児一時金について42万円から50万円に引き上げ
4.GX(グリーントランスフォーメーション)
2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入などの支援を開始。
 ずばり! この4つが2023年の注目投資テーマです!

投資テーマに沿った銘柄を四季報から発掘!

 投資テーマが決まったら、それに沿った銘柄探しを行います。株のポータブルサイトや、証券会社が提供する情報ツールでも探すことはできますが、公認の四季報ラバーとしては、会社四季報の2023年新春号から発掘するのが筋でしょう。
 ひとつめのテーマ「安全保障・外交」は、2023年もっとも注目しています。ウクライナ侵攻以降、防衛に関する意識が非常に高まっており、GDPの2%まで防衛費を引き上げるというニュースは、世間をざわつかせました。防衛費を捻出するために増税の話もちらほら。おそらく政府は本気です。
 そこで見つけたのがバルクホールディングス(2467)。記事欄に「防衛装備庁の補助金対象となり、装備品中堅企業から受注拡大。」とあります。当社の祖業は、市場調査ですが、2018年にイスラエルのサイバー防衛企業と資本・業務提供をして異分野である防衛事業に参入しました。いまや、売上の約50%が防衛事業になります。
 時価総額が30億円程度の超小粒銘柄ですので、流動性はやや低めですが、逆に言うと上がり始めると一気に噴き上がる可能性もあります。株価は現在250円(2023年1月16日)。比較的低予算で買えるのも魅力です。
 ふたつめのテーマ「地方・デジタル田園都市国家構想」。地方のデジタル化は、コロナ前から言われていますが、コロナによって急務となり、各自治体が一気に本気出してきた感があります。
 以前から折に触れて株式市場のテーマとしては浮上してますので、目新しさはなく、なかには期待値で急騰しすぎて、その後死んだように動かなくなった銘柄もあります。
 まさにそんな銘柄に、ふたたびスポットが当たるかもしれません。候補としては、チェンジ(3962)を紹介します。ふるさと納税を柱とする会社で、コロナショック直後の2020年3月から10月の間に、株価は600円から6,400円まで一気に10倍に駆け上がったスーパー銘柄です。ところがその後、ずるずる下げ続け現在は2,000円台。
 四季報の記事欄には「自治体DXコンサル好発進で終盤貢献。最高純益」とありますので、業績はすこぶる好調です。コロナショック後の異常な過熱感はすっかり冷めて、ここから本来の実力が評価されるのではないでしょうか?
 3つめのテーマ「こども政策」は、言わずもがな。個人的には、何よりも優先してほしい政策です。岸田総理が「異次元の少子化対策」を表明したことで、子育て関連銘柄は、すでに物色され始めています。
 わたしの注目銘柄は、JPホールディングス(2749)です。保育園や学童クラブを運営する子育て支援の大本命銘柄。
 業績は堅調で、2023年3月期は過去最高益を更新予定。「待機児童が深刻な学童を東京中心に中長期で倍増計画。」と記事欄にありますので、今後も継続的に成長が望めそうです。
 4つめのテーマ「GX(グリーントランスフォーメーション)」は、地球温暖化などによる環境破壊をテクノロジーで解決し、環境保護と経済を両立させることを目指す概念のこと。目新しい言葉だけに、四季報でも実は1社でしか登場していません。しかも、意外なことにホームセンター大手のジョイフル本田(3191)です。
 記事欄には「GX推進に向け、太陽光パネル設置店舗・規模を選定し準備進める」とありますので、これからの需要増加に備えるのでしょう。
 四季報では、最初は1社、2社でしか見られなかったワードが、その後一気に誌面を埋めることがよくあります。最近では当たり前のように使われるDXも、はじめて四季報に登場したときは「なんだこれ?」と思ったものです。GXも、今年の夏号あたりでは、急増してるかもしれません。

どうやってテーマ銘柄を発掘するの?

 四季報からテーマに沿った銘柄を見つけるには、記事欄全部に目を通さないといけないの?と、尻込みした方もいるかもしれません。わたしのような四季報ラバーであれば、記事欄を網羅するのは“苦”というより、“悦び”でありますが、そうでない方でも発掘する方法はあります。
有料ではありますが、四季報オンラインを利用すれば、検索ワードで瞬時に検出されます。
効率的にテーマ株を見つけたい方には、便利な機能です。

新春号で目立ったワード

 投資テーマからは外れますが、業種を問わずチロチロ出てきたのが「節約志向」です。たとえば東洋水産(2875)の記事欄には「節約志向で需要高まる米国は工場の歩留まり改善が課題」とあります。アメリカでは、外食の価格が高すぎて、家で食事をする人が増えているというのは聞きましたが、まさかカップ麺を食べてるとは!
 ブルドックソース(2804)は「家庭用は節約志向の高まりからソース、ドレッシングが想定に届かず減退。」ですって。塩こしょうは削れませんが、ソースはなくてもなんとかなる!
 節約志向が追い風になる企業もあります。カカクコム(2371)は、一円でも安く買いたいという消費行動が起こっているのか、「(価格比較サイト)価格.comは節約志向追い風。」と書かれています。
 今後ますます節約志向が強くなるとすれば、百均ショップや業務スーパーは有利です。とくにこの種の企業は、昨年の円安で苦しんでいただけに、今年に入ってからの急激な円高進行も相まって、一気に風向きがよくなりました。一転、2023年のスター銘柄になるかもしれません。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業の紹介、特定の個別銘柄の推奨、または取引の誘引をするものではありません。
本記事に掲載されている全ての情報は、2023年1月16日時点の情報に基づきます。

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