金融・投資

2023.07.31

アフターコロナ、投資の注目先はどう変わる?投資家が語るこれからの株の選び方

  • facebook
  • twitter
  • LINE

今回お話を伺ったのは…

やんさん

やんさん

個人投資家、ブロガー、30代、会社員。YanBlog「30代子持ち会社員が1億円ためるブログ(https://yanblog3.com/ )」を運営中。30代前半で純資産7,000万円に到達。ブログやTwitterで投資・節約など資産形成に役立つ情報を発信中。

Introduction

今年5月、新型コロナウイルスが感染法上の「5類」に移行し、日本でもコロナ前の賑わいが戻りつつあります。しかし日本企業を取り巻く環境は、コロナ前と現在とでは大きく変化しています。今回は「アフターコロナと投資」というテーマで、「アフターコロナの現状」と「アフターコロナの注目業界」について考えたいと思います。

アフターコロナの現状

1 コロナで大打撃を受けた業界の回復
まずはアフターコロナの現状について確認したいと思います。2020年初旬には、新型コロナウイルスの感染が拡大し、特に「生活娯楽関連サービス」「卸売業」「小売業」などの業界は大打撃を受けました(図1)。最も落ち込みの大きかった2020年4月には、前年同月比で「生活娯楽関連サービス」-50.8%、「運輸業」-20%、「小売業」-14.4%と急激な落ち込みを記録しました(図1)。
しかし、今年5月に新型コロナウイルスが感染法上の「5類」に移行し、大打撃を受けた業界も回復しつつあります。第3次産業活動指数の変化(20年4月→23年3月)を確認すると「総合指数」は89→100、 「生活娯楽関連サービス」は49→91、「小売業」は87→100と回復しています(図2)。これらの業界の回復は日本で暮らしていれば日常生活の中で実感する機会も多いと思います。
これらの業界はリベンジ需要も期待でき、アフターコロナにおいて注目の業界です。ただし、今後の投資を考えるためには、“コロナ終息”以外の要素についても十分理解しておく必要があります。続いて、円安とインフレ、相次ぐ値上げ、回復するインバウンド消費、の状況を確認したいと思います。

図1. 経済産業省_第3次産業活動指数_2020年4月

図2. 経済産業省_サービス産業活動図表集_2023年3月

2 円安とインフレ
ここ1-2年で円安とインフレが大幅に進行しました。インフレの要因の一つとして、2022年2月下旬に発生したロシアによるウクライナ侵攻が挙げられます。ロシア・ウクライナともにエネルギーや農作物など多くの資源を保有する輸出国であったため、侵攻により輸出が途絶えると農作物、鉱物、エネルギー価格などが高騰しました。世界各国で物価高が進み、米国では22年6月にCPI(消費者物価指数)が前年同月比+9.1%と40年超ぶりの大幅な伸びを記録しました。
この物価高を受けて米国ではFRBが政策金利の急激な利上げを実施しており、低金利を維持している日本との金利差が大きくなったことで、急激に円安ドル高が進行しました。コロナ前は1ドル110円前後であったのに対し、現在は1ドル140円程度になっています。日本以外の諸外国の多くは大幅な利上げを行ったため、円は多くの外貨に対して安くなっています。これは円で収入を得ている企業や個人にとって苦境となりますが、外貨を持つ企業や個人にとっては日本円での購買力が高まり、その需要を捉えられる企業の業績には後押しになります。円安とインフレは、投資を考える上での重要指標なので常に注視が必要です。

図3. ドル円の推移 (Trading View)

3 相次ぐ値上げ
原材料やエネルギーコストの増加を背景に、日本でも値上げが相次いでいます。今年7月の値上げ品目数は前年同月比5割増の3566品になりました。多くの日本人にとって給与が上がらない中での物価上昇は好ましくないですが、値上げにより企業業績が好転して投資機会が増えることを個人的には期待しています。
コスト増加を価格に転嫁しても、販売数・客数を維持または増加させることができる競争力やブランドを保有する企業であれば、値上げが好業績につながり、株価上昇が期待できます。日本では長らく値上げは敬遠されるイメージでしたが、現状は値上げが容認されている印象で、日本人のマインドにも(否応なしに)大きな変化が生まれているように感じます。投資機会を逃さないために、各社の値上げ動向にも目を光らせておくことが重要です。
4 回復するインバウンド消費
アフターコロナの投資において重要な「インバウンド」の状況についても確認します。2023年4月の訪日外国人数は約195万人(2019年4月の約292万人の約67%)まで回復しました(図4)。また観光庁によると、2023年1-3月の訪日外国人の1人当たり旅行支出は21.2万円(2019年比+43.8%)と推計されています。このまま推移すれば、金額ベースでコロナ前以上の消費も期待できます。
インバウンド消費が旺盛になる理由はいくつかあります。まず円安でインバウンドの購買力が高まっていること、そして日本の物価上昇は海外と比べると小さいことです。インバウンドからすると、ただでさえ円安でお得感がありながら、日本は海外ほど物価が上がっていないため、“日本のものは安い!”となります。価格の安さもありますが、日本の製品・サービスは質も高く、日本には独特の文化や歴史、アニメ・ゲームなど独自性の高いコンテンツもあるので、インバウンドにとって日本への旅行はより魅力的になっているのではないでしょうか。またコロナで日本に3年間も来られなかったことによるリベンジ消費も期待できます。このインバウンド需要をうまく捉えることができる業界はアフターコロナでの投資対象として注目です。

図4. 月別訪日外国人数の推移(出典:JTB総合研究所)

アフターコロナで注目の業界

続いてアフターコロナの投資対象として注目の業界について考えていきたいと思います。
1 日本株は好調
まず日本株全体の状況ですが、いま日本株は海外からも注目を集めており非常に好調です。日経平均は33年ぶりの高値の3万3,700円台を付ける場面もありました(図5)。要因はいくつかありますが、著名投資家のバフェット氏が来日し日本株投資への拡大意欲を示したことや、東証が「PBR1倍割れ」企業に対して改善要請を出したこと、TSMCなど半導体大手が日本国内に生産拠点を建設するなど半導体関連の投資が加速していること、ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念で注目される防衛関連、コロナ後のリオープン(経済再開)関連銘柄など、注目のセクターが多くあります。

図5. 日経平均(Trading View)

2 アフターコロナで注目の業界
今回は「アフターコロナ」がテーマなので、私が「リオープン(経済再開)」関連で個人的に注目している業界・銘柄を紹介します。私が「アフターコロナ」で注目するのは以下の条件に該当する業界や銘柄です(全てに該当しなくても可)。
 ①コロナ要因の業績悪化からの回復中
 ②円安で恩恵を受ける
 ③値上げ(価格転嫁)しても需要維持、増加が見込める
 ④インバウンド消費の恩恵を受ける
すぐ頭に浮かぶのは「飲食」「宿泊」「航空」「百貨店(宝飾・ブランド品)」「レジャー」…などがあります。ただし、以前から「アフターコロナ」関連への期待は高く、企業業績も改善しつつあるため、注目セクターにはすでに株価が上昇した銘柄も多数あります。
【DDグループ<3073>】
例えば、私が「飲食」で注目していたDDグループ<3073>は、23/02期・第3四半期に営業利益が黒字転換し、当時の株価はコロナ以前の半分以下(700円前後)で、月次売上高や店舗状況から見通しは明るいと考えて購入したのですが、ここ3ヶ月ほどで株価は2倍程度上昇してしまっています。

図6. DDグループ<3073>株価チャート(Trading View)

【コメ兵ホールディングス<2780>】
また「小売」では、コメ兵ホールディングス<2780>に注目していたのですが、株価は年初来+80%超上昇しています。注目した理由は、日本の中古高級ブランド品には偽物が少なく外国人にも人気があることや、2015年にもインバウンド消費を背景に同社の株価が高騰した過去もあり、円安も追い風になると見込んだためです。

図7. コメ兵<2780>株価チャート(Trading View)

このように条件①〜④に該当する注目の業界の中でも、“今から投資しても投資妙味があるか”は銘柄ごとに精査が必要です。私はコロナ禍の大打撃から回復中かつ好業績で、株価の上昇余地があると感じる銘柄に注目しています。上記の考え方で、私が個人的に気になった銘柄を例としてご紹介します(あくまで個人の考えを説明するための例です。投資は自己責任であり、特定の銘柄を推奨する意図はないことにご留意ください)。
【ヒビノ<2469>】
一つ目はヒビノ<2469>です。同社は音響機器サービスの会社で、事業セグメントには「販売施工事業」「建築音響施工事業」「コンサート・イベントサービス」があります。コロナ禍で凍結・先送りされていたイベント関連の設備投資が再開され、コンサート市場でも大型ツアーが再開されるなど活況を取り戻していることにより、23/03期の業績はコロナ前の水準まで回復しています(図8)(24/03期は増収増益予想)。一方で株価はコロナ前よりも低い水準にあります(図9)。経済再開で活況が期待できる業界なので注目しています。

図8. ヒビノ<2780>業績

図9. ヒビノ<2780>株価チャート(Trading View)

【オエノンホールディングス<2533>】
二つ目はオエノンホールディングス<2533>です。同社は酒類製造を中核とする持株会社です。主要商品には焼酎、清酒、チューハイなどがあります。同社の年次の業績はコロナ前の水準まで回復していないものの、主力の酒類事業で実施した価格改定により利益率が改善し、行動制限の緩和により業務用市場に回復の兆しもあることから、23/12期・第1四半期の利益は大幅に改善しています(図10)。株価はこの数ヶ月で上昇しているもののコロナ前より低い水準にあり(図11)、経済再開やインバウンド消費を追い風にこのまま業績が堅調に推移すれば、コロナ以前の業績を上回る可能性もあるので注目しています。インバウンド消費でどれだけ業績が上向くか決算を注視したいと思います。

図10. オエノンホールディングス<2533>業績

図11. オエノンホールディングス<2533>株価チャート(Trading View)

【TKP<3479>】
三つ目はTKP<3479>です。同社は貸会議室の国内最大手で、ホテル・リゾートの運営も行っています。同社の業績・株価はコロナ禍で急落し、株価は一時コロナ前の5分の1程度まで下落しました。しかし23/02期の業績は、コロナ前の水準には及ばないものの大きく改善しており(図12)、株価も2,700円台まで回復しています(図13)。同社の中期計画によると、24/02期の売上予想は(リージャス事業売却により)減少するものの、経常利益(予想)は過去最高の50億円と強気の予想となっています。貸会議室や宿泊事業は、経済再開・インバウンド消費を追い風に拡大が期待でき、同社の株価はまだコロナ前より大幅に低い水準にあるため、長期視点で注目しています。

図12. TKP<3479>業績

図13. TKP<3479>株価チャート(Trading View)

PTSは銘柄発掘に役立つ!

私は銘柄発掘や時間外取引のためにPTSをよく利用しています。私がPTSを利用する理由は以下の通りです。
 ①注目の集まっている銘柄が分かる(銘柄発掘)
 ②取引時間外に株を購入できる
1 注目の集まっている銘柄が分かる(銘柄発掘)
企業は決算や上方修正などの情報を時間外に開示することが多く、開示後にすぐに投資家が反応してPTSの株価が上昇することがよくあります。言い換えると、PTSでの株価の上昇率のランキングなどを見れば、注目の集まっている銘柄が分かり、銘柄発掘に役立ちます。また、PTSで株価が急騰している企業の開示情報を確認すれば「なぜPTSで株価が上昇しているのか」「他に株価が上昇しそうな関連株はないか(連想)」など今後の投資のヒントにもなります。
2 取引時間外に株を購入できる
私の場合、日中は仕事をしているため、平日の取引時間内に取引できる機会は限られています。しかし、仕事後に銘柄分析をしていると「今すぐ買いたい!」と思う銘柄に出会うこともあります。そんな時にPTSを覗いてみて、終値よりも安く買えることありますし、また急騰している銘柄でも「明日には更に上がって買えなくなる!」と思って買うこともあります。兼業投資家の私にとっては投資のオプションが増えるのでありがたいシステムです。
特に投資に費やせる時間に限りのある兼業投資家の方には、有用な情報源であり仕組みだと思いますので、ぜひPTSを活用されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は「アフターコロナと投資」というテーマで、私が注目する業界について紹介させていただきました。いまの日本市場は好調で「経済再開(リオープン)」以外にも多くの注目テーマがあります。物価高で生活費も上がり苦しい面もありますが、この変化を機会と捉えて、多くの方々が投資を楽しむ好機になればと思います。
読者の方々が投資を考えるための材料として、本記事が少しでもお役に立てていれば幸いです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年7月3日時点の情報に基づきます。
※あくまでもやんさん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

RELATED

>