株式

2022.07.04

【数字オンチから株式投資の人気講師になったFPが解説】投資家マインドを持つこと!日常に溢れる投資の情報をキャッチしよう。

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まずはすすめられた株や投資信託を買ってみたけれど、今度は自分で色々と調べて買ってみたいと考えていませんか? 投資に関する情報は新聞や書籍、ネット記事、雑誌、SNSなどにあふれていて、どの情報を参考にしたら良いのか分からなくなってしまいますよね。 「どのように投資に関する情報を集めて、どのように活用すればよいの?」「投資 情報 集め方」で検索してみても、情報収集の方法が羅列されていて、読んでみても分かるような分からないような・・・。 そこで今回は、FPの藤川里絵さんに実体験を交えた投資情報の集め方をお伺いしました。この記事を読んで、投資の情報収集に活用してみて下さい!

今回お話を伺ったのは…

藤川里絵(ふじかわ りえ)さん:
キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著者に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube

日経新聞やIR情報、自分の体験などあらゆる情報を活用

― 早速ですが、藤川さんは普段からどのように投資の情報収集をされていますか?

藤川さん:目的別に分けると、以下の情報源を活用して情報収集をしています。
目的 情報収集源
定点観測 日本経済新聞・ラジオNIKKEI・日経CNBCなど
決算・業績確認 IR情報(決算短信や決算説明資料など)・四季報・株探など
企業情報確認 企業のHP・YouTubeチャンネルなど
商品・サービスの評判確認 各種SNS・自らの体験など
定点観測というのは、変化のある事情について、一定期間観察を続けることです。日経平均株価や個別株の値動きを毎日確認しています。

― あらゆる情報を駆使されているのですね。藤川さんは、どのような流れで情報収集し、株取引を行っているのでしょうか?

藤川さん:私の主な投資スタイルは、決算から決算までの間の数週間から数ヶ月程度、上方修正が期待できる個別株へ投資をするというものです。

そのため、まずは決算短信や決算説明資料などで決算や業績に関する情報を確認します。

決算・業績の確認をして「ここは良さそう!」と思ったら、四季報でこれまでの業績の推移や決算に対する期待感などを確認します。

四季報を確認した後は、企業のHPやYouTubeチャンネルで商品やサービス、経営トップのお人柄などを確認することが多いですね。商品やサービスについては、SNSでチェックしたり、実際に体験してみて確認することもあります。

― 決算情報を確認後、四季報や企業のHP、実際に自分で商品やサービスを試してみて、投資先を選定しているんですね。

藤川さん:順番は前後することはありますけどね。自分や周りの人が使っていて良いなと思った商品・サービスがあれば、どこの企業がそれを提供しているかを調べて、企業のHPや業績を確認した後に投資をする場合もあります。日常生活の中にも投資の情報はたくさんあるんですよ。

ケース①【森永製菓株式会社】決算短信や企業のHP、SNSなどを駆使して投資をした

― 藤川さんが投資をした銘柄について、情報収集の方法も交えてご経験談を教えてください。

藤川さん:最近ですと、大手お菓子メーカーの森永製菓株式会社へ投資をしました。コロナ禍にあった2020年は、巣ごもり需要もあり、多くのお菓子メーカーの業績は好調でした。一方で、森永製菓の業績は伸び悩んでいたんですね。

そして2021年に入り、株探※で各社の決算速報を見ていたら、森永製菓の好決算に目が行きました。「なぜ今年に入って業績が良くなったのだろう?」と決算短信を確認してみると、ゼリー飲料のinゼリーとラムネの売上げがすごく伸びていることが分かったんです。

※株探:株式投資の銘柄発掘・銘柄探検サイト。決算速報をリアルタイムで配信してくれるため、決算情報を集めるのに便利

※表内の数値は国内販売実績にて算出

森永製菓の2021年第1四半期(4月1日~6月30日)の決算短信より。森永ラムネの売上げが前年同期比で114%増、inゼリーが153%増している

― あの昔からあるinゼリーとラムネですか?

藤川さん:あのinゼリーとラムネです。

inゼリーの売上げ増加の背景の一つには、新型コロナワクチン接種後の体調不良に備えて、まとめ買いをした人が多くいたことが挙げられます。

また、ラムネの売上げ増加の背景は、「ラムネスイッチ」という“テレワークのオンとオフの切り替えにラムネを活用しましょう”というプロモーションを森永製菓が実施したことです。こうした背景で、今後も売上げは継続して伸びていくと考え、森永製菓へ、投資をしました。

― inゼリーやラムネの売上げが伸びていることは決算短信で確認できますね。では、ワクチン接種やプロモーションなど、売上げ増加の背景に関する情報はどこで確認すれば良いでしょうか?

藤川さん:売上げ増加の背景についても、決算短信に書いてある場合がありますよ。


売上げの増減の背景は決算短信に書いてあることも。例えば、inゼリー売上げ増の背景については、飲用シーンの提案などが言及されている。


森永製菓の「inゼリー」については、Twitterで「ワクチン inゼリー」で検索したところ、「副作用に備えてinゼリー買ってきました!」のように、多くの人がワクチン接種後に備えてinゼリーを購入していることが肌感で感じられました。

ラムネについても、森永製菓の企業のHPを見てみると、プロモーションしていることが確認でき、また商品ページにはラムネ情報が豊富にあったことから、「あっラムネに力を入れているな」と判断しました。

加えて、娘も最近よくラムネを食べており、実際に私もコンビニへ行ってみたら、ラムネコーナーが充実していたんですね。これらの情報から「売上げが好調なのだろう」と推測できました。

― 企業のHPを確認したり、実際にコンビニに行ってみたりと、誰でも手軽にできる情報収集ですね。
藤川さん:そうですね。特に投資初心者の方は、実際に自分で体験したり試したりできる商品・サービスを提供している企業を投資先として選ぶ方が、安心感もあって良いのではないでしょうか。
<森永製菓の情報収集ポイント>
● 「2020年は全体的に好調だった」という製菓業界の動向を押さえていた
● 株探で決算速報を確認し、森永製菓の同業他社よりも強い決算に注目する
● 決算短信や口コミ、実際に売り場に出向いて、売上げ増加の背景を確認・納得した上で投資した
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、情報の正確性を保証するものではありません。

ケース②【株式会社オカムラ】自ら商品を試して投資を決めた

― 最近、自分で投資先の企業のサービスを体験された上で、投資をした銘柄はありますか?

藤川さん:最近ですと、大手オフィス家具メーカーの株式会社オカムラです。実際にオカムラの椅子に座ってみた上で投資をしました。

― オカムラへ投資をした経緯を教えてください。

藤川さん:コロナ禍以降、家で仕事をすることが増えたのですが、長く椅子に座って作業をしていると腰に負担が掛かってきますよね。そこで「良い椅子があったら買いたいな~」と、ぼんやりと思っていました。

それから別のタイミングで、オカムラの業績が2020年の途中から急に伸びていることに気づき、「コロナ禍以降、オフィスに行く機会は減っているはずなのになぜ?」とオカムラの企業のHPを見てみました。すると、テレワーク用の椅子がとても充実していたんですね。

Twitterで検索してみても、オカムラの椅子の評判が良かったんです。つい私も座りたくなって、実際にオカムラのショールームへ行って座ってみました。

― なぜオフィスへ出社する人が減っているのにもかかわらず、オカムラの業績は伸びているんですか?

藤川さん:あくまで複数ある背景の一部として、以下の点が挙げられます。

●    私のように家の仕事環境を整えたい個人向け商品の売上げが好調
●    Web会議をする機会が増えたことで、法人向けのワークブースの需要増
●    eスポーツ専用のゲーミングチェアの売上げ増

eスポーツ専用のゲーミングチェアは高価なのですが、すごく売れているようですよ。

― ちなみにショールームで座ったオカムラの椅子はいかがでしたか?

藤川さん:すごく良かったです!素材や色、肘掛け、脚タイプなどを自由にカスタマイズができて、使い勝手もすごく良いんですよね。オカムラの椅子の快適さを直に感じられたこともあり、投資をしました。

なお、オカムラの業績事情については日経新聞でも確認できますよ。オカムラのように業界で注目されている企業は日経新聞や経済番組でも取り上げられることがよくありますので、適宜チェックしても良いでしょう。
<オカムラの情報収集ポイント>
●   Twitterでオカムラの商品の評判を確認する
●   自らオカムラの商品を試し、良い商品であることを確認した上で投資をする
●   オカムラのような注目企業はメディアで取り上げられることもある
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、ジャパンネクスト証券株式会社が情報の正確性を保証するものではありません。

投資家マインドを持つことで、日常の情報も投資に活かせる

― 森永製菓やオカムラのご経験談をお聞きすると、あらゆるところに投資のヒント・情報が眠っているのですね。

藤川さん:その時は意識していなくても、見聞きした情報が後々投資に結びつくことはよくありますね。点と点が線に繋がる感覚でしょうか。

― 普段見聞きする情報を投資に結びつけるポイントはありますか?

藤川さん:ポイントは「投資家マインドを持つこと」だと思います。これまでは「ラムネ、美味しい」と消費者マインドで終わっていたところを、「ラムネ、美味しいな。プロモーションもしているし、会社は儲かっているんじゃないかな」と投資家マインドの視点で物事を考えることで、自分で見聞きした情報が自然に投資に活かされるようになるでしょう。

― 藤川さんは「自分で体験してみること」も情報収集の一つとして重視していると感じます。

藤川さん:個人的には数字を追うだけの投資よりも、自分でサービスや商品を体験・確認して「良いな」と思った企業に投資をする方が楽しいですね。その方が長く投資を楽しめるのではないかとも思っています。

― 日々の値動きに一喜一憂しながら、数字を追うのはエネルギーが要りますよね。

藤川さん:個人差があると思いますが、値動きや数字ばかりを考えるのも疲れますよね。その点、私は「投資はあくまで趣味」というスタンスです。趣味ですので、「お金が減るのは当たり前だけど、お金が増えるかもしれない」という気持ちでいるようにしています。私は投資を趣味として楽しむことに軸を置きつつ、資産を増やしていけたら良いなと考えています。

「誰かにすすめられたから」で投資をするのは要注意!

― 情報の取り扱い方について、注意点はありますか?

藤川さん:「○○さんがすすめた銘柄だから」という理由で、自分では何も調べずに株を買うのは止めた方がいいと思います。

― それはなぜでしょうか?

藤川さん:まず、損失を出してしまっても誰のせいにもできないので、感情の行き場がなくなります。また、次に繋がらない失敗にもなってしまいます・・・とは言いつつ、実は私もすすめられた株をそのまま買って失敗したことがあります。

― 差し支えなければ、藤川さんの失敗談を教えていただけますでしょうか。

藤川さん:私が失敗したのは米国株です。YouTubeですすめられていた米国株を“何となく良さそうだから”と、その企業について詳しく調べることなく買ってしまいました。

そのあと株価はどんどん下がり、結果、損切りすることに。悔しい気持ちが残りましたね。

何より、言われたまま買ってしまったので、なぜ株価が下がったのかも分かりません。どこが間違っていたのかを振り返ることもできないので、次に全く活かせない失敗になってしまいました。やはり、自分で調べて納得した上で投資をしないといけないと再認識しましたね。

決算短信の“匂わせ”も参考に、上方修正銘柄を探す

― 藤川さんは、上方修正が期待できる個別株を売買されているそうですが、上方修正しそうな銘柄をどのような情報から推測するのでしょうか?

藤川さん:まず、売上げと営業利益の伸びを決算短信で確認します。両方を順調に伸ばしている場合は、上方修正の可能性が少し出てきます。その次に、決算短信の3・4ページ目以降にある業績以外の定性情報をよく確認しますね。

― 定性情報のどこを確認するのでしょうか?

藤川さん:事業部門別の売上げ状況や採用状況などを通して、どこの事業に力を入れているかなど、さまざまな情報を確認します。また、行間を読むこともあります。

― 行間を読むとはどういうことでしょうか?

藤川さん:例えば、決算短信を読むと進捗率がすごく良く、この決算のタイミングで上方修正ができるはずなのに、さまざまな事情から上方修正をしていない場合があります。

このように“上方修正をあえて行わない企業”の場合、ただ「業績の変更はありません」という文面ではなく、「業績の修正が分かり次第発表します」などの前向きな文面で、わずかですが上方修正を匂わせていることがあるんです。


freee株式会社の2021年6月期の決算短信。業績予想について「業績は上振れて進捗しているが、現時点では変更はない」と記載されている。次の決算で上方修正した。

※ あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、情報の正確性を保証するものではありません。
― 宝探しみたいですね。

藤川さん:そうなんですよね!気になる銘柄があれば、決算短信を何期も継続して確認していくことで、行間の変化により気づきやすくなります。

また、決算短信以外では、PTS※の値上がり・値下がりランキングを決算シーズンによく見ますね。特に決算発表後に夜間のPTSで上昇していたら、「みんな良いと思っていそう」と判断して、翌日発注する場合もあります。

※PTS:Proprietary Trading Systemの略称で私設取引システムのこと。証券取引所取引時間外の朝や夕方、夜間でも取引ができる

― 藤川さんは、普段PTSを利用されていますか?

藤川さん:PTSに関してはSOR注文※を利用しているので、意識せずとも普段から使っていることになりますね。また、私の講座を受講している生徒さんの中でも、仕事をしていて日中は落ち着いて取引できない方は、夜間でも取引ができるPTSをよく活用しているようです。

※SOR注文:取引所とPTSの複数の市場から、最良価格を提示する市場を自動的に選択し、売買注文が執行される仕組み

投資は趣味!楽しく長く続けよう

― 今回は「投資の情報収集」をテーマにさまざまなご質問をさせていただきました。最後に読者の皆さまへメッセージをお願いいたします。

藤川さん:考え方の一つではありますが、投資はあくまで趣味として、とにかく楽しむことが大切だと思います。どうしても保有銘柄の株価が下がって辛いときは、一度投資を休むことも大切です。

また、「勝たないといけない」と根を詰める必要もありません。投資をしていると、どうしても稼いでいる他の投資家と比べちゃいますよね。ただ、投資は誰かと競う勝負ではありません。

あとは、最初から欲張らないことです。初心者の方はまず数千円・数万円から始めて、自分で銘柄を選んでいくらで売ると目標を決めておきましょう。それで売れたら、それはもう成功と言えます。そうやって小さな成功体験を積み上げて、自分の勝ちパターンをつくって行きましょう。

無理に大きな目標を持たずに、「楽しみながら投資をする」という意識を持てれば、徐々に投資も上手くいくようになり、長く楽しく投資と付き合っていけるのではないかと思います。
PTSって何?

記事の中で出てきた「PTS (Proprietary Trading System) / 私設取引システム」という言葉。
PTSとは、投資家が取引所以外で有価証券を売買できる取引施設で、東京証券取引所(東証)の代替市場としての役割を期待されるシステムです。
東証とは異なる刻み値や売買単位、注文方法や取引時間外での取引が可能です。PTSを直接利用できるのは証券会社ですが、証券会社の顧客である投資家が売買注文時に「PTS発注」あるいは「SOR発注」を選択することで、PTSに発注することができます。

現在、日本ではジャパンネクスト証券とCboeジャパン、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の3社がPTSを運営しています。
本記事に掲載されている全ての情報は、2021年10月22日時点の情報に基づきます。

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