株式

2022.07.04

「投資の失敗=損すること」とは限らない!人気FPが語る、投資の失敗の捉え方とは

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「投資で失敗したらどうすれば良いの?」 「損失が怖くて投資に踏み出せない」 投資に興味はあるけれど、損をするのが怖くてなかなか始められない人もいるのではないでしょうか。投資に関する情報を調べていると、「株で○千万円の損をして人生が転落した」「FXにハマって貯金をすべて使い果たしてしまった」という類いの失敗談が語られた情報に遭遇することも多々あり、“投資は怖いもの”と思うのも無理はありません。

今回お話を伺ったのは…

株式会社Money&You取締役 ファイナンシャルプランナー 高山一恵さん:慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性のためのFPオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画する。その後、2015年に株式会社Money&Youの取締役へ就任。現在は講演活動や執筆活動、相談業務のほか、月400万PV超のお金に関する情報サイト『Mocha(モカ)』の運営などを通じて、お金の知識を伝える活動を精力的に行なっている。著者に『はじめてのお金の基本』『はじめてのNISA&iDeCo』など。

Twitter:高山一恵@お金の専門家/ファイナンシャルプランナー
YouTubeチャンネル:Money&You TV:マネーアンドユーTV
運営サイト:Mocha(モカ)


高山さんによると「投資の目的によっては、投資の損失=失敗とは限りませんよ」とのこと。
「投資での損(損失)は、失敗とは限らない」とは一体どういうことでしょうか。今回は高山さんに「投資の失敗=損失、投資の成功=利益」という枠に留まらない、“投資の失敗の捉え方”についてお聞きしました。

「投資=ギャンブル。だから怖い」というイメージを持っている人は、考え方・捉え方が少しでも変わるキッカケになりますように!

投資の目的によって、失敗の捉え方は変わる!

― 最初に高山さんの“投資の失敗の捉え方”について教えてください。

高山さん:「投資の失敗=損をすること」という捉え方があるのは当然ですが、一方で投資の目的によっては、「投資の失敗=損失」とは限らないと考えています。

― 投資の目的によっては、「投資の失敗=損失を出すこと」にはならないケースもあるのですね。

高山さん:そうですね。投資の目的は必ずしも「利益を出すこと」だけではありませんよね。例えば、「株主優待がほしい」「その企業を応援したい」「経済の勉強をしたい」など投資にはさまざまな目的があります。それらの目的を達成しているのであれば、含み損(※)を抱えたり、損失を出してしまったりしても「失敗」とは言えないのではないでしょうか。例えば、「株主優待がほしい」という目的で投資をした場合、含み損を抱えていても株主優待をもらった時点で、「投資を失敗した」とは言えないと思います。

※含み損とは、現在の株価が購入価格よりも下がっていて、売却をすると損失が出てしまう状態のこと。
<高山さんが考える“利益を上げること”以外の投資の主な目的>
●  株主優待をもらう
●  企業を応援する
●  経済の勉強をする
●  自分が働いている業界について学ぶ
●  関心のある株主総会に参加する
― たしかに、投資の目的を達成したなら失敗とは言えないですね。

高山さん:そうですよね。繰り返しになりますが、投資の目的によっては「失敗=損をすること」とは限りません。投資に踏み出せない方の中には、“損をするのが怖い”と思っている方も多いと思います。ですが、自分が何を目的に投資をするのかを明確にして、少しの損失はレッスン料と割り切れるぐらいの目的を今一度考えてみてはいかがでしょうか。

― 損失だけが失敗ではないというのは、少し変わった視点だと思います。ですが、失敗の中でも“これだけは避けなければならない”失敗はありますか?

高山さん:「熱くなりすぎて、どんどん資金をつぎ込んでしまうこと」ですね。損をするとどうしても「取り返したい」という気持ちが強くなり、当初想定していた投資金額を越えて投資をしてしまう方もいます。ただ熱くなって投資をした銘柄に限って、どんどん下落してしまうんですよね。事前に投資金額は決めておき、その金額を守る努力は必要だと感じます。投資の損失だけが失敗ではないと言いましたが、こういった失敗だけはしないようにしてほしいですね。

“利益を出したい”以外の目的でも投資をしたサンリオとジンズホールディングス

― 実際に高山さんが“利益を出すこと”以外の目的も持ち、投資をしたご経験談を教えてください。

高山さん:私はサンリオピューロランドが好きで、株式会社サンリオへは、「株主優待をもらうこと」や「株主総会に参加すること」も目的に投資をしています。株主優待や株主総会も投資の目的なので、もちろん株価が上がるに越したことはありませんが、株価が少しぐらい下がっても良いかなとは思えますね。

余談ですが、サンリオの株主総会ってすごく面白いんですよ。

― どのようなところが面白いんですか?

高山さん:現在は社長交代しましたが、私が投資をしていた当時は辻 信太郎氏という名物社長が、株主総会で出た株主のざっくばらんな要望を次々に事業に反映させていたんです。

例えば、「サンリオピューロランドで出てくるご飯をもっと美味しくしてほしい」という要望も株主から飛んだことがありましたね。その要望もあり、サンリオピューロランドのご飯って美味しくなったんですよ。

こうした株主総会のやりとりや株主からの要望の反映過程を見られるのも、サンリオに投資をした株主ならではの魅力だと思います。

― サンリオ以外にも“利益を上げること”以外の目的も持ち、投資をした銘柄はありますか?

高山さん:「この企業を応援したい」という目的で、メガネブランド「JINS(ジンズ)」を手掛けるジンズホールディングスに投資をしたことがあります。投資したのはジンズホールディングスが上場したてくらいの時期で、店舗数も現在と比べてとても少なく、知名度も低かったときでしたね。

― あのメガネのJINSですね。どのような理由で応援したいと思ったのでしょうか?

高山さん:私は目が悪く、当時メガネを作るとなるとレンズが厚くなるのでなかなかおしゃれなフレームを選ぶことができなかったんです。そんななか、JINSではリーズナブルな価格でおしゃれなメガネを作ることができたんです。

この経験から「もっとおしゃれなメガネを作ってほしい!」と思い、応援する気持ちで株を買いました。

結果的にジンズホールディングスの株価は上がり利益も出ましたが、応援の気持ちで買ったので、「株価が下がっても保有し続けよう」とは思っていましたね。

― 高山さんが普段FPの先生として接する相談者さまのなかで、印象的な目的で投資をした方はいますか?

高山さん:当初から目的に据えていたかはわかりませんが、自分が働いている業界の企業に投資をして、業界動向や同業他社のビジネスモデルなどを学んでいる方はいました。結果的にその方は、「自分がいる業界は斜陽産業になるかもしれないと、投資を通じて学べた」と言って、転職をしていましたね。働いている人は、勤め先の業界について学ぶことを目的に投資をしても良いかもしれません。 

― 投資と一口にいっても投資をしていくうちに色々なことが学べて、目的も様々あるんですね。

高山さん:そうですね。もちろん「お小遣いが欲しい」という目的で投資をする方も多いと思います。

例えば、女性の相談者さまで、街歩きで得た情報をヒントに投資をして、お小遣いを増やしている方もいますよ。行列ができている人気店を街で見かけたら、SNSで人気度をチェックして投資をすることもあるようです。

「お小遣い稼ぎ」が目的の投資であっても、少額であれば、最初は彼女のように、自分の身の回りにあってわかりやすい企業から始めてみても良いのではないでしょうか。

※あくまでも高山さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。

リーマンショックでの損失から学んだリスク管理の重要性

― ここまで“利益を上げる”目的以外の投資談をお聞きしてきましたが、 利益を上げようと思って投資をした結果、損を出して失敗してしまった経験はありますか?

高山さん:たくさんありますよ!(笑)まず前提として、よっぽどラッキーな人以外、投資をする以上、損をすることは避けられないのではないでしょうか。例えば株価に影響した、2020年のコロナショックは恐らく誰にも予想できなかった出来事ですよね。

ただ損失から学ぶことも多くありました。その意味では、損失を出した失敗も次に活かすことで「成功へのステップ」と捉えられます。

― 「損失から学んだこと」とは例えば何でしょうか?

高山さん:例えば、2008年のリーマンショックの時期に損失を出した際は「リスク管理の重要性」を学びました。

当時、保有資産のほとんどがリスクの高い資産である株式だったのですが、株式は損をするときは大きく損失が出てしまうんです。リーマンショックの時は株式に集中投資していたことが裏目に出て、大きく損失を被ってしまいました。

この経験から、ポートフォリオの見直しをしてリスク管理を重視するようになりました。
<リーマンショック後、リスク管理を重視し、ポートフォリオを見直した>
●  保有資産の7割前後を投資信託や金へ、3割前後を株やFXなどの比較的リスクの高い資産に

●  投資信託や金は中長期的な資産形成をするため、株やFXはお小遣い稼ぎや株主優待を楽しむため、と投資の目的を明確に
― 現在はリーマンショックでの失敗を活かしたポートフォリオを形成しているんですね。

高山さん:そうですね。その他にも損失を通して学べることってたくさんあるんですよ。例えば、「○○ショックの影響を受けても、よほど業績が傾いている企業でなければ、いずれ株価は回復する可能性が高い」という経験則も得ることができました。

また「資金・時間・心の余裕がないと慌てて間違った投資判断をすることがある」ということも学びましたね。損失を出した失敗から学んだことは、現在も投資に活かされています。

― 損失も成功への第一歩だと捉えられるのですね。それでも「損失が怖い」という人はどのような取引をするのが良いでしょうか。

高山さん:中長期的に安定成長が見込める企業を中心に、投資先を検討してみてはいかがでしょうか。それらの銘柄は、持ち続けていれば○○ショックが起きても、経済回復に伴い株価も回復する可能性が相対的に高くなります。

ただ株式を保有し続けるためには、ある程度「資金・時間・心の余裕」が必要かと思います。それらの余裕を持つために、投資額は株価が例え下落したとしても「まぁしょうがないか」くらいに思える金額に抑えることが、投資をする上では大切です。

投資はスポーツと同じで自分でやってみることが大切

― 今回は「投資の失敗・成功」にまつわるさまざまなご質問をさせていただきました。最後に読者の皆さまへメッセージをお願いいたします。

高山さん:世の中では投資で大損失したエピソードがよく取り上げられますよね。そう言ったエピソードはインパクトがあり、注目されやすいからだと思います。実はコツコツ投資をして、それなりの資産を築いている人は多くいますよ。

投資をするのとしないのとでは、生涯を通して築く資産に大きな差が出る可能性がありますし、投資をすることで、世の中の情報をたくさんキャッチできるようになります。投資はスポーツと同じで、やればやるほど感覚が身について上手になっていくと思います。スポーツも知識だけつめこんでも、やってみないと上達しませんよね。投資をしてみて「やっぱりだめだ」と感じたら無理に続ける必要はありません。まずは少額からでも投資への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
PTSって何?

記事の中で出てきた「PTS (Proprietary Trading System) / 私設取引システム」という言葉。
PTSとは、投資家が取引所以外で有価証券を売買できる取引施設で、東京証券取引所(東証)の代替市場としての役割を期待されるシステムです。
東証とは異なる刻み値や売買単位、注文方法や取引時間外での取引が可能です。PTSを直接利用できるのは証券会社ですが、証券会社の顧客である投資家が売買注文時に「PTS発注」あるいは「SOR発注」を選択することで、PTSに発注することができます。

現在、日本ではジャパンネクスト証券とCboeジャパン、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の3社がPTSを運営しています。

本記事に掲載されている全ての情報は、2022年2月3日時点の情報に基づきます。

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