金融・投資

2023.07.13

ETF(上場投資信託)のメリット・デメリットと、選ぶときのポイント

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本記事ではETF(上場投資信託)とは何なのか、またそのメリット・デメリットや、選ぶ時の注意点などをご説明します。

今回お話を伺ったのは…

横田 健一(よこた・けんいち)さん

横田 健一(よこた・けんいち)さん

ファイナンシャルプランナー。大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」を運営。家計相談やライフプラン・シミュレーションの提供を行い、個人の資産形成をサポートしている。
資産形成ハンドブック : https://shisankeisei.jp/
YouTube 資産形成ハンドブック : https://www.youtube.com/c/shisankeisei
著書「新しいNISA かんたん最強のお金づくり」(河出書房新社、2023年6月)https://www.amazon.co.jp/dp/4309292992/

そもそも「ETF」(上場投資信託)とは?

ETFはExchange Traded Fundの略称で、日本語だと「上場投資信託」と呼ばれています。日経平均株価(日本株式を対象としたインデックスのひとつ)やMSCIコクサイ(先進国株式を対象としたインデックスのひとつ)といった特定のインデックス(指標・指数)に連動するように運用される投資信託の一種で、取引所に上場しているものです。
上場していない一般的な投資信託(以下、ETFと区別して本記事では「投資信託」と呼びます)は、基準価額と呼ばれる値段が1日1回のみ計算され、その値段で取引することになりますが、ETFは上場しているため、取引時間中はリアルタイムで価格が変動し、好きなタイミングで売買することが可能です。
つまり、ETFは投資信託のように手軽にさまざまな資産(アセット)クラスに投資することができるという利便性と、上場株式のように取引時間中ならいつでも取引ができるという機動性を兼ね備えた商品ということになります。
なお、一般的にETFは、海外の取引所に上場しているものもありますが、本記事では国内の取引所に上場しているものを対象としてご説明します。

「ETF」を活用するメリット・デメリット

ETFを活用する場合のメリットやデメリットについて、上場株式や投資信託と比較しながら考えていきましょう。次の表をご覧ください。

上場株式・ETF(上場投資信託)・投資信託の比較(横田さん作成)

まず、取り扱っている金融機関ですが、取引所に上場している上場株式やETFは証券会社のみとなる一方、投資信託は銀行等の金融機関と幅広く取り扱われています。
次に、投資対象となる資産を比較してみましょう。上場株式の場合は、特定の1銘柄のみとなりますが、ETFの場合は、投資信託同様、株式、債券、不動産(REIT)、商品(コモディティ)など、様々な資産(アセット)に投資することが可能です。それぞれの資産(アセット)の構成銘柄は、数十から数千と多数の銘柄に一度に投資できますので、手軽に分散投資することが可能です。
なお、ETFは260本弱と、一般的に販売されている投資信託の約4500本と比較すると本数は少なめですが、多すぎても迷ってしまうと思いますので、このくらいでも十分な選択肢があると言えるでしょう。
取引するときの価格は、上場している上場株式やETFは時々刻々と変化するその時の価格で売買することが可能(成行注文や指値注文など様々な発注方式が選択可能)ですが、投資信託の場合は、1日1回計算される基準価額での取引となります。
投資家として意識しておきたいのが取引する時に支払う手数料です。一般的に取引する際の手数料は、購入時、保有時、売却/解約時の3つのタイミングで負担することになります。なお、各手数料の水準は、取引金融機関や取引する商品によって異なりますが、投資信託よりもETFの方が手数料は低い傾向にあります(ただし、ここ数年で投資信託の手数料は低下傾向にあり、その差は小さくなっています)。
また、毎月一定金額ずつ投資をしていくような定時定額の積立投資(一般的にドルコスト平均法と呼ばれます)は、投資信託であれば多くの金融機関で可能です。一方、上場株式やETFの場合、株式累積投資というサービスを提供していて、さらにその上場株式やETFが対象銘柄に指定されていなければ利用することはできません。
そして、上場株式やETFであれば信用取引が可能です。証券会社からお金を借りることで自己資金以上の取引を行うことや、相場が下落局面だと判断した際に証券を持っていなくても売却する信用売りを行い、その後に買い戻すといった取引を行うことが可能なのです。
また、株式の場合は生み出した利益の一部を配当金として株主に払い、ETFや投資信託の場合には投資対象から発生した配当金などを分配金として投資家に払います。投資信託の場合には、その分配金を自動的に同じ投資信託の購入に充当する再投資ができるものもありますが、上場株式やETFの場合は一般的に現金で受け取る形になりますので、再投資する場合は自分で手続きをする必要があります。
最後に、上場株式特有の権利としては、株主総会における議決権や、株主優待などが挙げられます。株式を保有するということは一部であってもその会社のオーナーになることですので、持分割合に応じた議決権を行使することでその会社の経営に参加することができます。また、株主にその会社の取扱商品やサービス券などを提供する株主優待を実施している会社もあります。ETFや投資信託の場合には、こういった議決権を行使したり、株主優待を受け取ったりすることはできません。
ETFのメリット・デメリットをまとめると次のようになります。

ETF(上場投資信託)のメリット・デメリット(横田さん作成)

ETF(上場投資信託)の選び方

実際にETFを選ぶときにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。一般的に次のような手順で選んでいくのがおすすめです。
  1. 投資する資産(アセット)を決める
  2. ベンチマーク(連動を目指す指標)を決める
  3. 運用残高や手数料率を比較して決定する
まずはどういった資産(アセット)に投資するか決めることです。株式を対象にしたETFと、不動産(REIT)を対象にしたETFを比較しても優劣はつけられません。ご自身で投資したい資産(アセット)(複数ある場合には、それぞれへの配分割合、つまりアセット・アロケーション)を決めます。
そして、例えば、外国株式という資産(アセット)に投資することにしたとします。この場合も、もう少し細かく、先進国株式なのか、新興国株式なのか、米国株式なのか、など投資対象を絞っていく必要があります。
ここでは、米国株式に決めたとします。すると、ベンチマークの候補としてNYダウ、S&P500、NASDAQ100、MSCI米国などがありますので、これらの中から適切だと思うものを選択します。米国を代表する30銘柄を対象とするのであればNYダウ、時価総額の大きい上位約500社を対象とするのであればS&P500、金融業界を除いてIT業界などの銘柄を中心に投資したいのであればNASDAQ100といった具合です。
投資対象とするベンチマーク(指標)が決まれば、あとはその指標をベンチマークとするETFを対象として比較していきます。運用残高がどのくらいか、信託報酬等の費用はどのくらいか、確認しましょう。運用残高は大きい方がより安定的な運用が期待できますし、費用は低いほどリターンが向上すると期待できます。

PTS(私設取引所)なら取引所時間以外にも取引可能

ETFのメリットのひとつは取引時間中にリアルタイムで取引ができることですが、平日の日中にお仕事をされている方は、そんな時間は取れない、という方がほとんどではないでしょうか。
取引所の立会時間は平日の9:00-11:30および12:30-15:00と決められていますが、PTSと呼ばれる私設取引所なら、昼休みや夜間なども取引が可能です。金融機関によっても異なりますが、PTSが利用できる場合は平日夜間(16:30-23:59)なども取引できますので、平日昼間に時間が取れない方であってもETFの取引がしやすくなります。
取引ボリューム(売買代金)という面では、日中の東京証券取引所の売買代金と比較するとPTSでの売買代金は少なくなりますが、それでも日本最大級のPTSであるジャパンネクストPTSなら東京証券取引所の1割程度となっています(東京証券取引所でのETF & REIT売買代金(寄り・引けの板寄せを除く)に対するジャパンネクストPTSでのETF売買代金の割合で算出。対象期間:2021年1月~2023年5月)。
日中は時間が取れないものの夜間なら時間が取れるという方で、取引する価格をご自身で指定しながら取引していきたいという方は、PTSを利用してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、投資信託と上場株式の中間的な存在とも言える、ETF(上場投資信託)についてご説明しました。
通常の投資信託では物足りない、でも個別銘柄の上場株式を取引するのは少し不安だといった方にはETFが最適の商品と言えるのではないかと思います。投資対象は適度に分散されていますので、一般的に上場株式ほどにはリスクは高くありません。
それぞれの商品性を理解した上で、必要に応じて適切に組み合わせながら利用していかれるとよいのではないかと思います。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年7月10日時点の情報に基づきます。
※あくまでも横田さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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