金融・投資

2025.04.15

今回お話を伺ったのは…

水瀬ケンイチさん

水瀬ケンイチさん

1973年、東京都生まれ。都内IT企業会社員にして下町の個人投資家。2005年より投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」を執筆、現在ではインデックス投資家のバイブル的ブログに。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書「改訂版 お金は寝かせて増やしなさい」(フォレスト出版)、「全面改訂第3版 ほったらかし投資術」(朝日新書・山崎元との共著)など。
X(@minasek):https://x.com/minasek
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記):https://randomwalker.blog.fc2.com/
新社会人になると、学生時代とは桁違いのお金が入ってくるようになります。しかし、その一方で社会人として新たな出費も増えることになります。せっかく手にした大切な初任給、どのように使い、どのように貯め、そして増やしていけばよいのでしょうか?本記事では、社会人1年目のお金との向き合い方について、具体的に解説します。

手取り額の計算方法は?

まず最初に把握しておきたいのが、自分の手取り額です。給与明細に書かれている「総支給額」と実際に銀行口座に振り込まれる「手取り額」には差があります。その仕組みを理解しましょう。

1年目の手取り額計算

新卒1年目の場合、一般的に給与から差し引かれるのは以下の項目です。
  • 所得税:課税所得に応じて計算される税金
  • 住民税:入社1年目は原則として課税されません(前年の所得に対して課税されるため)
  • 健康保険料:健康保険に加入するための保険料
  • 厚生年金保険料:将来の年金のための保険料
  • 雇用保険料:失業した際の保険料
例えば、月給25万円の場合、手取り額は約21万円程度になることが一般的です(勤務先や各種控除により変動します)。

2年目以降の手取り額計算

2年目以降になると、住民税が新たに加わります。住民税は前年の所得に対して課税されるため、1年目の所得に基づいて2年目から徴収が始まります。そのため、2年目からは手取り額が1年目より減少することになります。
例えば、同じ月給25万円であっても、2年目の手取り額は約19万円程度になることもあります。この「手取り減少」に備えておくことが重要です。

社会人1年目の主な支出

次に、社会人1年目に直面する主な支出項目を見ていきましょう。

固定費

家賃:都市部では月7〜10万円程度、地方では月4〜7万円程度が一般的です(総務省「家計調査年報」2023年度・単身世帯データより)。家賃は手取り収入の3分の1以内に抑えることが理想とされています。

水道光熱費:季節や使用状況により変動しますが、一人暮らしで月1〜2万円程度を見込んでおくとよいでしょう(総務省「家計調査年報」2023年度・単身世帯データより)。

通信費:スマートフォン料金やインターネット接続料で月0.5〜0.7万円程度です(総務省「家計調査年報」2023年度・「通信費」費目より)。

保険料:社会保険とは別に任意で加入する生命保険や医療保険は、必要に応じて月0.5〜2万円程度です(総務省「家計調査年報」2023年度・「保険料」費目より)。

交通費:通勤定期代が会社から支給されない場合は月0.5〜2万円程度を見込みましょう(総務省「家計調査年報」2023年度・「交通費」費目より)。

変動費

食費:自炊中心なら月3〜4万円程度、外食中心なら月5〜8万円程度になることが多いです(総務省「家計調査年報」2023年度・単身世帯の「食料」費目より)。

被服費:特にスーツなど仕事用の服装が必要な場合、初年度は出費がかさみます。年間で10〜20万円程度は見込んでおきましょう(総務省「家計調査年報」2023年度・若年単身世帯の「被服費」より)。

交際費:飲み会や同僚との食事など、月1〜3万円程度が一般的です(総務省「家計調査年報」2023年度・「交際費」費目より)。

趣味・娯楽費:個人差が大きいですが、月1〜3万円程度が平均的です(総務省「家計調査年報」2023年度・「教養娯楽」費目より)。

一時的な支出

引越し費用:初期費用として、敷金・礼金・仲介手数料などで家賃の4〜6ヶ月分程度を見込む必要があります(国土交通省「民間賃貸住宅実態調査」2023年度データより)。

家具・家電購入費:一人暮らしを始める場合、最低限の家具・家電で30〜50万円程度かかることもあります(総務省「全国消費実態調査」新規単身世帯形成時の支出データより)。
これらを合計すると、月々の支出は固定費と変動費だけで15〜25万円程度、さらに初期費用として50〜100万円程度が必要になることも珍しくありません(総務省「家計調査年報」および「全国消費実態調査」のデータに基づく)。初任給だけでこれらすべてをまかなうのは難しいため、事前の準備や計画的な支出が重要です。
もちろん、住む場所(都内、地方等)や形態(親と同居、一人暮らし、社宅等)、通勤手段(公共交通機関、マイカー、徒歩等)、生活スタイル(インドア、アウトドア等)などで大きく変わります。自分のケースにあてはめて確認してみてください。

社会人1年目からの資産形成のコツ

理想の貯金額とは?

社会人1年目から意識したい貯金の目安として、急な出費や失業などに備え、最低でも「月々の生活費×3ヶ月分」、理想的には「月々の生活費×6ヶ月分」を確保しましょう。例えば月20万円の生活費なら、60〜120万円が目標になります。さらに、投資を行うなら、投資と並行しながらでかまわないので「月々の生活費×2年分」を確保すると、市場の上げ下げに対する経済的・精神的余裕になり、投資を続けやすくなるでしょう。

効率的な貯蓄方法

自動積立の活用:給料日に自動的に一定額を貯蓄口座に振り替えるよう設定しましょう。「先取り貯蓄」が効果的です。新社会人生活は仕事を覚えたり、初めての一人暮らしなどでいままで以上に忙しいものです。毎日口座残高を見て生活することなどできません。だからこそ、自動的に先取り貯蓄が有効なのです。

支出の見える化:生活が落ち着いてきたら、家計簿アプリなどを活用して支出を記録し、無駄な出費を削減しましょう。毎日見る必要はありません。1ヶ月に一度、1年に一度と、定期的に確認してみると家計の分析にとても役立ちます。

初心者におすすめの投資

世の中には様々な投資法がありますが、忙しい入社1年目、2年目のかたには、手間がかからないインデックス投資をおすすめします。インデックス投資を始めるにあたっては、リスクについて学ぶ必要があり、まず投資本を1冊読んでください。Amazonのベストセラーになっているような著名な本がよいと思います。

インデックス投資:市場全体の動きに連動する投資方法で、個別銘柄選びのリスクを抑えられます。運用コストも低く、長期的な資産形成に適しています。インデックス投資は、日経平均株価やTOPIX、MSCI ACWIなどの指数に連動するファンドに投資することで、「市場平均」のリターンを目指す手法です。個別銘柄の選定やタイミングの難しさを回避でき、手間がかからない割に、低コストで他人の平均を保つ効果が効いて長期的には多くのアクティブファンドよりも優れた成績を残すことが多いため、初心者に特におすすめです。
初心者だけでなく、わたし自身はほぼインデックス投資だけを25年間継続して、億を超えるひと財産を築くことができました。もちろん投資額にもよりますが、これだけをやり続けてもよいくらいのしっかりした投資法だということです。

インデックス投資をお得に行うための制度

インデックス投資を行う際には、以下の制度を活用することで税制優遇を受けられます。
新NISA(少額投資非課税制度):2024年から始まった投資のための非課税制度です。年間360万円までの投資枠があり、非課税期間が無期限になりました。「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)の2つがあり、特に「つみたて投資枠」はインデックスファンドへの投資に適しています。運用益が非課税になるため、長期的な資産形成に大きな効果を発揮します。

iDeCo(個人型確定拠出年金):こちらはあくまで「年金」の制度であることに注意が必要です。将来の年金として積み立てながら、税制優遇も受けられる制度で、掛金が全額所得控除になるため、節税効果も期待できます。ただし、原則60歳まで引き出せないため、長期的な資産形成として考える必要があります。この制度内でもインデックスファンドを選択できる場合が多いです。

資産形成の基本原則

1. 長期投資:短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが重要です。株式市場は短期では上下しますが、長期では上昇傾向にあります。

2. 分散投資:「卵は一つのカゴに盛るな」の格言通り、投資先を分散させることでリスクを軽減できます。国内外の株式や債券など、異なる資産クラスに分散することが大切です。

3. コスト意識:手数料の低い金融商品を選ぶことで、長期的なリターンを高めることができます。特に長期投資では、わずかな手数料の差が大きな差になります。

4. 無理のない範囲で:生活を圧迫するような無理な投資は長続きしません。余裕資金の範囲内で始めましょう。特に生活防衛資金を確保してから投資に回す、もしくは生活防衛資金を貯めながら投資は小さく始めることが重要です。

まとめ

社会人1年目は、お金との付き合い方を学ぶ重要な時期です。手取り額の計算方法を知り、支出を適切に管理しながら、計画的に貯蓄・投資を始めることで、将来の自分に大きな恩恵をもたらします。
特に重要なのは、以下の3点です。

1. 収支の把握:自分の手取り額と支出を正確に把握する
2. 生活防衛資金の確保:急な出費に備えた資金を優先的に貯める
3. 長期的な視点:短期的な損得ではなく、複利の力を活かした長期の資産形成を意識する
お金は人生を豊かにするための道具です。社会人1年目から正しい知識と習慣を身につけることで、将来の選択肢を広げ、より自由度の高い人生を送ることができるようになります。日々の小さな積み重ねが、将来の大きな差となって現れます。

若いうちから少額でも投資を始めることで、複利の効果を最大限に活かすことができます。例えば、22歳から月1万円を年利5%で運用した場合、60歳時点で約1,500万円になりますが、30歳から始めると約900万円になります。8年の差が600万円もの差になるのです。

若い時は時間という「財産」をたっぷり保有している状態です。しっかりと活用しながら、よりよい人生をお過ごしください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年3月27日時点の情報に基づきます。
※あくまでも水瀬ケンイチさん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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