夜間取引

2023.05.11

ストップ高・ストップ安とは

ストップ高・ストップ安の基礎知識

ストップ高、ストップ安とは、1日の株価の上昇や下落に制限を設け、一定の変動の幅以上に価格が上がったり下がったりしないようにする東京証券取引所が定める制限のことを言い、「値幅制限」とも呼ばれています。

この値幅制限があるため、1日で株価が何倍にもなるということはなく、逆に1日で半分になってしまうようなこともありません。
株価が大きく変動したとき、それをきっかけに市場が乱高下を繰り返すようになり、市場が混乱してしまいます。大きく株価が上下することは、短期間で大きな利益が出ることもありますが、反対に短期間で大きな損失に繋がる可能性もあります。このような株価の乱高下を一定の値幅の範囲で抑え、市場の混乱を防ぎ投資家を保護するための仕組みです。

ストップ高・ストップ安が起きるとどうなる?

ストップ高、ストップ安になると、該当の銘柄はそれ以上の高値、安値での取引ができなくなります。そして、その際の約定は「ストップ配分」という方法で、制限値段に発注している証券会社ごとに注文数量を配分していきます。

また、ストップ高・ストップ安の状態でその日の取引が終了すると、翌営業日の取引はその終値からの値幅制限が適用されます。ただし、値幅制限を変更する場合もあります。

もしも保有銘柄が該当したらどうしたらいい?

保有銘柄がストップ高、ストップ安に該当した場合には、まずその要因を考えることが必要です。

例えば、新商品の開発や決算情報で業績が良かった場合など、プラスの情報が発表された場合には株価が上昇しストップ高になることがあります。また、TOB(株式公開買い付け)の発表などによってストップ高になることもあります。反対に、ネガティブな情報が発表された場合にはストップ安になりやすくなります。

保有する銘柄がストップ高、ストップ安に該当すると、すぐに売却した方が良いのではと考えてしまう方も多いのですが、そういった場合にはなぜ株価が上昇、下落しているのか、その要因を考えましょう。

事故や不祥事など、ネガティブな情報が発表されて株価が下がっても、その企業そのものの価値が低下するようなことでなければ一時的な下落である場合もあります。下落が一時的なものであるならば長期的には上昇することが考えられますので、保有を続けることが適切と言えるでしょう。反対に、急上昇している際にも、企業の価値以上に株価が上がっているようであれば今後下落も想定されます。

一時的な大きな価格の変動に惑わされて本来の企業価値を見誤り、感情的に判断してしまうと損失に繋がる可能性が高くなります。財務分析を行うこと、企業の置かれている業界の動向など、冷静に企業価値を分析して判断しましょう。

夜間の取引の場合はどうなる?

日中の取引との違いは?

通常、株式取引は取引所を経由して行われ、東京証券取引所は祝日を除く月~金の9:00~11:30の間、12:30~15:00の間で取引されています。この時間以外でも注文はできますが、約定するのは翌営業日の取引時間内です。

しかし、PTS(私設取引システム)を用いて、取引所を通さずに取引を行うことで時間外でも取引を行うことができます。ジャパンネクスト証券のPTSを利用すると、仕事の昼休みや仕事を終えた後の夜間(16:30~23:59)でも取引を行うことができます。

夜間取引の場合、値幅制限はその日の東京証券取引所の終値を基準として夜間取引の値幅が適用されます。つまり、日中の取引がストップ高で終わったとしても、夜間取引で翌営業日の取引が始まる前にストップ高を超えた価格で取引することが可能ということです。

夜間取引のメリットと注意点

夜間取引を行うメリットは、夜間でも取引を約定させることができることです。例えば、日中の取引時間を終えた後に業績の上方修正などが発表された場合、大きく株価が上昇する場合があります。特に海外の情報については時差により取引所の時間外に行われることも多くなりますが、夜間取引であれば時間外でも取引をすることができます。

また、PTSでは呼値(注文時の値段の刻み)が取引所に比べ小さく設定されているため、希望に近い値段で約定することも可能です。

このようなメリットがある一方で、夜間取引は参加する投資家が少なく、希望する注文が約定しないことも多くあり、値動きも大きくなりがちです。

また、夜間取引においての注文は指値注文に限定されますが、取引に参加する投資家が少なく、注文した指値、数量で成立しない場合も多くあります。指値注文は売買価格を指定し取引できるメリットの反面、指値での買い手、売り手がいなければ取引が成立しません。そのため、取引が成立せずに、売買のタイミングを逃してしまうことも注意が必要です。

事例①2020年7月9日 (株)大戸屋ホールディングス(銘柄コード:2705)

どんな状況だったか

(株)大戸屋ホールディングスは創業者である三森久実氏が死去した後、後継者問題から同社の株式20%を取得していた(株)コロワイドが、大戸屋ホールディングスを子会社化するために2020年7月9日(木)にTOB(株式公開付け)を発表しました。

TOB発表前の7月8日(水)の終値は2,113円でしたが、TOBが発表された9日(木)は2,613円とストップ高で始まり、ストップ高で取引を終えました。そして翌営業日の10日(金)の終値は3,050円となり、2営業日の間で1.5倍近くも上昇したのでした。

夜間取引市場でどのように動いたか

まずは前営業日では2,200円程度で推移しているのに対し、TOBが発表された9日(木)の15時以降では既に3,000円を超えるほどに上昇し、15時以降になり値幅制限を大幅に超えた水準で取引されているのがわかります。

事例②2022年8月12日 (株)ペッパーフードサービス(銘柄コード:3053)

どんな状況だったか

全国に急速に店舗を展開し話題を集めた「いきなり!ステーキ」を運営する(株)ペッパーフードサービスでしたが、コロナ禍以前より業績が低迷し、コロナ禍によって更なる悪化を受け、2022年8月12日(金)の取引時間終了後の16時に株主優待の廃止を発表、そして17時に前社長の一瀬邦夫氏の退任が発表されたのでした。

8月12日(金)の終値は386円でしたが、土日を挟み翌営業日の15日(月)は306円のストップ安から取引開始され306円の終値で取引終了、16日(火)の終値は278円となりました。

夜間取引市場でどのように動いたか

ペッパーフードサービスにおける、8月12日(金)16時の株主優待発表後の値動きについて見ていきましょう。
16時に株主優待廃止の発表を受けてすぐに翌日のストップ安にまで下落しそのまま翌営業日の取引を終え、そしてまた日中の取引時間を過ぎた16時頃になり大きく値下がりしているのがわかります。

このように、ストップ高、ストップ安の際に、夜間取引ではその日の値幅制限を超えた価格で取引され、また時間外に発表された情報に対しても反応し価格が動いていることがわかります。

また、ストップ高、ストップ安になるような大きな影響を与える重要な情報が発表された後には、流動性が低い夜間取引においても取引が成立しやすくなります。

株価に影響を与える情報をタイムリーに得ることができ、夜間取引を活用することで株価が大きく変動する前に売買することも可能です。

まとめ

今回はストップ高、ストップ安と夜間取引の値動き、メリット、デメリット等についても解説してきました。

日中の取引においてストップ高、ストップ安になり、翌営業日以降も上昇、下落が続く場合には夜間取引を利用し、翌営業日の取引開始前に取引することが可能です。

また、時間外に重要な発表が行われた場合にも、翌営業日の取引時間で大きな変動がある前に夜間取引を活用することができます。

取引時間外でも取引を行うことができるため、日中仕事で忙しく取引ができない方に活用していただくこともできますし、今回解説したようなストップ高、ストップ安、または株価に影響を与える重要な発表があった場合には、取引に活用してみると良いのではないでしょうか。
※あくまでも小川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、ジャパンネクスト証券株式会社が情報の正確性を保証するものではありません。
本記事に掲載されている全ての情報は、2022年11月30日時点の情報に基づきます。

お話を伺ったのは…

小川 洋平さん:
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 
合同会社clientsbenefit代表 / FP相談ねっと認定FP
保険営業時代に知識不足はお客様を不幸にしてしまうことを痛感しFPの知識を学ぶ。
FP資格取得後、保険商品の販売のためでなく、クライアントの立場で有利な制度の活用、金融商品や保険商品を選び、クライアントの豊かな人生のために最大限自分ができる提案をしたいという想いから相談業務を開始。
iDeCoやNISA制度を活用した資産形成の相談を得意とし、企業の経営再建の経験や自身の起業の経験から、経営者の資産形成を専門分野としている。
確定拠出年金講師、他講師経験多数、金融系メディアの執筆経験を持つ。

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