夜間取引

2022.08.22

Introduction

はじめまして。株式投資歴12年の個人投資家・藤川里絵です。株式投資をはじめたのは、ちょうどアベノミクスがスタートする直前なので、経験値が低くても、それなりに好成績でした。その後、チャイナショック、コロナショックと大きなショックに巻き込まれ、金銭的にも精神的にもそこそこダメージを受けながらも、株式投資の魅力に取り憑かれ、つねによい投資対象はないか、投資戦略はないか、そんなことばかりを考えながら日々過ごしています。

わたしの主な投資スタイルは、数週間から数ヶ月のスパンで売買するスイング投資と呼ばれるものです。決算報告や会社四季報でファンダメンタルを分析しつつ、テクニカルでタイミングを測り取引しますので、わりとアグレッシブな投資家と言えるでしょう。
ただし、株式投資はあくまでも趣味ととらえており、余剰資金の範囲内で楽しんでいます。資産運用のコアは、インデックス投信の積立で、老後の資金はもっぱらそちらにお任せしております。それくらいの緩い気持ちなので、なにがなんでも株式投資で儲けないと生きていけないという必死感はありません。逆にいうと、だからこそ株式投資を楽しめるとも考えられます。お金が増える(もちろん減ることもありますが)趣味なんてそうそうありませんよね。
株式投資の魅力は、お金が増えることはもちろんですが、経済や政治、その他日常のあらゆることに興味が広がることです。知識や経験が増えるにつれて、株式投資の成績も向上しますが、一方で、昨日まで通じたセオリーが突然くつがえされることもあります。つねに変化しているからこそ、飽きずに続けられているのでしょう。

こよなく株式投資を愛しておりますが、じつは夜間取引の世界には、まだ足を踏み入れておりません。PTS(私設取引システム)を使えば、夜間でも取引できるのは知っています。ときどきPTSで株価がどうなっているかチェックすることもあります。それでも今まで躊躇していたのは、24時間、株のことばかり考えてしまうのではないかという恐れからです。ただでさえ9時から15時までは、持株をどうしようか、何かいい銘柄はないか、などなど株のことばかり考えているというのに、この上、夜までそんな状態になったら日常生活に支障が出ます。つまりは”好き”ゆえに、あえて距離を置いていたのです。
しかし、昨今の株式市場は、夜動くといっても過言ではないほど、海外市場の影響を大きく受けます。米雇用統計や、消費者物価指数、はたまたFOMCなど重要イベントのたびに、保有株を持ち越すかどうか頭を悩ませなくてはいけません。その解決策として、経済指標の発表を確認してから、夜間取引で売買すればいいのでは?という至極当たり前の考えに至りました。

<夜間取引のしくみと夜間取引ができる証券会社>

ふんわりとした知識しかなかった夜間取引について、あらためてそのしくみを調べてみました。
夜間取引は、日中取引の主市場である東京証券取引所を通じてではなく、PTS(私設取引システム)を通じて行います。国内で、夜間取引ができるのは、現在はジャパンネクスト証券が運営するPTSのみです。

現在、夜間取引ができるネット証券は以下3社で、取引手数料は各社によって違います。
証券 SBI証券 松井証券 楽天証券
取引時間 16:30~23:59 17:00~23:59 17:00~23:59
取引手数料 無料 日中の国内株式手数料と同じ 日中の国内株式手数料と同じ
売買できる銘柄は、東京証券取引所に上場している普通株式とETF、REITなので、日中とほぼ変わりません。ただし、一部の銘柄に関しては、各証券会社が独自に売買を中止している銘柄もあるので注意が必要です。

<夜間取引のメリット>

夜間取引には、大きく3つのメリットがあります。
1、日中は忙しくて売買できない人も、落ち着いて取引できる。
日中の売買は、9時から15時までなので、多くの会社員の方はゆっくり板を見て売買するのはむずかしい。夜間取引なら、焦らず落ち着いて取引ができますし、お仕事に支障をきたしません。

2、取引所の立会時間後に株価に影響を与えうるニュースが出た時に、すぐに注文が出せる。
決算など、翌日の株価に影響を与えうるニュースは、おおむね日中の取引時間外に発表されます。通常であれば、決算が悪くて明日の株価は大きく下がるだろうと思っても、為す術もありませんが、夜間取引を利用すれば、一足先に売り逃げできる可能性があります。また逆に、よい決算が出た株は翌日株価が上昇する前に先回り買いするチャンスもあります。

3、海外の重要な経済指標が発表されたあとに値動きを確認してから取引ができる。
とくに最近は、海外の経済指標の発表を受けて、日本の株式市場が動くことが多くなってきています。発表前に持株をどうするか悩むところですが、夜間取引を利用すれば、経済指標を確認してから取引することができます。昼間売っておけばよかった、買っておけばよかったといった後悔を減らすことができますね。

<夜間取引のデメリット>

このように夜間取引のメリットは大きいのですが、現状利用している人は限られています。その理由は、大きく3つあります。
1、流動性が低い
日中の取引に比べると、夜間取引は参加者が少なく、売買が少ないため、注文を出しても、思うように約定しないことがあります。これが現状、いちばんのデメリットでしょう。

2、指値注文しかできない
とにかく売りたい、とにかく買いたいときに使う成り行き注文が、夜間取引では利用できません。指値注文しかできないことが、流動性を低くしている要因のひとつとも考えられます。

3、夜間の株価と日中の株価の乖離が大きい場合がある
夜間取引の時間帯では上昇していたのに、翌日の日中の取引では、下落して始まるといったことがあります。よいニュースが出て、明日は上がると思い先回りして夜間に購入したことによって、翌日大きな損失となってしまうという残念な結果になることも。夜間取引は、流動性が低いため、どちらかに株価が動くと、極端に一方向に傾いてしまい、価格が収れんしにくいことが多々あります。

<どんな人が利用しているの?>

夜間取引の利用者は、徐々に増えているものの、まだまだ一般的とはいえません。おそらく日中の株式取引をしている人のうちのほんの一握りの人ではないでしょうか?
逆に考えると、すでに利用している人の中には、ほかの投資家さんより先んじて投資行動を取ることができたり、とくに決算時に、夜間取引で大きな利益をあげている敏腕投資家さんもいらっしゃるのではないのでしょうか。
夜間取引では、流動性が低いため、好決算が出た銘柄は極端に上がり、悪材料が出た場合は、極端に下がることもあります。自分の保有株が好決算だった場合、夜間取引で期待以上に高く売り抜けたり、逆に、日頃からウォッチしていた株を、極端に安値で拾えたりすることがあります。そういった株価の動きを先読みする投資家さんにとって、夜間取引は格好のフィールドになります。

<もしも夜間取引をしていたら>

5月31日の日中の取引時間が終了したあと、メルカリ(4385)が、東証グロース市場から、東証プライム市場へ上場市場区分を変更すると発表しました。5月31日のメルカリの日中の株価の終値は2,129円、翌日の始値は2,279円と7%のギャップアップで始まりました。もし夜間取引で、翌日の始値より安く買えていたら、一晩で利益を得ることができました。
もしくはメルカリ株を保有していたとしたら、5月31日の夜間取引では2,349円の高値をつけていますので、その値段で売り抜けていれば、翌日を待って売却するより高く売り抜けられました。
もちろんこれは”たられば”ですが、夜間取引という手段を自分の投資手法に組み入れることで、より売買の選択肢が増え、有利な取引ができる可能性が広がるということです。これはトライしない手はないでしょう!
次回は、夜間取引を始める前の具体的な準備や、心構えについてお話しします。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載資料は当該企業が作成したものであり、ジャパンネクスト証券株式会社が情報の正確性を保証するものではありません。

本記事に掲載されている全ての情報は、2022年6月30日時点の情報に基づきます。

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