夜間取引

2023.04.13

今回お話を伺ったのは…

森口亮(もりぐち・まこと)さん

森口亮(もりぐち・まこと)さん

個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。
PTSという言葉を聞いたことはあるでしょうか?よく見ると、証券口座の注文画面にPTSの文字があるので探してみてくださいね!

森口さんよりご提供頂いた画面(SBI証券の株アプリ注文画面より)

PTSとは、Proprietary Trading Systemの略になっていて、一般的に売買されている東京証券取引所とは別の「取引施設」にて売買されるシステムのことを指しています。
このPTSですが、私が知っているかぎり、使っているよ!という方は少ないように感じています。
多くの方がすでに開いている証券口座(私はSBI証券がメイン口座)にて、何の手続きもなく使用することができるにもかかわらず、知らないが故に上手に利用できていない人が多いようです。
しっかりと理解していると、有利な時もあるので、今日はわたし自身がどのようにPTS取引を活用しているかについて解説をしていきます。記事を読みながら、PTSについてイメージができると思いますので、ぜひ一緒に考えていきましょう!

どういう時に使っているか?活用3パターン

PTS活用パターン①PTS市場も含めて最良価格で取引されるSOR注文で買い注文

「SOR(スマート・オーダー・ルーティング)注文」とは、複数の市場から原則として最良価格を自動で選択してくれる仕組みです。
例えばSBI証券の場合、「東京証券取引所」、「ジャパンネクストPTS」の第1市場(J-Market)および第2市場(X-Market)、「大阪デジタルエクスチェンジPTS(ODX)」の4つの市場で提示されているそれぞれの気配価格を見て、最も有利な価格が提示されている市場で自動的に注文を執行することになります。
さらに私が使用しているSBI証券の場合、SOR注文を選択し、PTS市場で注文が執行された場合には、東京証券取引所に出す注文よりも約5%手数料が安くなります。私のように取引回数が多い人にとって、1回のわずかな差が将来的には大きな差になってきます。
取引時には、基本、東京証券取引所に出ている気配情報をチェックしながら売買注文を出しています。この価格から大きくズレることはないので、買い(新規注文)については、自分が狙っている価格にSORで指値注文を入れておくことが多いです。通常通り、東証で取引されることが多いですが、PTSで有利な価格と手数料で購入できている場合もあります。
株の取引は、買いの値段が1円でも安く買えることが重要であり、SOR注文だと不利に働くことがないので、新規の買い注文にはSORを使っています。
現状、国内の証券会社で個人投資家のSOR注文に対応している証券会社は、
SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券の4社となっています。

PTS活用パターン②決算など、時間外の開示情報を受けての時間外取引

日本に約3800社ある上場企業の多くが、東京証券取引所の大引け時刻である15:00以降に適時開示情報を更新してきます。
決算発表であれば、事前に発表日がわかっているため、ある程度事前に対応ができるのですが、それ以外の開示情報(業績修正のお知らせなど)については発表日が決まっておらず、突発的に出てくる場合があります。そうなると翌営業日の寄り付きまで身動きが取れないことになります。
そんな時こそ、PTS市場での時間外取引をする場合があります。
PTS取引が使用できる証券口座(SBI証券など)で持っている株であれば、その日の時間外市場で売買を検討することができます。
ここで「検討」という言葉を使っているのは、東証の取引時間外のPTS市場の参加者は日中取引に比べて少ないために、価格が一方向に偏りやすい傾向があるためです。例えば、悪材料を受けて時間外で株価が大幅安しているからと言って、翌日の寄り付きでは上昇スタートなんてことも見られます。
PTS取引は日中8:20から16:00まで、夜間は16:30から23:59まで取引可能なので、まずは出てきた開示情報を丁寧に読み取って、PTS市場の気配情報を見て、その上で必要に応じて売買を検討することが多いです。
現状国内の証券会社の中で個人投資家向けの時間外取引に対応している会社は、
SBI証券、楽天証券、松井証券の3社となっています。

PTS活用パターン③いつかは取りたい!連続ストップ高後の時間外で売り抜ける!

10年を超える長い投資経験の中でも数回しか遭遇したことはないのですが、PTS取引の大きなメリットの恩恵を受けたことがあります。
それは、「保有株がストップ高した日の時間外での利益確定」です。
これはPTSの話ではないのですが、「制限値幅」というルールをご存知でしょうか?
東京証券取引所が設けているルールで、急速な株価変動を避けるため、1日の株価変動幅を一定範囲に制限しています。制限値幅の上限まで達することを「ストップ高」と呼びます。ただし、大きなポジティブサプライズが起きた場合、1日の制限値幅の中では価格修正が消化されず、数日間ストップ高が続くこともあります。
持っている株が連続ストップ高になることは、ホルダーとしてはうれしい悲鳴ではありますが、短期間での急上昇で目立ってしまったが故に、この短期的な流れに乗りたい個人投資家の買いが流れ込み、過熱感を帯びてしまい、値動きが荒くて非常に売り時に悩むことがあります。
ここで活用したいのが、PTSの夜間取引(16:30〜23:59)です。
なんと、東京証券取引所の取引終了後のPTSの夜間取引は、翌日分の制限値幅で取引されるルールになっています。目立った材料がない日の時間外市場は、取引量が少なくてなかなか時価で取引することが難しいのですが、さすがにストップ高後とあれば注目度も上がっているため、流動性が高くなり、時価で取引しやすくなります。
当日は、ストップ高だとしても翌日がまたストップ高になるとは限りません。
そんな時に翌日の制限値幅となった時間外でさらに値上がりしていて、目標株価まで届いているのであれば、翌日の寄り付きを待たずに売却をできたことが過去に2回ほどあり、非常に大きな利益につながりました。
さらに、現状のルールでは2日以上連続でストップ高(条件あり)した場合には、翌営業日には制限値幅が4倍に拡大になる特別処置が行われます。
わかりやすい例で考えると、昨日と今日連続でストップ高まで値上がりして1,000円になった株があったとします。
通常ルールでは、終値±300円が翌日の制限値幅になるので、1,300円までしか上がらないはずですが、特別処置により上限300円が4倍拡大となり、ストップ高水準は+1200円に。なんと1日で2,200円(+120%)まで上がる可能性が出てきます。
なんとも夢がある話ですよね!
滅多に起きることではないからこそ、こういった事例をぜひ知っておくことが大切です!

PTS取引使用上の2つの注意点

ここまでPTS取引の活用例を見てきましたが、同時にいくつか取引上の注意点もあるので、おさらいも兼ねて確認しておきましょう!

①流動性が低いため、気配情報を見て注文を入れよう

ここまで、活用例を見てすでに気がついているかもしれませんが、PTS取引はあくまでも私設取引システムのみでの取引ですので、流動性がとても低く、PTS市場のみの気配情報を見ると値が大きく飛んでいる場合が多いです。
メイン市場が動いている時間帯はSOR注文を使うことでPTSを併用することができ、より有利な価格での取引機会を狙えますが、時間外(15:00以降)ではPTSのみでの取引となるため、気配情報をきちんと確認した上で注文を出さないと思っていた価格と売買価格が大きくずれてしまった!となりかねません。
合わせて、気配情報の正しい見方も確認しておきましょう!

②便利な注文方法が使用できない

私の活用例で、SOR注文で買い指値注文を入れる方法をご紹介しましたが、売り注文の時にSOR注文を使わない場合も多いです。
特に短期取引の場合は、新規注文約定後にすぐに決済のための予約注文を入れています。その注文がOCO注文(SBI証券の場合の名称)といって、利益確定の指し値注文と損切りの逆指し値注文を同時に入れることができる便利な注文方法になります。
ただし、この注文方法はSOR注文では利用できないことになっています。なのでこの便利な注文方法を活用したいという場合には、SOR注文は使えないということです。
なお、通常注文と言われる、指値、成行、逆指値注文は使えます。
ここまで読んでいただいた方の中には、PTS使ってみようかな?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、使用するためにはPTS取引が使用できる証券口座を開設する必要があります。
2022年12月現在、個人でPTS取引が可能な証券会社は、SBI証券、楽天証券、松井証券、auカブコム証券、マネックス証券の5社のみとなっています。
また、時間外取引が可能な証券会社となるとSBI証券、楽天証券、松井証券の3社のみとなっています。
個人投資家としては、ネット証券最大手のSBI証券や楽天証券で使用できるのがありがたいですね。

まとめ

ということで、今回はPTS(私設取引システム)についての活用例について書いてきました。
この記事の中で私が伝えたかったことは、主に3つです。
・PTSという仕組みがどんどん広がってきている
・大手ネット証券口座を開設すれば誰でも活用可能
東証の取引時間中はPTSを併用することで有利な価格での取引が狙える

SOR注文をよく知らずに使っていて、実はPTSで取引したことがあった、なんて人が多いんじゃないかなと思っています。
ご覧いただいた投資家さんの中での、SOR注文や時間外取引という選択肢が増えていれば嬉しく思います。
※あくまでも森口さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。また、引用の掲載画像は、森口さんがご同意の上、森口さんご自身からご提供いただいた画像であり、ジャパンネクスト証券株式会社が情報の正確性を保証するものではありません。
本記事に掲載されている全ての情報は、2022年12月21日時点の情報に基づきます。

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