大引け後はどんな値動きがある?日本株を夜に取引してみよう
夜間取引市場の魅力をご存じでしょうか。9時から11時30分と12時から15時の場中に日本株の取引をする人がほとんどですが、ジャパンネクスト証券のPTSでは大引け後から夜間まで取引ができ、決算発表や重要なニュースにもいち早く対応することができます。今回は、夜間取引の具体的な活用法として、実際に値動きが見られた銘柄を紹介。主市場である東京証券取引所が閉まった後の夜に、どのように取引ができるのかを解説します。
今回お話を伺ったのは...
西崎 努(にしざき つとむ)さん:2007年に日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、その後海外研修に抜擢。2017年4月に独立し、リーファス株式会社を設立。
金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。楽天証券メディア「トウシル」ではコラム連載やYouTubeにレギュラー出演する他、メディアヘの寄稿多数。東証JPXで講師を務めるなど、外部講師の経験も豊富。
著書に「老後資産の一番安全な運用方法 シニア投資入門」がある。
HP:リーファス株式会社 (
https://refas.co.jp)
初めにおさらい。「PTS (Proprietary Trading System: 私設取引システム)」とは、取引所以外で有価証券を売買できる取引施設です。主市場である東京証券取引所(東証)とは異なる刻み値や売買単位、注文方法や取引時間外での取引が可能です。
現在、日本では
ジャパンネクスト証券とCboeジャパン、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の3社がPTSを運営しています。
夜間取引市場の魅力とは
夜間取引市場の魅力は「夜に取引ができる」ことです。
✔ 大引け後に行われる日本企業の決算発表後に取引ができる
✔ ストップ高・ストップ安で引けた株価の値幅制限がリセットされた後に取引ができる
✔ 米国の経済指数発表後に取引ができる(運営時間中の発表に限る)
ジャパンネクスト証券のPTSは、8時20分から16時00分、16時30分から23時59分と、東京証券取引所と比べると長い時間運営されています。(16時00分から16時30分の間はお休みです。)
夜間取引の活用法
では、夜間取引はどのように活用できるのでしょうか。
引け後に株価に影響を与えるような重要なニュースなどが発表された場合、翌営業日の株式市場が開く前に売買ができることがPTSの一般的な活用法と言えます。さらに、夜間取引時間中に思わぬ株価の乱高下があった時には、株式を予想よりも高く若しくは安く売買できるチャンスもあります。
今回は、筆者が株価を追いながら、実際に夜間取引の時間帯に値動きのあった銘柄を見ていきます。
プレスリリース後に株価が上昇
ピアズ(7066、東証グロース)
2022年4月15日大引け後の17時に、プレスリリースを発表。約98兆円規模のメタバース市場へM&Aを活用し参入、ライブ&コマース事業を開始するとし、同社ならびに株式会社クシムは、3日前の4月12日に株式会社イーフロンティアの株式の取得(譲渡)のための調印を実施、5月1日には株式譲渡を実施予定で、ライブエンターテイメント(興行事業)、ファンコミュニティー(会員事業)、グッズコマース(物販事業)の事業展開を進めていくと発表。
※参照:プレスリリース:ピアズグループ、約98兆円規模のメタバース市場へ参入〜ライブ&コマース事業を開始〜
<夜間取引市場の価格推移について>
4月15日の引け後は特に動きはありませんでしたが、プレスリリースの発表と同時に株価が大きく上昇しました。その前の週の4月7日にピアズの子会社が複数のフードデリバリーサービスを提供するというニュースがあり株価が急騰しましたが、4月12日にイーフロンティアを連結小会社化することが発表され、株価は一段高となり、株価も大きく乱高下していました。
重要なプレスリリースが発表された銘柄は夜間取引市場でも取引が行われやすく、高値で売却できたり、安値で買付することができたりすることもあるなど、投資機会が多くあることが伺えます。
業績予想の上方修正発表後に株価が上昇
マルマエ(6264、東証プライム)
2022年4月15日大引け後の15時に、業績予想の上方修正を発表。2022年8月期の連結売上高予想を72億円から83億円(増減率15.2%増)、同営業利益予想を18億円から23億円(増減率27.7%増)に見直した。半導体分野での部品不足による生産低下の影響が限定的で不透明感が後退したことに加え、FPD(フラットパネルディスプレイ)分野ではシェア拡大による受注増加、さらに太陽電池向けの売上高が伸びた。
また同時に4億円を上限に20万株(自己株を除く発行株式総数の1.56%)を2022年4月18日から2022年5月17日の間に自己株式を取得することを発表。これが好感され、夜間取引市場で株価が大きく上昇。
※参照:マルマエHPのIR情報「4/15業績予想の修正に関するお知らせ」「自己株式取得事項の決定に関するお知らせ」
<夜間取引市場での価格推移について>
4月15日の決算発表直後にPTS市場で株価が大きく上昇した後は、出来高が増えても株価の動きはほとんどありませんでした。しかし翌営業日の4月18日の始値は夜間取引市場の最終取引価格よりも安い値段が付きました。4月18日の日経平均株価は前日比で下落して軟調となり、マルマエの株価も同日は2,214円で引けています。
しかし、その翌営業日の4月19日には2,364円まで上昇、4月15日の夜間取引市場の高値2,318円を超えました。出来高こそ少ないものの、夜間取引市場の価格推移は日中の売買価格動向の参考になる値動きとなりました。
自社株式の取得と消却の発表後に株価が上昇
TSIホールディングス(3608、東証プライム)
2022年4月18日大引け後の15時に、自社株買いと消却を発表。上限を600万株(発行済み株数の6.56%)、または20億円としており、取得期間は2022年4月19日から2022年12月30日まで。経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行や株主還元策の一環として実施するとし、あわせて、これにより取得した全ての自社株は2023年1月31日付で消却すると発表。
また、この発表の後にスポーツブランド大手アルペンが同社の株式を3.7%取得したことを発表しており、この点も好感された模様。
※参照:TSIホールディングスHPのIR情報「自己株式の取得に係る事項の決定及び自己株式消却に係る事項の決定に関するお知らせ」
<夜間取引市場の価格推移について>
TSIホールディングスによる自社株買いと消却の発表直後に株価が大幅に上昇しましたが、売り板が薄く出来高が増えず、夜間取引市場の最終取引価格は300円に落ち着きました。直前の数日間で大きく株価が下落していたこともあり、翌営業日4月19日の始値298円に対して292円まで売られるところがありましたが、高値は310円まで上昇し、300円で引けています。
このように、株価の上昇に影響を与えるかもしれない情報が出る前に下落が続いていた銘柄は、反発時に一時的な売りも出やすいため、夜間取引市場での株価推移を見ていれば、翌営業日の安値は買いの好機と予測しやすい値動きでした。
業績予想の上方修正発表後に株価が上昇
塩水港精糖(2112、東証スタンダード)
2022年4月19日大引け後の16時に業績予想の上方修正を発表。2022年3月期の連結売上高予想を233億円から251億円(増減率7.7%増)、同連結営業予想を4.5億円から8.1億円(増減率80.0%増)に見直したことで、前期比の減益率が52.1%減から16.9%減に縮小する見通しとなった。
外食産業や土産品向けの販売が回復に転じたことから当初の予想に対して増収となる見込みとなり、また、原糖の買付が適正価格で行えたことや、製造コストの低減により、上方修正となった模様。
※参照:塩水港精糖HPのIR情報「業績予想の修正に関するお知らせ」
<夜間取引市場の価格推移について>
4月19日の夜間取引市場では株価が急騰しましたが、230円で引けています。業績予想は上方修正ですが、継続して減益であることは変わらず、翌営業日の始値は230円でも高いと判断されてその後株価は下落しています。
夜間取引市場での売買が上方修正に反応しすぎたといえますが、逆に同社株式を保有していた投資家にとっては株価が下がる前に高値で売ることができた好機となったのではないでしょうか。
業績予想の上方修正及び期末配当予想の修正を発表後に株価が上昇
オプティマスグループ(9268、東証スタンダード)
2022年4月20日大引け後の15時に、業績予想の上方修正及び期末配当予想の修正を発表。2022年3月期の連結売上高を430億円から455.7億円(増減率5.9%増)、同連結営業利益を28億円から30.7億円(増減率9.6%増)、純利益が24億円から25.4億万円(増減率5.8%増)と発表。また、70円を予定していた期末配当を85円に増額すると発表し、年間配当は140円となった。
同グループの事業拠点であるニュージーランドの経済がコロナウイルスの影響から回復傾向となり、戦略的成長市場と位置付けられるるオーストラリアの経済も同様に回復傾向にあり、中古車市場は旺盛な需要を維持。価格上昇と利上げによる円安が売上高及び最終利益を押し上げた。
※参照:オプティマスグループHPのIR情報「2022年3月期連結業績予想及び期末配当予想の修正に関するお知らせ」
<夜間取引市場の価格推移について>
4月20日の夜間取引市場の最初の取引価格は938円とすでに株価が大きく上昇していますが、上方修正に加えて配当の増額もあり、夜間取引市場では株価が一段高となりました。決算発表直後に株価が急騰すると、そこが適正水準もしくは高値と判断されがちですが、決算発表の内容によってはさらなる株価の上昇が期待できる事例となりました。
同業他社の株式取得と子会社化発表後に株価が上昇し、ストップ高に
サイバーステップ(3810、東証スタンダード)
2022年4月20日大引け後の15時30分に、インターネットゲーム等配信事業を手掛ける株式会社ネッチの全株式を取得し、子会社化すると発表。同社は、PlayStation4で初のオンラインクレーンゲームとなる「ネットキャッチャー ネッチ」を運営。今回の株式取得による子会社化によるシナジー効果が期待され、連日ストップ高気配となる。
※参照:サイバーステップHPのIIR情報「子会社の異動を伴う株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
<夜間取引市場の価格推移について>
日中の売買高が少ない日でも、夜間取引市場には注文が出され、翌営業日の寄付き前に取引が成立。その後も株価の上昇が続き売買高が増えました。
ストップ高になるということは、その銘柄の買い需要を市場が吸収できていないということです。夜間でも積極的に売買が行われ、株価の動きが上下しやすくなった結果、日中は望む価格で売買できなかった銘柄を売買しやすくなった事例でした。
『夜間取引市場に潜む投資の好機を捉えよう!』
この記事では、16時30分から始まるジャパンネクスト証券の夜間取引市場の活用方法について紹介してきました。
夜間取引市場は、日中と比べると取引参加者の数は少なく流動性が低くなってしまいますが、株価に影響を与えるような決算発表や重要なニュースなどが出ると夜間取引市場は活性化する傾向にあり、翌営業日の始値も夜間取引市場の値動きを反映していることがほとんどです。
夜間取引市場を活用して、日中には見つけられない投資機会を発掘してみて下さい。
『株式投資をしている人の方が投資の理解が深い』
最後に、西﨑努様より投資についてアドバイスを頂きました。
最近は、NISAやiDeCoで資産形成をしようと投資信託を利用する人が急激に増えていますが、投資知識や経験を貯めるためには、身近な企業が多い日本株への投資が一番だと私は実感しています。実際に相談者様と話をしていると、積立投資しかしていない投資家よりも、株式の個別銘柄へ投資をしている人の方が圧倒的に投資への理解が深いと感じています。
さらに単に主市場で日本株へ投資するだけではなく、PTSの夜間取引市場をうまく活用することで、決算発表や重要なニュースが出た時も、翌日の主市場が始まるのを単に待つのではなく、他の投資家より先んじて株価の変化にも対応することができるため、投資の好機をいち早く捉えることができます。
すでに夜間取引を利用して日本株を売買している人は引き続き注目し、まだ利用していない人もこれを機に日中とは異なる市場環境で日本株を取引してみてはいかがでしょうか?
※あくまでも夜間取引市場において株価が大きく動いた銘柄の例示であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業を紹介し、特定の個別銘柄を推奨しまたは取引を誘引するものではありません。
また、本記事に掲載されている全ての情報は、2022年6月21日時点の情報に基づきます。