よるかぶコラム

2023.04.13

ジャパンネクスト証券CEOが解説!そもそもPTSって?【前編】

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よるかぶラボをご覧の皆様、はじめまして。
ジャパンネクスト証券CEOの山田と申します。私自身証券会社歴は長いのですが、金利部門およびリスク管理部門での勤務が長かったせいで、数十年ぶりに戻ってきた株式取引の世界はまさに隔世の感がありました。
1998年まで日本株は証券取引所での取引が義務付けられていましたし、取引もネットではなく電話が基本でした。なお、この1998年は、当時の橋本内閣が金融ビッグバンという、日本の金融を世界水準に一気に追いつかせるという大胆な自由化を含む改革を行った年です。その一部として法律(当時は証券取引法、現在の金融商品取引法)の大改正も行われ、株式などの上場有価証券の取引が、証券取引所を介さずに取引をすることが可能になりました。その結果として、取引所ではない取引所的な取引施設であるPTSの設立が可能になったわけです。

PTSとは何か

PTSとはProprietary Trading Systemの略で、一般的に私設取引システムと訳されています。金融商品取引所を介さずに有価証券を売買することができるシステムを意味します。
日本におきましては、前述の通り1998年に解禁されましたが、海外(米国その他)におきましては、もっと早い時期から存在しておりました。
米国では1960年代からAlternative Trading System (ATS) もしくは Electronic Communications Network (ECN)と呼ばれる私設取引システムが存在しておりました。一方、欧州では日本より少し遅れて2007年よりMultilateral Trading Facility (MTF)と呼ばれる私設取引システムが法令により認可されました。
そのほかに、ダークプールと呼ばれるブローカーである証券会社が運営するシステムもありますが、これは証券会社内のシステムで顧客同士もしくは顧客と自己勘定を付け合わせて取引を成立させるものであり、取引の匿名性が高く、価格や注文量などの取引内容が外部から見えにくいことからダークプールという名がついたものです。その透明性の低さから、一般投資家の利用を禁止している国もあります。なお、PTSは取引の透明性に関しては、取引所と同等になっています。
細かい法令上のお話はさておき、欧米と日本との最大の違いは、私設取引システムと取引所の競争環境の整備です。欧米においては、そもそも市場間競争の活性化への取り組みが盛んで、結果的に、私設取引システム全体のシェアも取引全体の3割程度を占めていると言われています。日本においては、従来の伝統的な取引や取引所集中義務を前提とした制度が残っているのが実態であるため、まだ取引所のシェアが9割程度あり、PTSのシェアは全体で1割程度にとどまっています。すなわち、我が国は市場間競争が始まったばかりのステージだと言えます。

日本におけるPTSの歴史

下の表は金融庁金融審議会の資料を抜粋したものです。
資料の全体は金融庁のHP(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market-system/siryou/20220121/01.pdf)で見ることが可能です。

《日本における取引所とPTSの変遷》

金融ビッグバンを受けて、多くの証券会社がPTSに参入しましたが、残念ながら取引所の牙城を崩せずに大半は撤退していきました。当時のPTSは主に取引所が取引を行っていない夜間に、ブローカーである証券会社が自らの顧客のために付け合わせを行うという形態のものがほとんどでした。
その後2007年に夜間取引からスタートしたジャパンネクストのPTSは、2008年10月より昼間の取引も開始し、取引所との本格的な競争を開始しました。小数点以下の呼び値の刻みや特殊な注文執行条件(IOCやFOK等)を取引所に先駆けて導入し、投資家の皆様のニーズを取り入れて、事業規模を少しずつ拡大してきました。その後、信用取引の解禁を含む、いくつかの規制緩和が行われ、現在ではいくつかの重要な点を除いて、取引施設として取引所とほぼ対等な競争ができるフレームワークは出来つつあります。
金融審議会のワーキンググループの議論におきましても、取引所が投資家のためにいろいろ取引方法の改善等を行うことに至ったのは、PTSがイノベーションを喚起したからだという委員からの発言もありました。また取引所とPTSが一体となって日本市場を構成しているという見解も公式に報告されております。そのような観点から、私はPTSの社会的責任も高いものが求められていると痛感しております。その中でも夜間取引を行っている取引施設は当社だけですので、これをさらに投資家の皆様が使いやすく、かつ公正性や透明性を確保したものにすることは、当社の責務でありますし、そのために努力することは当然のことだと考えております。今後とも、ジャパンネクストのPTSをよろしくお願いいたします。
(後編に続く)
ジャパンネクスト証券株式会社 CEO 山田正勝(やまだ・まさかつ)

ジャパンネクスト証券株式会社 CEO 山田正勝(やまだ・まさかつ)

1989年に慶應義塾大学卒業後、野村證券、パリバ証券(現・BNPパリバ証券)において主に金利ビジネスなどを担当。1999年に金融監督庁(現・金融庁)に入庁し、金融検査や各種マニュアル作成に従事。その後、BNPパリバ証券およびみずほ証券におけるリスク関連のシニアポジションを経て、2015年にSBIジャパンネクスト証券株式会社(現・ジャパンネクスト証券株式会社)に入社。COOを経て2020年より現職。

PTSを支える技術

(後編でご紹介)

テクノロジー

マーケットメーカー

PTSの今後

(後編でご紹介)

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