株式

2026.08.19

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

9月は3月に次ぐ「配当・優待の季節」

株式投資をしていると、9月末は優待・配当がたくさんもらえるという話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
9月に権利確定する株主優待は約450銘柄。1年の中では3月に次いで2番目に多く、食事券やカタログギフト、QUOカードなど、バラエティに富んだ銘柄が揃っています。さらに、9月は3月決算企業の中間決算月にあたるため、配当金も受け取れる銘柄が多く、優待と配当の「ダブルメリット」が狙える季節です。
こうした背景から、9月の権利確定に向けて株価が上昇しやすいアノマリーがあることが知られています。今回はこの先回り買い戦略について、しくみから具体的な銘柄事例、注意点まで詳しく解説します。

まず押さえておきたい「権利確定日」のしくみ

配当や株主優待を受け取るには、権利確定日に株主名簿に名前が載っている必要があります。ただし、株式を買った翌日から株主になるわけではありません。
日本の株式市場では、売買成立から受け渡しまでに2営業日かかります。そのため、権利確定日の2営業日前(権利付最終日)までに買い付けを完了しておく必要があります。2026年9月は、権利付最終日が9月28日(月)となる見込みです。
この日を過ぎてから買っても、今期の配当・優待は受け取れません。9月末までに買えばいいと思っていると乗り遅れる可能性があるので、要注意です。

「先回り買い」とはどういう戦略か

先回り買いとは、権利確定日に向けて株価が上昇するタイミングを見越し、早めに買い付けておく投資戦略です。
なぜ権利確定前に株価が上がりやすいのでしょうか。理由はシンプルで、優待や配当をもらいたいという投資家の買いが権利付最終日に向けて集中するからです。需要が増えれば株価は上がります。この動きを先読みして、みんなが買い始める前に仕込んでおくのが先回り買いの発想です。
では、いつ頃から仕込めばよいのでしょう。一般的には1~2か月前、つまり7~8月が仕込みの目安とされています。特に人気の優待銘柄ほど早く動く投資家が多いため、遅くとも8月中には候補銘柄に目線を向けておくのが得策です。
過去の事例を見ると、人気の優待銘柄では権利付最終日の1~2か月前から株価がじわじわと上昇し、権利付最終日の直前にピークを迎えるパターンがよく見られます。そして権利落ち日(権利付最終日の翌営業日)には、配当・優待分を反映するように株価が下落するのが一般的です。
わたし個人の立ち回りとしては、7月末から8月中旬には3月決算銘柄の第1四半期の決算発表があるため、その時期が終わってから購入を検討します。なぜなら配当・優待狙いで早めに先回りしても、決算発表で株価が大きく下がってしまうとダメージが大きいからです。

先回り買いで狙いやすい銘柄の条件

すべての9月優待銘柄が先回り買いに向いているわけではありません。特に狙いやすい銘柄には共通点があります。
それは、優待内容がわかりやすく人気が高いことです。食事券・QUOカード・カタログギフトなど現金に近い価値のある優待は、個人投資家からの需要が集まりやすく、株価上昇の動きが出やすい傾向があります。さらに、配当利回りも高ければなおよく、目安として4%以上あると先回り買いの対象として意識されやすいです。また、売買代金が少ない銘柄は売りたい時に売れないリスクがあるため、ある程度の流動性があることも重要です。

【事例紹介】9月優待の人気銘柄3選

オリエンタルランド(4661):今年は「特別優待」で例年以上に注目
ご存知、東京ディズニーランド・ディズニーシーを運営する会社で、株主優待の1デーパスポートは根強い人気を誇ります。通常の9月にもらえる優待は100株を3年以上継続保有(株主名簿への連続7回以上の記載)が条件ですが、2026年9月30日基準日に限り「上場30周年記念特別優待」として、保有期間に関係なく100株以上を保有する株主全員に1デーパスポートを1枚追加で贈呈する特別措置が発表されました。
通常はハードルが高い銘柄だけに、今年は短期保有でも優待が取れるという点で例年以上に先回り買いの対象として意識されやすい状況です。
ヤマダホールディングス(9831):手頃な投資金額で使いやすい優待券
全国展開の「ヤマダ電機」グループを運営する企業。株主優待はグループ店舗で使える買物割引券で、100株以上で3月500円分・9月1,000円分、500株以上で3月2,000円分・9月3,000円分が受け取れます。9月のほうが有利なこともあり特に人気です。
家電を定期的に購入する方には実用性が高く、株価が比較的手頃(8月現在で680円)で単元株(100株)での投資金額も抑えやすいことから、幅広い個人投資家に意識されやすい銘柄です。
日本管財ホールディングス(9347):カタログギフトで長期保有優遇あり
ビル管理・施設管理を手がける安定収益型の企業。株主優待は年2回(3月・9月)のカタログギフトで、3年未満の保有で年2回各2,000円相当、3年以上の継続保有で年2回各3,000円相当にグレードアップします。3年以上保有した場合の総合利回りは4%超となります。長期保有で優待が充実する仕組みのため、今から仕込んで長期保有を狙うスタンスの方に向いている銘柄です。
この3銘柄はそれぞれ性格が異なります。オリエンタルランドは今年限定の特別措置で例年以上に注目が集まっている銘柄、ヤマダHDは手頃な金額で使いやすい優待が魅力の銘柄、日本管財HDは長期保有で育てていく銘柄――という具合に、自分の投資スタイルに合わせて選ぶのがポイントです。

要注意!増加する「長期保有」条件

先ほどの日本管財HDの例でも触れましたが、近年は株主優待に継続保有の条件を設ける企業が増えています。たとえば「1年以上保有の株主に限る」「3年以上保有で優待内容アップ」といったルールです。
この条件がある銘柄を権利付最終日ギリギリに買っても、今期の優待は受け取れません。株主名簿への記載が複数回必要なケースが多く、場合によっては今すぐ買い始めても来年以降しか優待をもらえないこともあります。
なぜ企業はこうした条件を設けるのでしょうか。権利確定後すぐに売る投資家が増えると、権利落ち日に株価が急落する動きが激しくなります。長期保有の条件を付けることで、真の長期株主を優遇し、株主構成を安定させたいという企業の意図があります。先回り買いを検討する際は、必ず優待の条件を事前に確認しましょう。

先回り買いの注意点:「権利落ち」を理解する

先回り買いで最も理解しておきたいのが「権利落ち」のリスクです。
権利落ち日には配当実施分だけ株価が下落するのが一般的です。権利付最終日に買い、権利落ち日に売ることで優待・配当を効率良く取得しようとする投資家もいますが、買い付ける時の株価が予想外に高くなったり、売る時の株価が予想外に安くなったりと、相当額の売却損が出てしまうケースもあります。ノーコスト・ノーリスクで株主優待や配当を享受することは難しいと言えます。
先回り買いで利益を出すには二つのシナリオが考えられます。一つ目は権利確定前の株価上昇で利益を確定するパターンで、権利付最終日の前に売ってキャピタルゲインだけを狙う方法です。この場合、優待・配当は受け取れませんが、権利落ち後の株価下落リスクを避けられます。
二つ目は権利確定後も長期保有を続けるパターンで、業績が良く株価の長期的な上昇が期待できる企業なら、権利落ち後の下落を一時的なものと割り切って保有を続けることで、優待・配当+株価上昇の両方を享受できます。

まとめ:先回り買いは「業績確認」とセットで

9月の先回り買い戦略は、うまくハマれば短期間でリターンを得られる興味深い戦略です。ただし株価が上がるかどうかは優待・配当の魅力だけでなく、企業の業績や市場全体の地合いにも大きく左右されます。
わたしが投資する際に常に意識しているのは、優待・配当は企業の実力の結果であって、目的ではないということです。配当や優待が魅力的でも、業績が悪化すれば減配・優待廃止のリスクがあります。先回り買いを検討する銘柄は、必ず業績もセットで確認するようにしてください。
9月の権利確定まで、まだ時間はあります。候補銘柄をじっくり絞り込んで、納得のいくタイミングで仕込んでみてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年8月7日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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