本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
3月18日に会社四季報春号が発売されました。わたしは毎号、全ページを読み込む際に気になったキーワードに付箋を貼っていくのですが、今回の春号では「GIGAスクール第2期」という言葉があちこちに登場し、付箋の色を変えるほど目を引きました。
また、企業コメント欄には「IR強化」という言葉が散見されるようになっており、これも時代の変化を感じさせる動きです。
今回はこの2つのテーマについて深掘りしてみます。
ただし1点だけ先にお断りしておくと、四季報春号の記事は、米国によるイランへの攻撃が本格化する前に執筆・編集されたものです。そのため、今後の中東情勢によっては業績予想が修正される可能性があります。エネルギー価格の変動や円相場への波及を念頭に置きながら、なるべくその影響を受けにくい業界・企業を選んでいくことが、今年の四季報活用の重要なポイントになりそうです。
テーマ①「GIGAスクール第2期」
GIGAスクール第1期って何だったの?
コロナ禍の2020~21年、「子どもたちにタブレットを1人1台配ろう!」という国の大号令があったことを覚えていますか? これがGIGAスクール構想の第1期です。OECD加盟国の中で学校でのデジタル機器活用時間が最下位だった日本が、一気にICT環境を整備した一大プロジェクトでした。当時中学生だった娘にもiPadが配られました。
その流れを受け、教育関連のICT銘柄が軒並み急騰したことを覚えている方も多いのではないでしょうか。その後、端末の配備が完了するとテーマとしての熱が冷め、「GIGAスクール」という言葉も株式市場からいったん姿を消していきました。
第2期は「ハードの更新」+「ソフトの深化」
NEXT GIGA(GIGAスクール構想第2期)とは、単なる環境整備から活用の深化へと焦点を移す重要な取り組みです。
第1期で配布された端末は耐用年数(4~5年)が過ぎ、バッテリーの劣化や故障のリスクが高まっています。そのため第2期では、2024年度から2028年度までの5年間で計画的な端末更新を進めていきます。しかも、更新の波は今まさにピークを迎えています。端末の更新台数は2025年に474万台、2026年に455万台という規模で、平均端末単価5万円で計算すると、市場規模は概算4,645億円にのぼると見込まれます。
また今回の第2期には、第1期と異なる大きな特徴があります。それは、ソフト面の強化です。2026年度から4年間かけてパブリッククラウドを前提とした次世代校務DX環境への移行を順次進め、都道府県単位での校務支援システムの共同調達を推進する方針が打ち出されています。つまり、ハードウェアの買い替えにとどまらず、教育現場全体のDXが本格的に進んでいくということです。
四季報春号に登場したGIGAスクール関連企業
実際に四季報春号をGIGAスクールのキーワードで検索すると、実に多くの企業の記事欄に登場しています。いくつかご紹介しましょう。
チエル(3933)は小中学校から高校・大学・専門学校向けに授業・講義支援システムやデジタル教材を提供する、まさにGIGAスクール関連の本命企業。四季報コメントには「GIGAスクール関連販売が想定超」と記載されており、好調が続いています。
すららネット(3998)は公立校でのGIGAスクール第2期の需要拡大を受け、「大規模自治体の開拓が進む」とコメントされています。家庭向け・塾向けとは異なる学校向けの事業が成長ドライバーになりつつあります。
テクノホライゾン(6629)は映像・IT分野でGIGAスクール第2期特需が期待され、「27年3月期も特需続き、ICT機器稼ぐ」との記載があります。
内田洋行(8057)は「GIGAスクール更新で下期ピーク」との記載があり、更新需要をしっかり取り込む見通しです。
ミライト・ワン(1417)は通信向け工事でドコモ関連が好調なうえ、「ICTのGIGAスクール案件貢献」とも記載されており、インフラ面からGIGAを支える企業です。
デジタルアーツ(2326)はWebフィルタリングで知られており、四季報オンラインのプロフィール欄には「GIGAスクール構想では子ども向けタブレットの大半に当社のフィルタリング製品が導入され、事業拡大に弾み」との説明があります。セキュリティ面での第2期需要も見逃せません。
第1期のGIGAスクール相場では、端末販売などのハード系企業への注目が中心でしたが、第2期は教育コンテンツ・クラウドサービス・セキュリティ・ネットワーク工事と、恩恵が多方面に広がっているのが特徴です。
テーマ②「IR強化」——企業が個人投資家の「ファン」を増やし始めた
IRって何のこと?
IR(インベスター・リレーションズ)とは、企業が投資家に向けて事業内容や業績、将来展望などを発信する活動のことです。決算説明会や株主向け説明会がわかりやすい例ですね。かつては機関投資家(大手証券・保険・年金など)を主な対象にしていた企業が多かったのですが、最近は個人投資家向けのIRを強化する動きが顕著になっています。
なぜ今、個人投資家向けIRが熱いのか
1つ目は個人株主の急増。日本取引所のレポートによると2024年度の個人株主数は前年度より922万人増加し、約8,531万人と11年連続で増加しています。NISAの拡充がその大きな後押しになっており、企業にとって個人投資家は無視できないステークホルダーになりました。
2つ目は東証によるコーポレートガバナンス改革の圧力。2025年7月、東京証券取引所は上場企業に対して、IRの体制整備を義務化しました。IRへの取り組みは、もはや、やる気のある会社がやることではなく、上場企業の義務になりつつあります。
3つ目はSNSやオンラインセミナーの普及。以前は東京でしか参加できなかった会社説明会が、今やYouTubeやオンラインで日本全国・海外の個人投資家にもリーチできるようになりました。コストをかけずにファンを増やせる環境が整ったことで、企業側のモチベーションも上がっているようです。
四季報春号に登場したIR強化企業
四季報春号で「IR強化」と記載されていた企業もご紹介します。
ウィルズ(4482)は、上場企業と個人・機関投資家をクラウドでつなぐ株主管理プラットフォームを手がける会社で、個人投資家向けの「プレミアム優待倶楽部」なども展開しています。まさにIR強化の流れそのものを事業にしている企業です。四季報には「上場企業の株主管理DX需要、海外投資家へのIR強化需要を取り込む」と記載されています。
いよぎんHD(5830)は「IR強化」を掲げ、「株主や投資家との関係強化のためのIR担当部署を設置した」と記載されています。地方銀行でありながらIR体制を本格整備した先進事例といえます。
ツナググループHD(6551)は自社YouTubeチャンネルを開設し、IRセミナーにも積極的に取り組んでいます。「個人株主に訴求」という姿勢が明確で、SNSを活用した新しいIRの形を実践しています。
個人投資家向けIRを充実させた企業は、実際に株価にも好影響が出るケースが多く見られます。日本IR協議会によると、IR優良企業は株価や時価総額を高水準に保つ傾向があります。経営者の「顔」が見えることで、投資家が「この会社を応援したい」というファン心理を持ちやすくなるからです。
わたしが四季報を読む際に注目しているのは、単に「説明会を開催します」というレベルではなく、経営トップが自ら登壇し、具体的な数値目標や事業戦略を語れる企業です。IR姿勢の積極度が、株価の長期的な方向性を左右することも少なくありません。
春号を読む際の「補助線」——中東情勢という見えないリスク
繰り返しになりますが、四季報春号の業績予想は、中東情勢の悪化を織り込む前に作成されたものがほとんどです。エネルギーコストや物流コストが上昇しやすい製造業・運輸・航空などは、今後の下方修正リスクを念頭に置いておく必要があります。
こうした不確実性が高い局面では、国内の政策需要に支えられている企業や、内需型のビジネスモデルで海外影響を受けにくい企業が輝きやすくなります。GIGAスクール第2期のような国策テーマはその典型です。
四季報は、現時点での情報の集大成ですが、外部環境の変化を読む目と組み合わせてこそ、より精度の高い投資判断ができます。今号はぜひ「国内需要×国策」というフィルターを意識しながら読み進めてみてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年4月8日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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