本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
先月6月17日に四季報夏号が発売されました。今号は創刊90周年記念号で、キャッチコピーは「激動環境の企業業績を大展望」。上場会社全体の約6割を占める3月期決算会社の本決算が出揃い、四季報記者さんが業績予想を大幅に見直したタイミングです。
夏号を読む際に、わたしが特に活用しているのが巻頭の「今期営業利益乖離率ランキング」です。これは会社が発表した業績予想と、四季報記者の独自予想がどれだけ乖離しているかを一覧にしたランキング。四季報が「会社予想より強気(または弱気)」と見ている銘柄が一目でわかります。
四季報記者は独自取材に基づいて予想を立てるので、「会社は保守的に出しているけど、実態はもっと良さそう」という銘柄をここで見つけることができます。逆に四季報が会社予想より低い予想を出している場合は、下方修正リスクの予兆として読める場合もあります。
特に夏号で注目してほしいのは、12月決算の銘柄です。
夏号が発売される6月は、12月決算企業にとってはちょうど1Q(1~3月期)決算を発表したばかりのタイミング。会社が通期予想を出してから間もない段階で、四季報記者がどう判断しているかをチェックする絶好の機会です。
1Qの時点で、会社自体が上方修正をするのは稀です。もうしばらく様子を見てからと慎重になる企業が多いため、その空気を読まない四季報記者との予想に乖離が生じます。のちのち会社側が上方修正をして四季報の予想に寄せてくることは多々ありますので、そういったお宝銘柄を早摘みしやすいのです。
AIデータセンター関連は半導体だけじゃない 意外な恩恵銘柄
今号でわたしが特に時間をかけて読み込んだのが6,000番台です。なぜなら、電気機器・機械セクターが集中しているので、まさに旬ど真ん中のAIデータセンター関連の銘柄が多く集まっており、外すわけにはいかないテーマだからです。
AIデータセンター銘柄というと、半導体製造装置や素材などの華やかな名前が注目されがちです。でも、四季報を読んでいると「この会社もAIデータセンターの恩恵を受けているの?」という銘柄が次々と現れてきます。記事欄を読まないと気づけない情報なので、それが四季報を読む醍醐味のひとつでもあります。
日本電波工業(6779)は、水晶発振器の専業メーカーです。「水晶」という言葉から、どこかアナログなイメージを持つ方もいるかもしれません。ところがこの会社、AIデータセンターの「縁の下の力持ち」として急浮上しています。
AIサーバーの高速通信には、データを正確なタイミングで送受信するための「基準クロック」が必要で、その精度を担うのが水晶発振器です。同社のAIデータセンター向け産業機器売上は2025年3月期の実績18億円から、2028年3月期には7倍の急成長を計画と記事欄にあります。しかも車載向け水晶デバイスでは世界シェアNo.1を誇る実力企業。まさにAIデータセンターという追い風を受けています。
スミダコーポレーション(6817)はコイル専業大手です。コイルもまた「地味な部品」の代表格ですが、AIデータセンターの電源回路には大量のコイルが使われます。
記事欄には「出荷は北米データセンター関連牽引」とズバリ書かれています。北米は、世界でもっともデータセンターが建設されている国。スミダコーポレーションへの恩恵もまだまだ期待できそうです。株価は、6月5日を天井に調整を続けており、PERでは12倍台、しかもPBRは0.72倍とまだまだ割安水準にあり、株価の見直しが入れば好パフォーマンスを見せてくれそうです。
工作機械勢も見逃せません。AIデータセンターの建設が進むということは、半導体製造装置や精密部品の需要が増え、それを作るための工作機械の需要も増えるという連鎖があります。オークマ(6103)の記事欄にも「米国で航空宇宙・データセンター向け好調。」とあります。中期経営計画2028では航空宇宙・防衛・データセンター向けの重工業設備投資需要を取り込む方針を明確にしています。
スマホ向けの表面実装機世界トップのFUJI(6134)は、AI関連の実装機売上が約3割に到達したと書かれています。2026年3月期の実績受注高は創業以来初めて2,000億円を超え、AIサーバー・半導体関連需要が業績を牽引していることがわかります。2027年度もロボットソリューション事業は、18%超の売り上げ増見込みで期待大です。
こうした銘柄群に共通するのは「AIの主役ではないけれど、AIなしでは成立しない縁の下の力持ち」というポジションです。華やかな銘柄は既に株価に期待が織り込まれていることも多い。それと比べて、こうした「次の波及先」はまだ市場の注目が薄いことも多く、四季報を丁寧に読むことで発見できる醍醐味があります。
読んだ人だけのお楽しみ、「へぇ~」な記事たち
最後は毎回のわたしのお楽しみ。四季報を読んでいて思わず「へぇ~!」と声が出た記事を紹介します。
・「なし婚」(一蔵・6186)
着物販売レンタルの会社が、結婚式を挙げない「なし婚」層の取り込みを、写真スタジオ新設で行っています。結婚式の費用も高くなってるでしょうし、写真だけでいいか、となるカップルは多いのでしょう。
・「南米ザルとラクダの新エリア」(伊豆シャボテンリゾート・6819)
シャボテン公園で6~7月に新エリアを開設するそう。同園は、インバウンド対応も手厚く、情報サイトでは英中韓など5カ国語で発信しています。
・「自動どら焼き機食品メーカー買収」(マブチモーター・6592)
精密モーターの大手が、まさかのどら焼き機メーカー買収。一体どんなすごいどら焼きができるのか、妄想が止まりません。
・「NY地下鉄向け電気機器貢献」(森尾電機・6647)
時価総額が40億円にも満たない日本の企業が、ニューヨークの地下鉄を支えているなんて夢があります。昨年の世界旅行でNYの地下鉄を体験しただけに、より一層親近感が湧きます。
四季報は「数字と予想の本」ですが、こうした個性的な一文が全3,824社に散らばっています。ただ読むだけでなく、「この会社は何をしているんだろう?」「この記事の背景は?」と想像しながらページをめくる時間は、投資家として視野を広げてくれる豊かな時間でもあります。ぜひ夏号、手に取ってみてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年7月13日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw)