本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
わたしたちが普段よく使っている身近なブランド――好きなアパレル、愛用の家電、お気に入りの食品メーカー、よく行く飲食チェーン――に「応援したい」「この会社、将来伸びそう」といった親近感を抱くのは、ごく自然なことです。だからこそ、「この会社を応援する意味で買いたい」と株主になる人は多いでしょう。とくに株式投資のとっかかりには、いちばん王道な銘柄選びだと思います。
しかし、株式市場には古くから伝わる格言があります。
「銘柄に惚れるな」。つまり、感情や“好き”という理由だけで銘柄を選ぶと、期待通りにいかないリスクがある、という警告です。そこで今回は、応援したい企業に投資したくなったとき、「冷静な判断軸」を持つことの大切さと、それでも“長く付き合いたくなる銘柄”の見極め方について解説します。
「銘柄に惚れるな」とは?
「銘柄に惚れるな」という言葉は、“好き”“応援したい”という気持ちだけで株を買うべきではない、という戒めです。ブランド力や企業のイメージは、投資判断の材料として魅力的に映るかもしれませんが、皮肉なことに、人気や好感度と、会社の「将来の稼ぐ力」や「企業価値」は必ずしも一致するとは限らないのです。
たとえば、好きな服を作っている企業だからといって、必ずしもそれが高収益・安定経営とは限りません。ファン心理で買ってしまい、実績が伴わず株価が下がれば、“応援”が後悔へと変わってしまうことも。
最近よく「サンリオの株を買ったのだけど、このまま持っていていいと思いますか?」と聞かれます。ご存知サンリオは、キティちゃんをはじめ人気キャラクターを数多く有し、ライセンス事業で大成功している企業です。
株価は2025年8月まで飛ぶ鳥を落とす勢いで上昇し、買いたくても上げのスピードが早くて手が出ない人が多かったように思います。ところが、8月に8,685円の高値をつけたのち、株価は反落し始め、11月20日には5,230円まで下落しています。12月1日現在でも5,300円台で低迷中。
下げ局面の序盤、7,000円あたりで「あのサンリオがお安くなってる!」と、手を出してしまった投資家さんがとても多く、そこからさらに株価が下落し続けていても、まるで呪文のように「応援する気持ちで、上がるまでずっと持ってる!」と言うのです。
まったく株に対しては薄情なわたしからすると、いったん手放して、また上がり始めてから買い直せばいいと思うのですが、惚れた銘柄を手放すのはなかなか難しいようです。
サンリオに限らずこういった例は後を絶たず「ブランドや“好き”で選ぶ」は短期的には気持ちがよくても、長期のリスクとしては盲目的になりやすい――それがこの格言の警告意図です。
応援投資でもチェックすべき、冷静な判断のポイント
それでも「応援したい」「このブランドを信じたい」気持ちがあるなら、その気持ちを大切にしつつ、以下のような“冷静な判断軸”を持つことが大切です。特に、銘柄選びの際は「感情」ではなく「企業の実力」に着目しましょう。
以下は、最低限、チェックしたい企業の実力を判断する指標です。
・PER(株価収益率)
株価がその会社の「1株あたり利益(EPS)」に対して割高か割安かを示す指標。日本株全体の標準は15倍程度ですが、その企業の成長度合いや、業種によっても適正なPERは変わります。その銘柄の実績PERと比べて、現在がどうか比較してみるのがおすすめです。
たとえば、過去3年間の平均PERが20倍で、現在のPERが15倍であれば、割安感があると判断できます。
・PBR(株価純資産倍率)
会社の資産(純資産)に対して、株価がどの程度かを示す指標。1倍を割っていれば、資産面から見ると割安とされます。
・ROE(自己資本利益率)
会社がどれだけ効率よく利益を株主資本から生み出しているかを見る指標。高いROEを長期に維持できている企業は、効率よく稼ぐ力があるとされています。10%以上あれば超優秀。外国人投資家がとくに重視する指標と言われています。
・財務の安定性、キャッシュ創出力
債務の状況、フリーキャッシュフロー(自由に使える現金の流れ)などもチェック。借入過多やキャッシュ不足は、ブランド力があっても痛手になりやすいものです。とくに金利上昇局面では、有利子負債が業績の重しになります。
これらの指標を見ることで、「応援したいから」「好きだから」ではなく、「応援したくなる理由」が財務的にも裏付けられているかを判断できるようになります。
さらに重要なのが、企業が属する業界での立ち位置や、他社に真似されづらい強み――つまり「独自の強み」を持っているかどうかです。これは、価格競争や流行の移り変わりに左右されず、長期で安定収益を上げられる企業の大きな武器となります。
ブランド銘柄であっても、「一時の流行」「ファンの熱」で成り立っている場合は、人気が冷めたときに一気に業績が崩れるリスクがあります。一方で、「長く使われる・選ばれ続ける理由」が財務・ビジネスモデルの両面で整っている企業は、応援するに値する銘柄になり得ます。
それでも「惚れていい銘柄」とは? 結婚と同じく、長期で付き合えるかどうかがキモ。
では、どういう銘柄なら「惚れてもいい」、あるいは「惚れても後悔しにくい」と言えるのでしょうか。以下のような特徴がある企業は、“応援”の感情と“投資価値”を両立しやすいと考えられます。
・長期にわたって高いROEや堅実な収益力を維持してきた企業
ROEが高いということは、資産を効率よく利益に変えているということ。利益は、配当や株価の上昇という形で株主に還元されますので、投資家からも評価が高くなります。
・安定したビジネスモデルを持っている企業
景気や流行に左右されにくく、日常的に需要がある商品やサービスを提供している企業が該当します。派手さはないですが、相場が大きく崩れたときも比較的株価が安定しており、落ち着いたお付き合いができます。
・競争優位性が明確で、容易に真似されにくい企業
独自の技術、圧倒的なブランド力、規模の経済、幅広い流通網、顧客ロイヤルティなど、他社が真似しようとも簡単には真似できないカリスマ性を持っている企業なら、愛が冷めることなく持ち続けられるでしょう。
・割安でまだその魅力が織り込まれていない企業
成長性や安定性があるのに、まだあなただけが魅力に気づいている場合、それが勘違いでなければ株価は大きな上昇が期待できます。
・信頼でき、情熱を持った経営者がいる企業
宣言したことを着実に実行できる熱血経営者がいる企業は、従業員のモチベーションも高く、企業自体が成長できる環境にあります。一緒に夢を追うなら経営者で選ぶのもありです。
以上のように、「結婚したいくらい惚れていい銘柄」とは、単に“好き”だけでなく、経済合理性と将来性、信頼性が揃っているという条件付きであるべきです。
身近なブランドや好きな企業に「応援したい」という気持ちで投資するのは、人間らしい自然な感情です。しかし、その気持ちだけで銘柄選びをしてしまうと、見かけの“好き”に裏切られ、痛い目を見る可能性があります。「銘柄に惚れるな」という格言には、そうした注意喚起が込められているのです。
一方で、財務指標やビジネスの実力、経営の質などをしっかり見極めたうえで、「応援したい企業」を選ぶなら、その銘柄は“惚れても後悔しない銘柄”、つまり“結婚したいくらい惚れられる銘柄”になり得ます。
応援の気持ちと冷静さを両立させ、長く付き合える企業を見つける――それが、ブランド銘柄投資で大切な判断軸になるでしょう。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年12月2日時点の情報に基づきます。
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