本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
8月後半から9月にかけて40日間の旅に出かけました。訪れたのは、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、ニース(フランス)、アテネ(ギリシャ)、マルタ(マルタ)、リスボン(ポルトガル)、トロント(カナダ)、NY(アメリカ)です。今回は、欧州、北米を巡って感じた海外での日本企業の立ち位置をお伝えします。
世界の街角で見つけた日本ブランドの存在感
まず、どの都市でも一等地に大きな店舗を構えていたのはユニクロ(ファーストリテイリング)です。「ユニクロ」のカタカナロゴは健在で、街角でもユニクロの紙袋を持った人をたくさん見かけました。確実にグローバル企業としての存在感を放っています。
実際、直近発表された2025年8月期決算では、ユニクロの海外売上比率は、56.2%にまで上昇していますので、数字と現地で感じた肌感は一致しています。決算の発表会見で柳井正会長兼社長は「(ユニクロは)グローバルでブームが来ているんじゃないか。全世界でこれだけ売れるというのは今までになかった現象なんで」と話しています。
ちなみに海外の友人に聞くところによると、日本人が持っている”安い”アパレルブランドのイメージではなく、中価格帯の高機能でベーシックなものが揃っているブランドと認識されているとのこと。とくにヨーロッパでは、「どれだけ持つか」「着心地」「見た目」「環境負荷」など複数の軸で判断されるため、日本で強調されがちな「安さ」は全面に出していません。そういった戦略の違いが海外でも成功している理由なのでしょう。
次に目立ったのはMUJI(良品計画)です。こちらは、どちらかというと小ぶりの店舗が多く、街並みにしっくり馴染んでいる感じでした。売り場には、ステーショナリー、化粧品・スキンケア、生活雑貨が多く、アパレルはあまり目立ちません。
2025年8月期の決算資料によると、MUJIの海外売上比率は、約40%。ただ、海外でいちばん比率が高いのは中国を含む東アジア事業で28.3%、欧米事業は5.4%に過ぎません。欧米地域は、不採算店を閉鎖し構造改革を行なったとあります。わたしが訪れた都市では目につきましたが、まだまだ地方などには展開できていないようです。
店舗数は少ないですが、ロンドン、パリ、バルセロナのハイブランドが並ぶ一等地に、堂々とフラッグショップを構えていたのがオニツカタイガー(アシックス)です。オニツカタイガーといえば、日本でもインバウンドに大人気で、裏原宿にある店舗はいつも大賑わいです。バルセロナのお店は、入り口にスッとした人が立っており、入るときにドアを開けてくれるシステム。まさにラグジュアリーブランドの建て付けです。アシックスが、オニツカタイガーをラグジュアリーブランドとして確立させようとしている意思を明確に感じました。
2025年12月期上半期のオニツカタイガー事業の成長率は、前年比+36.1%と非常に高く、アシックスの中でもスターブランドです。
もうひとつ、海外でラグジュアリーブランドとして足場を固めつつあると感じたのは、SEIKO(セイコーグループ)です。バルセロナのハイブランドエリアに、小さめではありますが、高級な雰囲気を醸し出す店舗がありました。海外では、「プレザージュ」「プロスペックス」の中価格帯が人気ですが、今後は、グランドセイコーを筆頭とした「グローバルブランド戦略」で高級市場を強化するようです。
ラーメン、お寿司、お抹茶……海外で市場を広げる日本食
ここからは個別の企業ではなく、海外で市場を広げつつあると感じた業種についてお話しします。
まずラーメン。一風堂をはじめ日本のラーメン企業が海外展開を進めているというのは、数年前から話題になっていましたが、実際、ロンドン、パリ、NYでは、多くのラーメン屋さんを見かけました。だいたい値段は日本円で2,500円から3,000円くらいで、こちらの感覚からするとお高いのですが、現地では、ラーメンがいちばん安い外食とされてるそうです。
お寿司や、抹茶も多く見かけました。なんとなく全体的に日本食ブームは来ている感じがします。
タイムズスクエアに日本企業の広告がない「寂しい現実」
残念な感想もあります。NYのタイムズスクエアに日本企業の広告がひとつも出ていなかったことです。その代わり、韓国企業のCMはたくさん見かけました。この場所は世界一広告料が高いので、「広告を出す=勢いがある」企業と認識されます。30年ほど前は、日本企業の広告が占領したと聞きます。なんともさみしいですね。
最後に、この旅でいちばん感じたのは、円安のマイナスインパクトです。ポンドに対しても、ユーロに対しても、ドルに対しても、すべての外貨に対して円は安くなっており、そのせいか旅先で日本人に会うことが非常に少なかったです。とくにロンドン、パリは、物価自体も高いのでまったくと言っていいほど日本人を見かけませんでした。
また、各都市でいろいろな美術館へ行きましたが、日本語ガイドが用意されていることは稀有で、日本人旅行客の存在感が薄れていることを感じました。
一方で、現地で話した人の多くが「今、いちばん行きたいのは日本」とも言っていました。アテネで空港まで送ってくれたUBERの運転手さんは「ワンピース、ナルト、ドラゴンボール…。僕は日本のアニメで育ったよ。日本に行ってみたい!」とのこと。かつて栄華を誇ったハード産業では、衰退しつつあるものの、逆にソフト産業では、強い存在感を出せていると感じます。
海外で再認識した日本の強みと可能性
海外に出ると、客観的に日本を見ることができます。旅に出る前は、日本企業の海外での売上動向について決算資料などだけで調べて分析していましたが、実際に現地で見ると、勢いがあるのか、ないのか肌身を持って感じることができました。
実際、ユニクロの海外での存在感を目の当たりにしたあと、直近の決算の好調を数字で確認すると、投資対象としてより強い確信を持てます。
気軽に海外に行くのは難しいかもしれませんが、機会があれば、ぜひ現地で気になる企業を訪れてみてください。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年10月14日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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