株式投資

2025.07.25

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
 藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

もともと株式市場では、台風が発生しやすい夏から秋にかけて防災関連銘柄に注目が集まりますが、近年その傾向がますます強まっています。とくに、石破首相が「人命最優先の防災立国」の実現を掲げ、「防災庁」の2026年度中の創設を目指すなど、防災関連はまさに“国策テーマ株”のど真ん中として注目を集めています。そこで今回は、防災がなぜ今強く意識されるのか、そしてどのような防災関連銘柄があるのか、その選び方も含めて紹介します。

防災意識の高まりとその背景

かつてないほど防災への注目が集まっている背景には、大きく3つの理由があります。

1. 自然災害の多発と深刻化

巨大地震は言うまでもありませんが、線状降水帯、台風、洪水、竜巻など、大規模な自然災害が多発し、社会に甚大な被害を与えています。とくに南海トラフ地震の発生確率が今後30年以内に「80%程度」に引き上げられ、最大死者数29万8000人、全壊・焼失235万棟という、想像を絶するような被害想定が示されたことで、わたしたち国民の防災意識はいやおうにも高まりました。地球温暖化の影響も指摘されており、天災への備えはいくらあっても多すぎるということはありません。

2. 政府による強力な推進

防災は石破政権の肝いり政策であり、今年の「骨太の方針」にも防災・減災対策が盛り込まれています。なんといっても目玉となるのは「防災庁」の創設です。2026年度中の設置を目指し、石破首相は6月にも組織の概要を示す方針を表明しました。
この防災庁は、内閣直属の司令塔と位置づけられ、他の関係省庁に対して指導や助言を行う「勧告権(かんこくけん)」を与えられる予定です。つまり、いつ発生するかわからない災害に対して、どの省庁が何を担当するか曖昧になりがちな“縦割り行政”を打破し、内閣が直接指示・調整を行い、強力に推進するための中心的な役割を担うという、政府の本気度がうかがえます。
平時からの「事前防災」に徹底的に取り組み、災害発生後の「司令塔機能」を抜本的に強化することで、防災業務の企画立案機能が飛躍的に高まることが期待されています。
当然、防災関連予算も増額されています。2025年度当初国家予算では、防災関連予算として前年度の約2倍にあたる約146億円を計上しており、この中には「避難生活の環境改善」のための約28億円や、「事前防災対策総合推進費」としての約17億円などが含まれています。また、災害発生時の被害全体像を把握するための「新総合防災情報システム(SOBO-WEB)」の活用など、防災DXも推進されます。
さらに、政府は首都直下地震の可能性を念頭に、防災庁の拠点を地方に置くことも検討しており、多くの自治体が誘致の意向を示しています。大規模自然災害からの迅速な復興には地方自治体での地域産業構築も必要であることから、石破首相の防災対策は「地方の未来を創り、地方を守る」という「地方創生2.0」にもつながる政策とされています。

3. 国民レベルでの防災意識の向上

南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたことや、SNSで広がる“大災難”の噂、鹿児島県のトカラ列島近海での群発地震などが、国民の防災への意識を一層高めるきっかけとなっています。地震予知は現在の科学では不可能であるため、いつ起こるかわからない災害に対して、常に備えを持つことの重要性が広く認識されています。

注目の防災関連銘柄

防災関連銘柄といえば、真っ先に建設やインフラ関係の企業が思い浮かびますが、実際は多岐にわたります。
まずは岩谷産業(8088)。大規模施設向け消火設備のほか、卓上カセットコンロなどの防災備蓄品も提供しています。実際、カセットコンロの売上も堅調で、4月以降の株価上昇は防災需要を反映しているのかもしれません。
ウェザーニューズ(4825)も注目です。民間気象情報では世界最大手で、同社が提供するお天気アプリの有料会員が着実に増加しています。突発的な天候の変化や防災情報がリアルタイムで得られ、実用性が非常に高いです。
防災設備機器でおさえておきたいのは能美防災(6744)。火災報知設備や消火設備の製造・施工・保守を手がける総合防災システムの最大手で、関東大震災後に自動火災報知装置を日本で初めて商品化した企業です。今後は、急増するデータセンター向けの高性能煙監視システムを刷新予定で、業績の拡大が見込まれます。
国土強靭化の本命として株クラスタの間で必ず名前が挙がるのは、ショーボンド・ホールディングス(1414)です。橋梁の補修工事で首位を占め、補修材料の開発・販売から施工までを一貫して行えるのが強み。今期で13期連続増益を記録しており、着実に実力を伸ばしています。
同様に外せないのがライト工業(1926)。ぼう法面・地盤改良などの特殊土木に強く、耐震用地盤改良工事の引き合いも活発化しています。
意外なところではJVCケンウッド(6632)も防災関連銘柄といえます。一般的にはスピーカーやオーディオ機器で知られていますが、自治体や企業向けに避難誘導支援システムを提供し、ポータブル電源も展開しています。
また、メディア事業で知られるスカパーJSATホールディングス(9412)は、災害に強い衛星通信サービスを提供しており、バックアップ回線としての活用が期待されています。隠れた防災銘柄といえるでしょう。

来る前に備え、来る前に買う

いずれにしろ、防災・国土強靭化関連銘柄は政府の強力な政策支援を受けており、長期的なテーマとして期待が持てます。特に平時からの「事前防災」や「防災DX」といった新たな防災対策の推進に貢献する企業は、今後も成長が見込まれると考えられます。大きな災害が起きてからではなく、平時から少しずつ備えておくのがよさそうです。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年7月14日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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