本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
Introduction
毎年6月は「株主総会シーズン」と呼ばれ、多くの上場企業が総会を開きます。
株主総会と聞くと、「なんだか難しそう…」と思うかもしれませんが、実は個人投資家にとって、会社の“中のこと”を知る絶好のチャンス。さらには、その企業の運命が大きく変わる瞬間に立ち会う可能性もあります。過去には、日産や東芝など、株主総会で大波乱が起きた事例もありました。
株主総会って何するところ?
株主総会は、企業の株主が年に1度集まり、会社の経営方針や重要な議案について話し合う場です。取締役の選任や報酬、配当の決定、企業の合併や分割の承認など、株主としての「議決権」を行使できるタイミングでもあります。
といっても堅苦しいものばかりではなく、企業によっては事業報告のプレゼンテーションがあったり、質疑応答が活発だったりと、参加してみると意外に面白いのです。
株主総会までの流れ
いちばん数の多い3月決算企業の例でお話しします。
企業が定める「基準日」(3月31日)に株を保有していた場合、開催日時や会場、議案の内容が記載された「招集通知」が、6月初旬から中旬あたりに郵送または電子で届きます。これに対して、出席するかどうかの返答も必要です。近年ではオンライン出席やライブ配信を行う企業も増えており、自宅からでも参加できる場合があります。
じつは株主総会に参加し、議決権を行使する個人投資家は30%程度と少ないのが現状です。その理由のひとつは、平日開催が多いためです。3月決算企業の場合、6月の最終週の最後の平日に集中しがちで、この日は「株主総会集中日」とも呼ばれています。この集中開催の背景には、企業が総会屋対策として同日に開催することで対応を難しくする意図があったとされています 。ただし、近年ではこの集中率も低下傾向にあり、2023年度には過去最低水準となりました。これは、企業が株主との対話を重視し、株主総会の開催日を分散させる動きが進んでいるためです
株主総会が平日に開催される主な理由は、企業の業務運営上の都合や、土日開催に比べて参加者が多いという実務的な観点からです。また、会場の確保やスタッフの配置など、平日の方が調整しやすいという点もあります。
ただし、先ほども述べたように、平日開催が個人投資家の参加を難しくしているとの指摘もあり、近年ではオンラインでの参加を可能とする「バーチャル株主総会」を導入する企業も増えています。これにより平日でも自宅や職場から参加できるようになっているため、株主総会出席のハードルはかなり下がったといえます。
株主総会に参加するメリット
株主総会に参加する意味があるのか、と疑問に感じる人もいるかもしれません。自分ひとりくらいが議決権を行使したところで、何も変わらないと考える人もいるでしょう。たしかに、比率の少ない個人投資家が反対票を投じたとしても、あっけなく却下される場合が多いのは事実です。しかし、株主総会への参加には、さまざまなメリットがあります。
1、経営者の“生の声”が聞ける
社長や取締役が自らの言葉で事業の現状や未来を語る場は、年に一度だけ。話す姿で、自信のある、なしが読み取れたり、また、社内での立ち位置なども推測することができます。
2、会社の方向性がわかる
決算資料では読み取れない、リアルな企業の戦略や課題が見えてきます。企業によっては、自社商品やサービスを体験できるミニ展示会のようなブースがあり、商品の優劣を確認することもできます。
3、他の株主の質問が学びになる
質疑応答では、鋭い質問やユニークな意見が飛び交うことも。聞いているだけでも勉強になります。また、どんな人が株主なのか、属性などが見えるのもおもしろいです。
日本中が注目しているフジテレビの株主総会
今年の株主総会は、例年以上に投資家の注目が集まっています。なぜなら、6月に開催予定のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)が、企業の将来に関わる重要な局面を迎えるからです。米国のアクティビストファンド、ダルトン・インベストメンツが、同社の経営体制や資産運用に対して改革を求める株主提案を行っており、議決権の行使が企業の方向性を左右する可能性があります。
フジHDは、テレビ放送や出版などのメディア事業と、不動産開発を中心とした都市開発・観光事業の二本柱で構成されています。しかし、営業利益の大部分は不動産事業から得られており、メディア事業は赤字が続いている状況です。このような非効率な企業構造に対し、ダルトンは資産の売却や経営陣の刷新を提案しています。
さらに、元タレントの不祥事に対する対応の遅れや、ガバナンスの不備が指摘され、企業の信頼性が問われています。これらの問題に対し、ダルトンは独立した第三者委員会の設置や、取締役の大幅な入れ替えを求めています。
ダルトンは、SBIホールディングスの北尾吉孝氏を含む10人以上の取締役候補を提案しており、現経営陣との対立が鮮明になっています。このような状況下で、個人投資家の議決権行使が重要な意味を持ちます。
たとえば、100株を保有する株主が、ダルトンの提案に賛成票を投じることで、経営陣の刷新や資産の有効活用が進む可能性があります。一方で、現経営陣の提案に賛成することで、従来の経営方針が維持されることになります。いずれにしろ株主総会は、白熱することが予想され、ドラマ以上にドラマティックな展開になるかもしれません。それを見たくて、株主になった人も多く、じつはわたしもその一人です。
株主総会に出席するための準備
株主総会に参加するには、まず招集通知に記載された議案を事前に読み、会社の現状や提案内容を把握しておくことが大切です。質問があれば簡単にメモしておきましょう。当日は、招集通知(もしくは議決権行使書)を忘れずに持参すること。時間に余裕を持ち、落ち着いて臨むこと。無理に発言せずとも、他の株主の意見を聞くだけで学びがあります。せっかくなので、できるだけ前の方に座ることをおすすめします。
株主総会への参加は、選挙に参加するのと同様の意味を持ちます。自分の大事なお金を投じている企業が、正しく経営されているか、どんな価値を社会に提供しているか、自分の目でしっかり確かめる絶好のチャンスです。はじめは緊張するかもしれませんが、ぜひ一度、参加してみてください。思わぬ学びや出会いがあるかもしれません。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2025年5月12日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。
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