金融・投資

2023.07.28

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1 )など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

Introduction

会社四季報夏号が発売されてから、1ヵ月が経ちました。今年に入って日本株は好調ですので、前向きな気持ちで手に取る方も多いと思います。実際、編集部の方から聞いたところ、株価が上がっているときのほうが売上は伸びるそうです。本来は、株価が下がっているときこそお宝銘柄が多く、四季報を読むメリットも大きいのですが、そんな気分にはなれないのかもしれませんね。

来期の見通しのヒントになる夏号

前置きはさておき、四季報夏号の見どころを紹介しましょう。
まずは、3月決算銘柄の来期予想です。今であれば、2025年3月期の予想になりますが、これは、夏号で初めてお目見えする数字です。前号の春号で掲載されている予想値は2023年3月期と2024年3月期ですが、春号と夏号の間に2023年3月期は着地し実績値となったので、新たに2025年3月期の予想が登場というわけです。
2024年3月期の予想値は、たいていの会社が2023年3月期の決算発表で提示しています。投資家はその数字をすでに見ているので、今期の見通しはなんとなく立ちますが、来期の業績までは見えていません。いくら今期の予想値が成長予想であっても、その先、業績が低迷するのであれば、株価は下落する可能性が高く、そういった銘柄は避けたいものです。そこで重要なヒントを与えてくれるのが四季報夏号なのです。
チェックポイントは、2024年3月期の営業利益予想より、2025年3月期のほうが伸びているかどうか。
ひとつ例を紹介します。
靴メーカーの老舗、リーガルコーポレーション(7938)です。たしか、わたしが初めて買ったローファーはリーガルだったと思います。時価総額は60億円ちょっとと、かなり小粒ですが、知名度はそこそこ高い企業です。
この会社の2024年3月期の営業利益予想は5億円、2025年3月期は7億円と40%の増益予想です。リーガルで扱っている靴は、わりとカッチリしているものが多いので、ビジネスでの移動が増えているのも追い風なのかもしれません。売上の伸び率(4.1%)よりも、営業利益の伸び率のほうが大きいので、経営の効率化がさらに進むと考えられます。
わたしと同様の見方をしている四季報読者が多いのかもしれません。発売週から株価は堅調に上昇しています。

敢えて王道を外して12月期決算銘柄を狙おう

日本の上場企業の7割が3月期決算なので、上記のポイントをチェックするのはそれなりに手間がかかります。忙しい方にとっては苦行になってしまうかもしれません。
そこで、もっと数をしぼって、なおかつわりと早めに利益が取れる可能性が高い銘柄発掘方法を紹介します。
直近で第1四半期決算の発表を済ませた12月決算銘柄を狙います。見るべきポイントは、会社発表23年12月期の予想値と、四季報記者の予想が乖離していることです。今期予想の営業利益予想が、会社予想より四季報予想のほうが強気の場合、欄外にニコちゃんマークがついているので、発見しやすく初心者さんにもおすすめです。
四季報予想が、会社予想より強気な理由は、すでに発表された第1四半期決算がよかったことを意味します。おそらく通期予想に対する進捗率が高く、今後、会社が上方修正をする可能性が高いと読んでも差し支えないでしょう。
たいてい企業サイドは、上方修正に慎重です。まだ3ヶ月しか経過していない第1四半期のタイミングで上方修正をするにはかなりの勇気が必要です。そのため、上振れ着地がより確実に見えてくるまで発表を控えます。一方で、四季報記者さんは、忖度なく予想値を出します。わたしの経験上、のちに会社が上方修正を発表し、四季報予想に近づくことが多々あります。その度に記者さんの読みの正確さに感嘆します。
12月決算銘柄は、約530社。上場企業が3,700社程度なので、全体の15%にあたります。チェックするのはそれほど大変ではないですね。その中から、例をひとつ紹介します。
STIフードホールディングス(2932)、水産系のお惣菜やおにぎりの具を製造しており、セブンイレブン向けが売上の8割を占めています。
23年12月期の会社の営業利益予想は18億円に対して、四季報予想は20.5億と13%も強気です。号外にはしっかりニコちゃんマークがついています。
(今期の営業利益予想の会社予想との乖離率が3%以上30%未満の場合にニコちゃんマーク、乖離率が30%以上の場合はダブルニコちゃんマークがつきます)
ちなみに、5月11日に発表されたSTIフード社の第1四半期決算は、営業利益4.78億円(前年同期比+50.3%)、通期予想18億円に対する進捗率は26.5%です。前年度は21.3%でしたから、今期の26.5%がかなり好調であることが分かります。
惣菜などの中食事業は、巣ごもり消費の反動と、原材料の高騰で前年度は冴えない数字でしたが、価格転嫁や、DXによる業務の効率化で、今期はV字回復となる企業が目立ちます。この会社も例外ではないようです。

超絶めんどくさがり屋さんに向けた裏技

四季報を読み慣れていない初心者さんにとっては、四季報を1ページずつめくって、条件に当てはまる銘柄を見つけるのは大変な作業です。そこで、超絶ラクチンな発掘法を伝授します。
巻頭の今期営業利益乖離率ランキングから、23年12月銘柄だけチェックするのです。ランキングに入っている銘柄は、会社予想に対して四季報予想が強気なものに限定されているので、あとは、それ以外の要素(事業内容、来期予想の数字、チャートの形状など)を確認すればよいだけです。
四季報ラバーとしては、1枚1枚ページをめくりながら有望銘柄との出会いを体験してほしいですが、仕事しながら、子育てしながら…となるとなかなか難しいですよね。
ランキングを利用したチートな発掘方法でも十分お宝銘柄を見つけることは可能です。ぜひお試しください。

11月決算銘柄で発見したお宝事例

一足お先に第2四半期決算を発表した11月決算銘柄で、会社が上方修正を発表し、四季報予想に寄せてきた事例をお見せします。
保険の代理店営業を行うFPパートナー(7388)です。四季報夏号では、23年11月期の会社の営業利益予想は44.13億円、四季報予想は50億円と10%以上乖離していました。その後7月14日に会社が通期の営業利益予想を55.1億円に上方修正し、翌営業日株価は14%上昇しました。
第1四半期決算を通過したあと、会社予想と四季報予想の乖離が大きい銘柄を狙う作戦が有効であることがお分かりでしょう。もちろん100%、当てはまるわけではありませんが、戦略なしで四季報をめくるよりは、お宝銘柄を発掘する確率は高まるはずです。

次号秋号でも使えるチート技

気が早いですが、次号秋号でも同様の作戦は使えます。ただし、第1四半期決算を通過するのは3月決算銘柄なので、数が多い! 2,300社ほどありますから、チェックするのが大変です。
そこで、またもやチート技をお伝えしておきます。ただし、実行できるのは、四季報オンラインの有料会員のみになります。
トップページ上部のスクリーニングタブをクリックします。おすすめのスクリーニング条件から“会社比強気”の右横にある“条件を見る”をクリック。次に条件の追加をクリックし、検索窓に”決算月”を入力。すると決算月という項目が表示されますので、それをクリックして3月を選びます。そうすると会社予想より、四季報予想が強気の3月決算銘柄だけが抽出されます。乖離率の高い順に並び替えることも可能です。
もちろん今、発売されている夏号でも、決算月を12月に設定すれば同様にスクリーニングできます。これらの銘柄は、7月末から8月半ばにかけて第2四半期決算を発表しますので、今からでも先回りが可能です。試してみてはいかがでしょう?
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年7月20日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が個別企業の紹介、特定の個別銘柄の推奨、または取引の勧誘をするものではありません。

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