株式

2026.10.22

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1 )など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw )

Introduction

去年に続き、今年も8月から9月にかけてヨーロッパ、NYを回る旅をしました。旅先では、日本ではあまり意識しなかったことが、ふと鮮明に映ることがあります。
蚤の市や古着屋で、ヴィンテージの服を買い求める人々、パリの街角で行列ができている日本食レストラン、そして世界各地の書店で見かけるマンガ本——。旅先で感じる流行の波や、経済の変化は投資家としても大きな気づきがあります。
今回は、そんな旅先での体験を四季報秋号で答え合わせしながら、気になった3つのテーマを紹介します。

テーマ①「リユース」:ヴィンテージや古着は、欧州では普通のこと

パリからユーロスターで1時間半ほどかけて、ベルギー・ブリュッセルへショートトリップした時のこと。平日にもかかわらず、大きな広場で開催されていた蚤の市は、地元の人たちで賑わっていました。食器、洋服、電化製品、カメラ、アクセサリー、絵画など、ありとあらゆるものが売られています。通りには、たくさんのヴィンテージショップが並んでおり、そこには年齢を問わず買い物を楽しむ人がいました。日本だと、古着のオシャレを楽しむのは若い人というイメージがありますが、ヨーロッパでは年齢のくくりはありません。
パリにもたくさんの古着屋やヴィンテージショップが街に溶け込んでいて、自分の気に入るものならそれが新しくても古くても気にしない文化があるように感じます。
翻って日本はどうでしょう。かつて「人のお古」にネガティブなイメージがあった日本でも、ここ数年でリユースへの意識は劇的に変わってきました。
リユース経済新聞社によると、リユース市場の規模は、2025年に前年比6.2%増の3兆4,636億円となり、2009年以降16年連続で拡大。2030年には4兆円市場になると予測されています。物価高による節約意識の高まり、サステナビリティへの共感、フリマアプリの定着——こうした複数の要因が重なり、リユース市場は不可逆的に成長を続けています。
インバウンドの追い風も無視できません。訪日外国人が日本の中古市場でブランド品やマンガ・アニメグッズを買い漁る光景は今や珍しくなく、ブランド品カテゴリーの成長率は、2024年、2025年と2年連続で15~17%という高成長が続いています。これは至極当然の数字で、海外に出ると円安の影響をより強く感じます。逆にいうと、海外の人から見れば、日本はモノが安い! とくに日本で買うブランド品は、状態が極めてよい上、信じられないくらい安いと感じるはずです。
四季報秋号でリユース関連銘柄を確認すると、各社の業績は概ね堅調。店舗主力型では業界首位のセカンドリテイリング(2681)は、古着ショップ「セカンドストリート」を、米国・台湾・マレーシア・タイ・シンガポール・香港に計148店展開しており、加えて今期は38店舗出店予定です。また、国内での出店も21年度から25年度にかけて毎期過去最高水準で続けており、国内外での両取りを鼻息荒く狙っています。
トレジャー・ファクトリー(3093)は、5期連続で二桁の増収増益を続けており、今期27年2月期も過去最高業績を更新見込みです。四季報秋号の記事欄には「ブランド古着子会社は訪日客需要高原」とあり、こちらも「やはり」といった感じ。
以前、この連載でも紹介したマンガ専門古書店のまんだらけ(2652)は訪日客によるマンガ・フィギュア需要を追い風にしています。海外でのマンガ人気は尋常でなく、各都市の本屋でもマンガコーナーがしっかり確立されていました。マルタ島の小さな本屋ですら、マンガの棚がありましたし、フランクフルト空港では、なんと空港内でマンガが販売されていました。
余談ですが、NYの紀伊國屋書店では、ちいかわグッズが目立つところに陳列されており、ちいかわ人気が世界で爆発するのもそう遠くないかもしれません。
リユースの話とセットで触れたいのが、ユニクロの存在感です。パリのオペラ座前にあるユニクロのフラッグ店では、師走のデパートの食料品売り場かと思うほど混雑していました。地下1階から3階まである大きな店舗なのに、です。値段は、おおよそ日本の1.5倍程度。ユニクロの海外売上比率が猛烈に伸びているのも納得です。
事実、ファーストリテイリング(9983)の直近の決算にも数字として表れていました。
2026年8月期は売上収益が前期比16.6%増の3兆9,633億円、事業利益は同30.4%増の7,184億円と5期連続で過去最高業績を更新。特筆すべきは地域別の構図の変化で、北米の売上収益3,649億円・欧州の売上収益5,126億円の合計8,775億円が、これまで海外事業を牽引してきた中国圏の7,240億円を初めて上回りました。4分の1以下の店舗数で売上を逆転したということは、1店舗あたりの効率が圧倒的に高いということです。
そういえば、パリのルーブル美術館では、ユニクロとのコラボTシャツを限定販売していました。ユニクロが安いアパレルブランドとしてではなく、アート界でもイケてるブランドとして扱われていることが分かります。ちなみにパリでは、いかにもユニクロらしき服を着てる人を見かけません。現地在住の友人に聞くと、アウター(ダウンジャケットなど)ではなく、インナーとしてユニクロを着る人が多いとか。なるほど、オシャレの参考にしたいものです。
ファーストリテイリングとリユース関連銘柄を並べて考えると、面白い対比が見えてきます。ユニクロは「機能性の高い新品」を世界に届け、リユース企業は「良いものを長く使う文化」を広げる。一見対極に見えますが、どちらも「モノの価値を正当に評価する」という意識の高まりという同じ潮流の上に乗っています。

テーマ②「日本食の海外展開」:パリの街を埋め尽くす日本食

パリで驚いたのは、日本食レストランの多さです。ラーメン屋・おにぎり専門店・寿司・うどん——しかも地元のフランス人で賑わっています。農林水産省の調査によると、海外の日本食レストラン数は18万店超の規模に達しています。中国では経済停滞の影響で減少したものの、欧州・中南米・大洋州では増加傾向が続いており、日本食の世界への浸透は着実に進んでいます。
とくにパリで驚いたのは、“おにぎり人気”です。日本でお馴染みの「おむすび権米衛
(GONBEI)」は、いつみても行列ができていました。また、MONOPRIXなどスーパーマーケットでは、当たり前のようにお寿司や海鮮丼が置かれています。
そこで注目したいのが、米飯加工機を製造販売する鈴茂器工(6405)です。時価総額170億円程度の小型株ではありますが、海外売上比率は37%と高め。四季報記事欄には「欧州で前期納品遅れたシート出しのり巻きロボがすしテイクアウト店に導入進む」とあり「でしょうね!」といった感じ。思うに、米飯はくっついたり、バラバラになったりでとても扱いづらい食材です。一人前の寿司職人になるのに10年以上かかると言われているのですから、海外で売るならロボットに頼ったほうがいいに決まってます。同社の業績は、現状では工場の償却費や人件費で足踏み状態ですが、5年後10年後の未来は相当明るいと読んでいます。
もうひとつ付け加えると、去年以上に定着していたのが「MACCHA」です。スターバックスなどのチェーン店のみならず、ほとんどのカフェに「MACCHA LATTE」がありました。総じて、日本食の海外人気は一過性のブームではなく、2013年の和食のユネスコ無形文化遺産登録以降、着実に裾野を広げてきた構造的なトレンドだと実感しています。

テーマ③「エアコンとトイレ」:日本の技術が世界の生活インフラになってほしい

世界各地で「日本」を見つけてうれしさを感じる一方、ここにこそ日本パワーが届けばいいのに、と思うこともあります。その代表がエアコンとトイレです。
ここ数年、ヨーロッパでは、40度を超える熱波が襲い、今までエアコンが必要ないとされていた地域にもエアコンが徐々に導入されています。それを商機として、中国ブランドのエアコンが猛烈に欧州で売れているという記事を見かけました。もちろん、日本勢も指をくわえて見ているわけではありません。
ご存知ダイキン工業(6367)は、空調機器で世界シェアトップ。2026年3月期の売上高は5兆円を超え、過去最高業績を更新しました。海外売上比率は84%に達し、もはや日本の会社というより世界の会社です。特に注目したいのが欧州事業で、欧州がロシア産ガスへの依存から脱却するために進めるヒートポンプ暖房への転換でダイキンがシェア約20%のトップに立っています。2026年5月にはポーランドに約3億ユーロを投じた新工場を稼働させるなど、長期的な欧州展開への投資も続いています。2026年4~6月期の営業利益は前年同期比8%増の1,305億円と4~6月期として過去最高を更新し、欧州の熱波でエアコン販売が好調だったことも追い風になりました。しっかり商機を捉えています。ただ、ダイキンの主力は企業向けのエアコンなので、家庭用ではまだまだ知られていません。ここからが勝負でしょう。
そして、トイレ。今まで訪れた世界主要都市のどこにも温水洗浄便座はありませんでした。あんな素敵なものが、なぜ普及していないのでしょう?
温水洗浄便座の代名詞とも言えるTOTO(5332)は、ウォシュレットの世界普及という長い戦いを着実に続けています。累計出荷台数は2025年11月に7,000万台を突破。かつて欧州での海外比率はわずかでしたが、米州での普及が進み、2025年にはオックスフォード英語辞典に「Washlet」として掲載されるほどの世界ブランドになりました。それでも、まだ実際には、使用されているところに出会わないくらいなので、伸び代はかなり大きいということです。期待!

世界を旅すると、大きな経済の流れが読める

実際に現地を訪れると、経済の大きな変化を肌で感じます。今回の旅では、悲しいかな、経済格差の広がりは、確実に起こっていることが分かりました。
ヨーロッパでもアメリカでも、食料品の高さが顕著です。外食をするとカフェラテ1杯1,000円、パスタ1皿3,500円、スーパーに置いてあるサンドイッチやサラダなどは1,800円くらい。いくら海外のほうが所得が高いといえ、物価高のスピードは所得の上昇を上回っており、それについていけない人も多いよう。そのため、安いファーストフード(1ドルピザなど)で食事を済ませる人が多く、それがまた肥満につながっています。とくにNYは、顕著にその傾向がありました。
ニュースや経済指標では実感できない経済の本流を、自分の五感で知ることは投資家として貴重な体験です。これからも時間とお金と体力が許す限り旅を続けたいと思います。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2026年10月13日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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