金融・投資

2024.01.18

本シリーズ「投資スイッチ!」では、何気なく過ごしている毎日の中にも、実は投資先や株取引について考えるヒントがあるはず!という視点のコラムをお届けします。ヒントに気づくための“スイッチ”を一緒に入れてみませんか?
藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

藤川 里絵(ふじかわ りえ)さん

キリオフィス代表、株式投資スクール講師、CFPファイナンシャルプランナー。個人投資家として2010年より株式投資をはじめ、5年で資産を10倍に増やす。数字オンチの人も含め普通の人が趣味として楽しめる株式投資を広めるため、講師、講演者、パーソナルトレーナーとして活動中。講座は特に女性に人気で、毎回キャンセル待ちが出るほど。著書に「月収15万円からの株入門 数字オンチのわたしが5年で資産を10倍にした方法」「ド文系女子の株の達人が教える 世界一楽しい!会社四季報の読み方」(https://www.amazon.co.jp/dp/B09PB1FT8H/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1)など。
YouTube:藤川里絵の女子株CH『はじめの一歩』 - YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCrsiRmd8Bq7CmaXljd8PDKw

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Introduction

ここのところ、立て続けに友人がペットを飼い始めました。コロナ禍では、在宅勤務やテレワークの普及で、犬や猫を飼う人が増加。実際、夜ラン途中に、ペットを散歩させている人たちが、輪になって楽しそうに歓談している姿をよくみかけました。コロナ禍が明けてペットブームが終わったかと思いきや、引き続きペット熱は高まり続けており、わたしの近所の動物病院は、病院の外まで並ぶほどの盛況ぶり(?)です。

人間の赤ちゃんより多い!? 拡大するペット市場

ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によると、2022年度の新規飼育頭数は、過去10年間で最多の426千頭、猫の新規飼育頭数は432千頭で、合わせると858千頭になります。2022年度の出生数は、777千人ですから、人間の赤ちゃんより、犬猫のほうが家族として迎えられた数が多いという、ちょっと衝撃的な数字です。
ただし、新規飼育意向は、やや低下気味で、その理由としては「生体の価格の上昇」が挙げられています。たしかに、人気のチワワやトイプードルだと、100万円以上すると聞きますので、なかなか手が出しづらいのは分かります。一方で、保護犬を引き取って家族の一員とする人も増えています。ペットを飼うことで「家族の絆が強まった」「子どもとの毎日の生活が楽しくなった」「気持ちが明るくなった」「同居する病人の経過がよくなった」など、多くの人がよい影響があったと感じています。
わたしの友人は、パートナーの反対を押し切って犬を飼い始めました。最初は犬に近づかないようにしていたパートナーですが、次第に犬に心を奪われ、おかげで夫婦の会話が増えたといいます。また、犬を散歩していると、おなじく犬を飼っている人から話しかけられることも多く、近所の友人がいっきに増えたそうです。ペットが家族や友人との絆を結ぶ重要な役割を担っており、今後もペット人気は続くでしょう。
ペットが増加することで、ペット関連市場は成長しています。矢野経済研究所によると、2021年度には小売金額ベースで1兆7187億円に上り、24年度には1兆 8370 億円に増えると予測しています。ペット関連市場には、具体的に、ペットフード、ペット用品、生体、ペット保険、介護ケアサービス、ペット医療、ペット葬儀などがあります。その中でも、最近とくに伸びているのは、ペットフードとペット保険です。

高級化するペットフード

わたしが、子どもの頃、実家で犬を飼っていたときは、だいたいわたしたちの食事の残り物を犬にあげていました。現在は、そんな雑な食事の与え方は言語道断のようです。「うちの犬のほうが、自分よりいいもの食べてる」と、友人が言うように、ペットフードはどんどん高級化しています。ペットの家族化に伴い、飼い主の嗜好が、価格から安全・安心なフードに変化しているようです。できるだけ健康で長生きしてほしいという想いが、お財布の紐を緩めるのでしょう。

過去最高益を更新するペットフード企業

市場が拡大していますので、関連企業の業績は期待できます。
まず、国内ペット用品売上で首位のユニ・チャーム(8118)を見てみます。この会社は紙オムツなどのパーソナルケア商品の売上が8割、ペットケア商品は1割強と決して比率は高くないのですが、少子化で乳児用オムツが低迷傾向にあるのとは反対に、ペット部門の売上は拡大傾向にあります。
22年12月期のパーソナルケア部門の売上は7,649億円(前年比+13.8%)、営業利益は1,009億円(前年比ー6.0%)と増収減益に対し、ペットフード部門は、売上1,253億円(前年比+19.9%)、営業利益は184億円(前年比+25.5%)の増収増益です。
これが意味するところは、ペットフードでは、原材料高による価格転嫁が受け入れられたということで、ペットに対する飼い主の盲目の愛が垣間見えます。自分の食事代を抑えてでも、ペットにはいいものを食べさせたいと考える飼い主が多いのかもしれません。
ペットフードの好調をうけて、ユニチャームでは、ペットケア部門への先行投資を積極的に推進すると発表しています。
時価総額3兆円を超えるユニチャームと比べると、かなりの小粒になりますが、ペットフードやペット用品の卸を行っているエコートレーディング(7427)も有望です。
時価総額85億円の超小型株ですが、業績は好調。現在進行している24年2月期は、当初の売上高予想1,008億から1,059億円へ、営業利益は9億円から17.5億円と大幅に上方修正しています。予想通りに着地すれば、過去最高益を更新することになります。ペット商品の専門商社としては、唯一上場している企業ですので、投資家としては非常に気になります。
エコートレーディングが今年の5月3日、4日の二日間で開催した『みんな大好き!!ペット王国2023』の動員数は、約4万人の大盛況で、ペットオーナー同士のコミュニケーションが非常に活発化しており、今後ますます熱狂していくと思われます。

ペット保険加入は常識化?

ペットを飼っている友人たちは口をそろえて「お金がかかる」と言います。
いちばん頭を悩ますのが、健康面での支出。たとえば犬を飼えば、毎年のワクチン接種に、狂犬病の予防注射やノミダニ予防薬、フィラリア感染症予防薬、避妊・去勢手術など、節約しづらい出費があります。さらに、なんとなく元気がない、食欲がない、となれば、しゃべれないだけに原因がわからず不安なため、子ども以上に病院に連れていくことが多いとか。
そこで拡大しているのがペット保険市場です。業界トップのアニコム損害保険によると、2010年のペット保険普及率は2.4%だったのが2020年には12.2%と5倍以上に伸びています。
ペット保険では、ワクチンなどの予防措置や歯科医療措置などは対象外ですが、突発的な病気・ケガのほぼすべてに対して治療費を一定割合カバーしてくれます。病院代を気にして、ペットに辛い思いをさせなくてよいと考えれば、月々数千円の保険料はまったく惜しくないようです。
ちなみにアニコム損害保険を運営するアニコムホールディングス(8715)は、今期24年3月期は、過去最高売上、最高営業利益の更新を予想しています。もし達成すれば、なんと15年連続の増収記録となります。
そんなペット業界の躍進に目をつけ、生命保険大手の第一生命ホールディングスが、2022年にペット保険2位のアイペットHDを買収しています。

ペット専用の高度医療病院

じつは、わたしはペット市場の拡大にともない、ペットの高度医療のニーズも高まるだろうと予想しています。犬猫向け高度医療を行う動物病院を東京、川崎、名古屋で運営している日本動物高度医療センター(6039の)の株をコロナ禍以前から長期保有しています。
ただし、この日本動物高度医療センターは、今期は、新設した病院の減価償却が膨らみ、営業利益は若干の減益予想です。人間並の高度医療が受けられる病院は、ほかにはなく、ニーズは高いと思われますが、設備投資の負担が大きいため、株価も長く低迷しています。
新規開業には、時間もお金もかかりますが、それゆえ参入障壁は高く、独自の強みをもつ貴重な企業だと思います。これからも、着実に病院数を増やして、全国どこにいても、ペットが高度医療を受けられるようになるといいですね。現状、保有株は評価損を抱えていますが、気長に反転を待ちたいと思います。
ペットの“家族化”による市場の変化は、旅行市場にも影響が出ています。先日、宿泊した湯河原のホテルでは、犬同伴オッケーとなっていました。2022年3月には、北九州市の航空会社「スターフライヤー」が、国内線の飛行機では初となるペットと一緒に機内に搭乗できるサービスを開始。今後は、ペットも旅行に同行するスタイルが当たり前になってきそうです。
少子高齢化が進む日本で、縮小する産業が多い中、拡大しているペット業界は、投資家としても大いに期待しています。
※本記事に掲載されている全ての情報は、2023年10月18日時点の情報に基づきます。
※あくまでも藤川さん個人の投資手法を説明するための例示および見解であり、ジャパンネクスト証券株式会社が取引の勧誘をするものではありません。

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